ヘルスケア領域で事業を展開しているオハヨーバイオテクノロジーズ(東京都千代田区)は、女性242人(うち出産経験者121人、未出産者121人)を対象に、妊娠・出産による体調変化に関する認知についてアンケート調査を実施した。調査の結果、出産経験者に限ると「歯肉炎」の認知は 24.0%、未出産者においては 9.9%となり、認知の差が表れた。
妊娠中の女性に起こる身体の変化として最も知られているのは「つわり」(全体の 67.4%)で、次いで「妊娠線」(全体の 55.8%)、「貧血・立ちくらみ」(全体の 48.8%)となっており、「歯肉炎」を知っていると回答したのは全体の 17.0%にとどまった。出産経験者に限ると「歯肉炎」の認知は 24.0%だったが、未出産者においては「歯肉炎」の認知は 9.9%と非常に低いことが浮き彫りとなった。
<調査概要>
調査目的:妊娠・出産による体調変化に関する意識・実態把握
調査対象:20~40 歳代の女性 242 人(うち出産経験者 121 人、未出産者 121 人)
調査期間:2023 年 6 月 4 日(日)~12 日(月)
調査方法:インターネットリサーチ
妊娠中は女性ホルモン(エストロゲン)が増加することで、歯周病の原因となる女性ホルモンが大好物である菌「プレボテラ・インターメディア」が増殖しやすく、歯肉炎が起きやすくなります。歯肉炎になると歯ぐきが腫れて赤くなったり、出血しやすくなったりします。歯肉炎は歯周病の初期症状です。歯周病を初期の段階で抑えるためにも、妊娠中は特に口腔ケアが重要になります。
歯周病は口腔内の環境を悪化させるだけでなく、妊娠経過にも影響することが知られています。
歯肉炎があると炎症物質のプロスタグランジンが産生され、これにより子宮収縮が惹起されることがあります。歯周病がある妊婦さんでは、歯周病が無い妊婦さんに比べて、早産リスクが 2.27 倍、低出生体重児のリスクは 4.03 倍高くなると報告されています(※1)。
これらのことから、現在では母子手帳に歯科健診受診券が組み込まれており、妊娠中に歯科で適切な診断を受けるよう推奨されています。しかしながら実際に受診する妊婦さんの数はまだまだ少ないのが現状です(※2)。
(※1)Am J Obstet Gynecol,196:135,2007.
(※2)厚生労働省 第 2 回妊産婦に対する保健・医療体制の在り方に関する検討会
(2019 年 3 月 15 日)資料3 牧野構成員発表資料 より
■ 妊娠を考えるすべての人が取り組んだ方が良いこと
産婦人科医・谷内 麻子先生に妊娠を考えるすべての人が取り組んだ方が良いことについて伺いました。
日本は先進国の中でも痩せた女性の割合が最も高い国です。肥満は健康にとって良くないことは知られていますが、実は、痩せ過ぎも大きな害をもたらします。
20 代、30 代女性の栄養失調が深刻化しており、若い女性の摂取カロリーは食べるものが不十分だった終戦直後より低くなっています。
痩せた女性が妊娠した場合、母体から十分な栄養を受けられないため、出生児の体重も低くなってしまいます。日本では、2,500g 未満で生まれる「低出生体重児」が 1975 年以降増え始め、2005 年から現在まで全体の約 1 割に達する状態が続いています。他の先進国と比較しても高い数値となっています。
このような若い女性の栄養失調は「新型栄養失調」と呼ばれ注目を集めています。ダイエットによる食事制限や偏った食事により、前述した摂取カロリーの不足に加えて、タンパク質や各種ビタミンやミネラルの不足が生じています。野菜の摂取量が少ないためにビタミン B やビタミン C、カリウム、食物繊維などが特に不足しています。また食事の偏りや、美容的観点から紫外線を避ける生活習慣により日本人女性におけるビタミン D 不足も深刻化しています。ビタミンやミネラルをバランス良く摂ることが重要ですが、食事だけですべてをカバーするのは困難かもしれません。その
様な場合、サプリメントを使用することで継続的に必要な栄養素を補充することが可能です。
私の個人的な意見となりますが、妊娠中は葉酸だけでなく、鉄や亜鉛といった細胞内の代謝に必須なミネラル摂取を特に心がけていただきたいです。
■妊娠中の方、妊娠を考える方に知ってほしいこと
歯周病のリスクについて、日本ではまだまだ知られていないと感じています。
歯周病の予防には、毎日の正しい歯磨きや、歯科での定期的な歯石クリーニングが基本的に必要です。これらに加えて歯磨き後にロイテリ菌のタブレットを食べることで口腔内の雑菌を抑えることも有効と考えられます。
ロイテリ菌は、歯周病予防だけでなく切迫早産予防にもつながります。腟内の菌質の改善や、便秘の改善効果も期待できますので、多くの妊婦さんに試していだたきたいと思っています。
1.なぜ妊娠中は口腔環境が悪化する?
