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【ヘルスケア特別対談】JAOFA・川久保会長×JAHI・今西会長/市場規模1兆円超の健康食品、今とこれから

【ヘルスケア特別対談】JAOFA・川久保会長×JAHI・今西会長


市場規模1兆円超の健康食品、今とこれから



健康食品市場規模は1兆円以上を超え、機能性表示食品制度がスタートして10年、届出件数は1万件を突破するなど、消費者ニーズはもちろん、社会的な役割も高まっている。この度、「ヘルスケア(予防)の中心は“食”」と位置付け、公益活動を行っている公益財団法人 日本ヘルスケア協会(JAHI)・今西信幸会長と、健康長寿社会の実現に向けて、各方面のステークホルダーと協働し、広く健康リテラシーの向上と産業の健全な育成・振興を図る一般社団法人 健康食品産業協議会(JAOHFA)・川久保英一会長に、健康食品の今とこれから、について語っていただいた。


――機能性表示食品の届出が1万件を超え、健康食品産業に注目が集まる一方で、一般生活者のリテラシー確立は今まで以上に重要視されていると思います。お二人は「食」、とりわけ「健康食品」の役割をどのように捉えていらっしゃいますか。


一般社団法人健康食品産業協議会(JAOHFA)・川久保英一会長(以下、川久保会長):まずは健康長寿の実現に対し、当協会のビジョンについてお話します。

当協会は健康長寿の実現に向けて、関係者の方々と手を組んで健康食品を正しく活用していくためのリテラシーを上げていくということ、そしてそれに伴う産業振興を目標にしています。

私自身も薬学出身で、キリンホールディングス株式会社の医薬品開発の研究所からキャリアをスタートしてきました。研究から臨床開発へと進み、医療機関と携わり、厚生労働省(厚労省)と医薬品申請に関する説明、協議を行ってきました。

その後、健康食品の分野に携わるようになったのです。

正直なところ、昔は健康食品に対して懐疑的な印象を持っていました。私自身、薬学を学ぶ立場から見ると、誇張された広告表現が目立つ世界に映っていたからです。

しかし、この健康食品産業を学ぶにつれ、しっかりと品質が担保され、広告も規制に寄って適切に行われているものは、科学的根拠に基づいて効果が言えるような世界になったほうがいい、と思うようになりました。

そして機能性表示食品制度がスタートし、この制度に準じた正しい製品のバリエーションを広げていくべきだと考えたのです。

私がJAOHFA会長として目標に据えているのが「健康食品全体のステータスを上げたい」ということです。

一昨年に機能性表示食品のサプリメントに関する問題がありましたが、重大な事案を受け、制度改善が進んだと捉えています。健康被害の情報提供を義務化すること、またGMPの導入、そして表示の適正化が図られました。

これを糧に機能性表示食品はもちろん、すべての健康食品の適正化を目指していけると感じています。

健康食品全体は、過去の怪しげな世界から脱却し、真に国民の健康に寄与する食品になるべく、協会としても責任を負いながら盛り上げていきたいと考えています。


公益財団法人 日本ヘルスケア協会・今西信幸会長(以下、今西会長):日本ヘルスケア協会の使命は「健康寿命の向上」に尽きます。

医療において先進国の流れは〝予防〟〝治療〟〝介護〟の3本柱が中心にあります。発展途上国においては〝治療〟のみに留まるでしょう。

〝治療〟の分野では「医・薬・食」の順でヒエラルキーがあります。

ただし、〝予防〟〝介護〟の分野においては「食」が重要になる。特に〝予防〟では「食」が中心になります。

つまり「医・薬・食」は各分野において、役割や比重が違い、トータルで使い分けられなければならない。この認識を業界全体に広げたいと思っています。

ただし、予防に重要な「食」の業界もまとまりきってはいません。ですから、専門家が組織となって、一般の方々に分かりやすく伝えることが重要です。

「予防の中心は『食』にある」というキャンペーンをしなければならないのです。それも分かっていない方々が大多数ですから、既知の情報として伝えてもいけません。

もちろん「食」は幅広い分野ですから、注意しなければならないこともあります。薬学の観点では、ある治療に有効量や使用方法がわかっている、つまりエビデンスが確保されていることを理解しています。しかし食は手軽に摂取できるため、そういったリテラシーが整備されていない。「健康にいいから」とレモンを200個も食べてしまうと体を壊してしまうでしょう。

