ヘルスケア情報サイト「Hoitto! ヘルスケアビジネス」(ヘルスケアワークスデザイン株式会社)

なぜ、日本人のがん検診受診率は低いのか?

より手軽に簡便に、がんリスクを早期発見
Craifからシリーズ新製品「マイシグナル・ライト」登場
検査のハードルを下げ、定期的ながん検診を促す


(新製品記者発表会で、左から)
Craif最高技術責任者CTO・市川裕樹氏、シンフォニア代表取締役・亀山みゆき氏、Craif代表取締役CEO 共同創業者・小野瀨隆一氏

受診率60%を目標に「第4期がん対策推進基本法」

日本人の2人に1人はがんに罹患し、3人に1人が亡くなっている。早期発見による早期治療が重要だが、がん検診の受診率は50%程度で頭打ちとなっている。こうした状況を打破するために2023年3月、国のがん対策の指針となる「第4期がん対策推進基本法」が閣議決定され、受診率を60%に向上させる目標が盛り込まれた。日本人のがん検診受診率は、「がん対策基本法」が成立された2006年時点からはやや向上しているものの、先進国の中では依然最低とされる。

なぜ、日本人の受診率は低いのか。

がんリスク検査「マイシグナルシリーズ」を手掛けるCraifががん経験者700人を対象に行ったアンケート調査によると、がん検診を定期的に受けなかった理由として、「面倒だから」(26.3%)が最も多い。続いて「いつでも医療機関を受診できるから」(16.9%)、「経済的に負担になるから」(15.0%)、「受ける時間がないから」(13.7%)、「健康に自信があり必要性を感じていないから」(11.5%)。これらはわが身に置き換えてもうなずけることだが、理由の中に「検査をそもそも知らない」(7.0%)もあって、がん検診のさらなる啓発の必要性もうかがえる。

もっと手軽に、簡便にがんのリスク検査ができたら――

2018年創業のCraifは、マイクロRNAを解析する独自技術を有し、「受けるハードルを限りなく低くし、そのうえで早期発見できる検査」を開発している名古屋大工学部発ベンチャー企業だ。22年には7種のがんを1回の尿検査で解析し、しかもがん種を特定できるがんリスク検査「マイシグナル・スキャン」をリリース。主に医療機関(600施設以上に導入)や自社ECサイトを通じて利用者を拡げている。

このほど、マイシグナルシリーズのラインアップを拡張するとともに、検査のハードルを下げ、より多くの人に定期的な受診の機会を促そうと「マイシグナル・ライト」を開発。4月15日の販売開始に合わせて行われた新製品記者発表会ではその席上、がん経験者700人アンケートの結果も公表された。

どういった検査が必要とされているのか――

アンケート結果は、がんに対する意識の変化も浮き彫りにする。

がんが発覚するまで、がんに対して不安に思わなかった理由として、「自分とはほど遠い病気だと思っていた」(33.0%)、「健康に自信があった」(21.1%)が上位を占め、まさか自分ががんになるとは思っていないという人の多さが明るみになった。

がんになる前に、がんに関する知識をどのくらい知っておきたかったかという設問では、「早期発見することで助かる可能性が高い」(96.1%)、「定期的な検査が早期発見のために重要」(96.0%)、「早期発見できると治療の身体的な負担が小さい」(95.9%)、「早期発見できると治療の経済的な負担が小さい」(94.8%)といった意識の変化が見られる。

アンケート調査の結果から、「面倒だから」「経済的に負担になるから」といった理由でがん検診を受けなかった人たちが「がんを経験したからこそ思う、社会に必要な検査」とは、「経済的にやさしい検査」「精度が高い検査」「手間がかからない検査」「痛みや不快感などの苦痛がない検査」「時間がかからない検査」に集約されそうだ。

手頃な価格帯で手軽な尿検査を実現

記者発表会の冒頭、小野瀨隆一代表取締役CEOは「『マイシグナル・スキャン』は非常にご好評をいただいて事業としても成長しているのですが、少し価格が高いというハードルを乗り越えるために、今般新製品を発表することになりました』と、ラインアップ拡充の意義と「マイシグナル・ライト」発表の背景を述べた。

続く「がんを経験してからこそ思う、社会に必要とされる検査とは」と題して行われたパネルディスカッションには小野瀨CEOと、シンフォニア代表取締役の亀山みゆき氏が登場。モデレーターのCraif最高技術責任者CTO・市川裕樹氏がアンケート結果を題材に、二人の意見をリードした。

全国の産婦人科向けに分娩環境の改善をテーマに事業展開する亀山氏は自身、肺がんを経験したがんサバイバーだ。毎年の定期検診では何の異常も発見されなかったが、4年前のコロナ下(検診がストップした際)、自宅近所のクリニックで診察を受けたところ左の肺に影があると指摘されたという。その後専門医から「10年ぐらい前からふつふつと大きくなってきているに違いない」と言われ、亀山氏は「10年間、定期検診では見つからなかった。もし、マイシグナルがあれば見つけられていたと思う」と述べるとともに、「私のように煙草を吸わない人でも肺がんに罹るということをもっと啓蒙しないといけない」と言及した。

亀山氏と小野瀨氏によるパネルディスカッションの模様

Craif株式会社HP:https://craif.com