妊娠することにより、女性ホルモン(エストロゲン、プロゲステロン)が増加することで、「プレボテラ・インターメディア」という歯周病菌が増殖し、歯周病が進行しやすくなると言われています。また、血管の透過性が高まり、唾液の粘性が高まり、口腔の自浄作用が低下することで、歯肉の炎症や出血が起こりやすくなります。妊娠中に起こる歯肉の炎症のことを妊娠性歯肉炎といいます。
さらに「つわり」による食べ物の好みの変化や、食事回数の増加、気持ち悪さから来る歯磨きの不足などから口腔環境が悪化して、むし歯や歯周病のリスクが高くなります。
2.妊娠中の口腔ケアは?
妊娠中は、つわりによって歯磨きが辛くなってしまうことが多いです。つわりによって歯磨き粉の味や匂いが辛い場合は、無香料のものを使用するか、あるいは歯磨き粉を使用せずに磨くと良いでしょう。また歯ブラシのサイズは小さめのものを選び、リラックスした状態で歯磨きをすると良いです。また、唾液量が減って口腔乾燥が起こり唾液による自浄作用が減る可能性もあるので、洗口剤を併用することも良いです。
妊婦さんには、プロバイオティクスである安全なロイテリ菌を摂取することにより、悪玉菌を減らし、予防効果を高める事も大切です
理想のオーラルケアのあり方:「歯磨き・検診・ロイテリ菌!」
毎日の歯磨きと定期的に歯科医で口腔内クリーニングを行うこと、それに加えて口内フローラを整えることで、全身に悪影響を与える歯周病の予防効果が高まると考えられます。
まずは「セルフケア」。口内フローラを整えるためには、毎日の歯磨きがとても大切です。歯ブラシや歯間ブラシ、デンタルフロスなどを使って歯を磨くことで、口の中に棲みついた歯周病やむし歯、口臭などの原因になる悪玉菌を口外にかき出します。歯磨きをしないで放っておくと、悪玉菌はどんどん増殖してしまいます。
次に「プロケア」。定期的に歯科医院へ行き、口内のクリーニングをしてもらうことも必要です。
口内には、歯磨きだけではどうしても届かない部分があり、残った汚れが悪玉菌の温床となってしまいます。自力で取り除けない汚れには、専門家によるケアを。
そして、最後に口内フローラを整える「バクテリアセラピー」。善玉菌を摂取し、お口からカラダ全体の菌質改善をする予防医療である「バクテリアセラピー」が副作用もないことから、妊婦さんにおすすめです。
歯磨きや口内のクリーニングだけでは、口の中の善玉菌まで減らしてしまう可能性があるため、善玉菌であるロイテリ菌を摂取し、悪玉菌を抑えて相対的に善玉菌を増加させることで、体内の菌バランスをコントロールすることが必要です。歯磨きなどによるセルフケア、定期的な歯科検診によるプロケア、そしてロイテリ菌に代表される有益な乳酸菌による「バクテリアセラピー」の“三種の神器”で、歯周病やむし歯、口臭の予防効果はさらに高まります。