だからこそ「食」の重要性を啓発するには、「薬」の考えを持った人が中心になっていくべきだと思います。

ですから、患者さんのため、消費者のためにやる、という姿勢が必要です。業界内で議論を回すだけでなく、一般の人にわかりやすくメリットを示していかなければなりません。

例えば典型的な成功例として「がん撲滅」があります。がんの罹患率は統計上で男性63%、女性48%で、いずれも2人に1人はがんに罹ることが分かっています。

つまりがんに罹るリスクは幸運・不運では済まされない、ということです。

この前提に基づいて、ではどう予防していくか、罹患したならばその先どうケアをしていくか、という考え方が必要になるのです。

この「2人に1人ががんに罹る」という意識が浸透したことで、国民によるがん検診の受診が進みました。その結果、がんに罹った人が4人のうち3人が助かるようになったのです。「がんは皆さんに関係のある病気です。ではどう防いでいくか」というメッセージが国民に届いた、という好事例だと考えています。

このように事実を知らせて対応をとることが大切なのです。




今西会長:健康食品はこのような好事例を踏襲すべきだと思います。

私は健康寿命延伸のために3つのポイントが重要だと思っています。「心」「体」「頭」に良いことを実践することです。

例えば「体」であるならば、免疫力を高めることは健康寿命延伸のアクションのひとつです。また歩くことは「体」だけでなく「心」のケアにもつながります。

ペットを飼うことは、散歩における「体」への健康、そして「心」「頭」にも良い結果が期待できます。さらに「推し活」は活動的であり、没頭することで「頭」にも良いでしょう。

免疫を支える食事をしながら、運動やストレス発散をしていくことで3つのポイントを複合的に押さえることができます。この考え方を皆さんに伝えていくべきだと考えるのです。

栄養ドリンクだけで健康になるわけではありませんし、旧来の「これだけ飲んでいれば健康」というイメージから脱却すべきです。


川久保会長:まったくその通りです。

健康食品の役割は、そのもの自体の機能だけでなく、健康食品を摂ることによって、健康課題をケア・予防しなければならないという行動変容を起こすためにあると思います。

健康食品には課題提起としての役割があると思うのです。食べることを柱に、運動や睡眠、またストレスとうまく付き合っていくための行動をクロスしていく。まさに「食は予防の中心」であり、そこに「心」「体」「頭」に良いことを付与することが重要ですね。


――機能性表示食品のニーズが高まる一方、リテラシー向上のための啓発活動も重要だと思われます。健康食品産業が挑むべき課題をどのように捉えていらっしゃいますか。


川久保会長:健康食品の製造工程上における健康被害の問題を受けて、機能性表示食品の公正競争規約を業界団体として作っています。規約を守って作られている、ということを生活者に分かっていただけるような仕組みづくりです。

また、品質、安全性、有効性それぞれに関しても精度の改善が行われています。

健康被害は報告を義務化し、品質に関してはGMPに準拠する、有効性についてはPRISMA 2020(システマティック・レビューおよびメタアナリシス報告の国際的な最新ガイドライン)に沿ってエビデンスの質を高める、ということをセットにして動いています。

これらをしっかりとやり抜く、ということがまず大前提です。

当たり前に安全性や品質に問題があってはならないのです。責任を持って作り、正しく紹介し、企業としても対応していこう、ということをJAOHFAとして訴えています。

この心構えを各企業が取り組んでくれれば、よりよい健康食品として改善していけるでしょう。

健康な状態を維持できる人を増やし、労働人口を保持し、介護が必要な人を減らしていく、これが健康産業の使命だと思っています。

これはこの産業でしかできないことだと思いますし、使命感を持って協会として取り組んでいます。


――JAOHFAによる健康食品産業のアクションを受けて、ヘルスケアの社会実装に挑むJAHIの役割はどのようなものだとお考えですか。



今西会長:健康食品を生活者に届ける小売業界への啓発活動が重要だと考えます。

例えば、健康食品を多く取りそろえるドラッグストアです。ドラッグストアは約25年前に産業としてスタートし、今や10兆円産業に成長しました。

そのドラッグストア産業も大きな転換期を迎えています。

10兆円の売上のうち、上位の大手7社で7兆円を占める規模になりました。大手によるボリュームディスカウントが加速し、競争が激化しています。

すると、健康食品に限らず、商品販売も大手の比率が高まっていくことは必然でしょう。

もう一点、大手ドラッグストアの戦略が「医療併設型」と「ディスカウント型」に二極化していることです。

「医療併設型」つまり調剤を柱にするドラッグストアの中心は薬剤師です。一方で「ディスカウント型」は登録販売者になるでしょう。すると人事に関わるコストも違ってきます。

