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塩味を引き出すスプーン型デバイスを発売

キリンHD「エレキソルト発売発表会」

 キリンホールディングスは5月20日(月)、ヘルスサイエンス事業部における新規事業より、塩味を引き出すスプーン型デバイス「エレキソルト」の発売を記念して発表会を都内で開催した。発表会にはキリンHDで「エレキソルト」開発者の佐藤愛氏と、共同開発に携わった明治大学の宮下芳明専任教授が登壇。実際に「エレキソルト」を用いた試食も行われ、減塩食品の塩味を約1.5倍に増加させる“電気味覚技術〟に注目が集まった。(取材=中西陽治)

佐藤氏「減塩食の物足りなさと、高血圧リスクの課題にスプーンで答える」

 キリンHDはヘルスサイエンス領域の新規事業として、微弱な電気刺激で減塩食品の塩味やうま味を増強する食器型デバイス「エレキソルト スプーン」を5月20日(月)より公式オンラインストアで限定発売する。

キリンの佐藤氏

 発売を記念し発表会に登壇したキリンHDヘルスサイエンス事業部の新規事業グループで「エレキソルト」開発者の佐藤愛氏は「大学病院で研究をしていた際、食事療法でつらい思いをしている患者さんの声がきっかけで『エレキソルト』の開発をスタートしました」と思いを語った。

WHOが推奨する1日の塩分摂取量5g未満に対し、日本人の平均塩分摂取量は10.1gと過剰摂取の傾向にあり、厚生労働省の「非感染症リスク要因別の関連死亡者数(2019年)」では「高血圧」「塩分の高摂取」を合わせると約4,300万人が高血圧リスクを抱えている。

この健康課題に対する意識の高まりを受けてか、日本の減塩・無塩食品市場は2015年から2020年にかけて約26%成長し、1,413億円の市場を形成。

その一方でキリンの調査では「塩分を控えた食事に対して不満を感じている」人は6割を超え、そのうち約8割が「味に対する不満」を感じているという。これらの調査結果を踏まえ、佐藤氏は塩分を控えながら塩味を感じられる「エレキソルト」の開発に至ったという。

 「エレキソルト スプーン」は、スプーン先端から食品に流れる微弱な電気により、口腔内で分散するナトリウムイオンを舌に引き寄せて塩味を感じやすくさせる。

 キリンによる減塩食の味覚試験で、「電気刺激なしの塩味強度」が35.8ポイントだったのに対し、「電気刺激ありの塩味強度」は55.4ポイントと、塩味を約1.5倍に増強する電流波形を発見。電気刺激なしで一般食品を食べた味覚強度50.4ポイントさえ上回った。

宮下専任教授「“電気味覚“はうま味やコクも感じられる技術」

明治大学の宮下氏

 「エレキソルト」独自の電流波形は明治大学の宮下芳明専任教授の研究室との共同研究により生まれた電気味覚の技術だ。

 発表会に登壇した宮下専任教授は「電気味覚の歴史は古く、18世紀から提唱されている。味覚の検査で使われている技術であり、宮下芳明研究室では薄味の塩味だけでなく、うま味やコクといった味わいを電気で解決する研究を行っている」と説明した。

 販売は、公式オンラインストアでの抽選販売を皮切りに、6月中旬よりハンズ新宿店・梅田店・博多店で数量限定販売を予定。ハンズ新宿店では先行体験会も予定している。

 今後の展開について佐藤氏は「一般生活者、企業の健康経営や施設など、政府・自治体の健康支援に役立てていきたい。『エレキソルト』は現時点では雑貨扱いなので、予防領域での提供となりますが、研究と開発を進め介護施設や医療機関での活用も視野に入れたい」と展望を語ってくれた。


商品名:エレキソルト スプーン ES-S001

重量:約60g

電源:3V リチウム電気(CR2)

価格:19,800円(税込)


社内公募「ビジネスチャレンジ」からイノベーションが誕生

フォトセッションに応じる佐藤氏

 飲料を始め、サプリメントや医薬品といった「食から医にわたる領域でイノベーションを創出する」ことを掲げるキリンは、ヘルスサイエンス領域においてプラズマ乳酸菌(免疫)などに代表される〝土台の健康づくり〟と、シチコリン(脳機能)、オルニチン(活力)などの〝個別の健康課題〟の2つに注力している。その中で同社のヘルスサイエンス事業部の新規事業グループでは「人生100年時代の健幸ライフスタイルパートナー」実現に向け、社内ベンチャープロジェクト「キリンビジネスチャレンジ」を推進している。

 「キリンビジネスチャレンジ」では、ビールに使われるホップの健康効果に注目した「INHOP」や、トレーニングユーザーの栄養摂取に特化した「GOLD EXPERIENCE」などのサプリメント、またAI予測を使った薬局向けの置き薬システム「premedi」や腸内細菌検査の「MicroBio」、食物アレルギーサポート事業といったサービスが生み出されてきた。

 今回、プロジェクトとしては初のデジタルデバイス、それも〝食器〟と健康(減塩対策)を掛け合わせた「エレキソルト」は、同社にとって新たな挑戦となる。

発表会には多くの報道が駆け付けた