一言に「ドラッグストア」と言っても、方向性と中身は明らかに変化しているのです。ですから健康食品メーカーも「医療併設型」「ディスカウント型」とのビジネスの付き合い方を使い分けていかなければなりません。

販社によって「健康」の捉え方が違う、ということです。


――「美と健康」は異業種による参入が増えています。その意味では、健康食品が露出していけるフィールドは広がっていると思われます。その中で健康食品が追うべき役割も大きくなることと思われますが、メーカーに求められる資質とはどのようなものでしょう。



川久保会長:まず、通常の食品と健康食品の違いは何か、ということです。

食には3つの機能があり、一次機能が「栄養」、二次機能が「嗜好」、三次機能が「機能性」です。主に「栄養」「嗜好」が前面に出るのが一般食品で、機能性を明確に訴求している点が健康食品の特徴です。

「機能性」は、「栄養」から一歩先に踏み込んだ具体的な機能です。例えばGABAであるならば「一時的なストレスを緩和する」機能がありますし、難消化性デキストリンでしたら「食後の血糖値・中性脂肪の上昇抑制」などです。

これらの機能を持った食品が健康食品であるわけですけれども、当然ですが、食品である以上、広く安全性が担保されていなければならないというのが大前提です。

次に機能性の担保ですが、生活者にとって機能は体感できたとしても目に見えにくいものですから、科学的データがなければなりません。

薬であるならば国の審査が担保に当たりますが、食品ではトクホ以外は審査されません。

だからこそ、企業が機能性の科学的データを担保して、エビデンスを示して商品をお届けすることが重要です。

そして機能が担保された健康食品を適正に広告していくことが求められます。機能性の担保と同じように、それを生活者に伝える方法もルールに準拠したものでなくてはいけないのです。

生活者が健康食品に求めるものは、その機能を通じて健康になりたい、健康を維持したい、といった生きるうえでの原始的な欲求です。この求めに応える健康食品には、「国民の健康」という国策を担うくらい重要な役割があると思っています。

われわれ健康食品産業もこの覚悟をもって、国民の健康に真摯に臨んでいかなければならないのです。



――JAOHFAの姿勢を受けて、健康長寿の社会実装に挑むJAHIとして、提供する側の資質はどのようなものでしょうか。


今西会長:川久保会長がおっしゃる通り、販社つまり提供する側もエビデンスを理解することが大切だと思います。

ただ、作り手だけが機能やエビデンスを訴求しても、消費者には我田引水として受け取られかねません。

そこには消費者としっかりとした商品をつなぐ役割が必要で、それが店頭にいるスタッフや、管理栄養士といった有資格者の職能なのだと考えます。

そしてわれわれ公益財団法人日本ヘルスケア協会としても、公益の使命だと思っています。お互いの協会が協力し、安全性と機能が担保された優れた健康食品が、公の利益に資するものだということを社会に伝えていくべきでしょう。

JAOHFAが国策を担う覚悟で健康を支える食品を作っている。それを「国民皆さんの役に立つ」ということを公益の名の元に伝えていくことで、これまで以上にその意義が社会に伝わっていくと思います。

ですからお互いの連携は非常に大事なのです。


川久保会長:ありがとうございます。

社会に対し確からしさを広める、リテラシーの向上は商品だけでは成しえません。

今西会長がおっしゃる通り、「国民の健康のため」という大義をお伝えするためには、他団体やアカデミアと積極的に取り組んでいく必要があると思います。

意見交換や勉強会を経て、各方面から客観的な意見をしっかりいただきながら、業界団体として発信力を強化していきたいと思います。


今西会長:例えば、アメリカにおけるヘルスケア産業はGDPの4割強を占め、主要産業と言えます。

アメリカのヘルスケア産業はFDAが医・薬・食の横断で所管しています。

これを日本のヘルスケア産業に当てはめると、厚生労働省、農林水産省、環境省、消費者庁と担当が多岐にわたり、FDAのようなシステムが構築されていないのです。

そんな中、経済産業省で2011年にヘルスケア産業課が誕生しました。

ですから、日本における「ヘルスケア産業」のシステムはまだ始まって10年そこそこです。

日本にとっては新産業であり、先進国アメリカにとっては主産業である、という違いと変化を知るべきです。


川久保会長:保健機能食品における機能性表示食品制度の所管は消費者庁ですので、まずは消費者庁とコミュニケーションをとっています。

もちろん、機能性表示食品制度の動向は厚労省も注視していますから、連携を図っていく必要がありますし、「食」である以上、農水省とのリレーションも重要です。

もちろん、われわれは国民の健康を支える産業ですから、制度そのものをより良いものにしていくことも考えなくてはなりません。

地道なことでも、関係省庁と連携することで、次の世代へ向けてのヘルスケア産業の世界が広がってくると思います。



――健康食品産業協議会として、研究や開発の実例を踏まえて、今注目すべき分野はありますか。


川久保会長:機能性表示食品の制度が誕生して10年が経ち、頭から足の先までほぼ全身をフォローできる機能が揃いました。

残されているのは、「免疫」分野の可能性と、新規の機能性表示の分野で、とりわけ「肌」に関わる機能が盛り上がっています。

肌の「抗炎症」は薬機法に触れますし、化粧品の領域のため、現在食品では謳えません。しかし、肌の調子が良くなって色艶のある状態で、外に出て元気になれる、という考え方をすれば機能性の領域だと考えられます。

エビデンスがあったとしてもまだ規制の段階で表示できませんが、この規制を緩和できれば機能性表示食品の可能性はより広がると思います。

体内の炎症で老化も進みます。「抗炎症」は症状であり医薬の分野ですが、老化・アンチエイジングといったアプローチであったならば食でフォローできる領域だと考えられます。この研究開発が進めば、機能性表示食品はさらなる領域拡大が図れるでしょう。

これまで20種類を超える機能性が表示可能になり、例えば「免疫」のような健康の土台に触れるような機能が現れて、医薬と食の境目にある状態にアプローチすることが出来るようになりました。

同じ保健機能食品でもトクホには疾病リスクの低減を謳うことが認められています。

例えば、DHA・EPAはトクホにおいて「心血管疾患になるリスクを低減する可能性」の有効性が許可されています。また葉酸は「神経管閉鎖障害を持つ子どもが生まれるリスクを低減する可能性」、カルシウムは「女性の加齢による骨粗鬆症のリスクを低減する可能性」が認められています。

DHA・EPAは機能性表示食品の関与成分としても実績がありますし、葉酸やカルシウムは栄養機能食品としても表示されています。つまり保健機能食品という同じカテゴリーでありながらも、成分として相互補完できるエビデンスが積みあがっていると言えます。

こういった視点で、総合的な「健康食品」すなわち「食」領域を開拓していくべきなのです。

ただ、制度や制限に合わせて、表現を変えていく。言葉選びや言い回し・ワーディングも必要になってくるでしょう。言葉選び(表示)に合わせてエビデンスを積み重ねていく、という方法論も有効だと思います。


――健康寿命延伸の樹立を図るヘルスケア産業にとって、求められる「食」とはどのような分野でしょうか。


今西会長:科学の進歩は目覚ましく、健康に関わる新知見や新常識が生まれています。

「老化促進因子」(老化を加速させる要因)と「老化抑制因子」(老化を遅らせる・若返らせる要因)の研究もその一つです。

この老化のコントロールが科学的に解明される中で、その分野を担うのは「健康食品」であると考えられます。これからヘルスケア先進国では、「老化」に対する健康食品のアプローチが増えていくでしょう。

抗老化つまりアンチエイジングは人種・性別を問わない根本的な欲求です。

さらに歳をとるごとに、「若々しくありたい」「若さを維持したい」という欲求は強まるでしょう。

これまで「老化」は避けられない生物の機能低下現象だと考えられてきた。しかし「老化促進因子」や「老化抑制因子」という具体的な因子の働きであることが分かってきました。

そうすると、それら因子に対してどう対応をしていくか、という解決策の糸口が生まれます。先ほどお伝えしたガンが「不治の病」から「治る病」になったように、行動や考え方も変わっていくのです。

そうすると、睡眠や運動の質も問われるでしょうし、何よりも「食」すなわち栄養の質が最も重要になってくるでしょう。だから健康食品が抗老化・アンチエイジングというカテゴリーを振興するためのカギになると思っています。



昭和の頃、部活や体育で長距離を走る際「水を飲んではいけない」と言われていました。これではオリンピックで勝てるわけがありません。「長距離を走る時は適度な給水をしたほうがパフォーマンスは上がる」というエビデンスが確立されて、やっと行動変容が生まれました。

世の中でこれだけ科学が進み、エビデンスに基づいて「これは妥当だ」「良いものだ」という理解が広がった時に、行動変容が生まれるのです。

ですから「健康寿命延伸」の理解で、一番基本的で重要なのが「食」であり、それを支える食品のエビデンス樹立は欠けてはならないのです。

先ほどの昭和の話に例えると、昔の食品は「エネルギー補給の手段」でした。ですが今は「健康長寿を全うするためのツール」でもあります。これを国民の皆さんに知っていただければ、健康食品はより頼られる存在になるでしょう。

そうして生まれた行動変容は、日本が抱える国力の維持にもつながりますし、何より国民と国のパワーアップに貢献すると思っています。


川久保会長:とても心強いご意見です。

私たち健康食品業界も、機能性表示食品制度を契機に、エビデンスに基づいた表示でお客様にその価値を伝えることができるようになりました。

その意味では、健康食品は高次な「食品」であり、製造および提供する側の責任は重大です。

抗加齢や抗老化・アンチエイジングに対する因子とそのエビデンスが明らかになりつつある今、この動きを行政と共有することが大切だと思います。

今後、アンチエイジングの研究が進んでいく中で、例えば機能性表示食品ならばどこまで表示できるのか、最新の研究と国民のニーズも照らし合わせながら、関係省庁にはたらきかけていく必要があります。


――機能性表示食品をはじめとした食品には医学レベルのエビデンスを求められる時代になってきたと思われます。アンチエイジングなど高次の健康アプローチには、さらなる研究と管理が求められるのではないでしょうか。


川久保会長:確かに、現在の機能性表示食品は、食品形状の変化や、複数のヘルスクレームを掛け合わせた商品など、次なる高いステージに突入したと考えられます。

私が所属するキリンホールディングスでは、高次元のエビデンスが生かせる素材として「プラズマ乳酸菌」に出会いました。しかし全ての素材で、そこまで突き詰める必要があるとは考えていません。

医薬レベルのエビデンスとは、つまり有効性が高い、ということです。本来有効性が高いものは薬に代表されるように、一般に、有効性が高いものほど副作用への配慮が必要になる場合があります。

「プラズマ乳酸菌」が素材の優秀な点として、毒性がなく・有効性が高い、ということとが挙げられます。

しかし食品として有効性だけを求めるのではなく、微量であっても毒性にも気を配るべきでしょう。

もちろん、摂取することで健康に対する有益な部分(有効性)が得られることが健康食品の良いところです。だからと言ってそればかり摂ればいいというわけではありません。

栄養に気を配りながら、食事を工夫したり、質の高い運動や睡眠、そしてコミュニケーションをプラスしていく。それが人間本来の健康を引き出すのです。

健康食品全てのエビデンスが医薬品レベルである必要はないかもしれません。ただし、エビデンスの高みを目指していく必要はあると思っています。


――日本における「食」あるいは「食品」の質の高さは世界的にも注目を集めています。また、エビデンスに基づく機能性表示食品のモデルケースを見習おうとする動きもアジア諸国を中心に起きつつあります。「日本発の食品」をグローバル社会に届けるために欠かせない要素とは何でしょうか。


今西会長:それは「長寿国家日本の『食』」としての価値でしょう。

美食の国として名高いフランスで、日本食がブームになっています。これは「美味しい」ということはもちろんですが、日本食が長寿に関係しているからです。

世界に誇る長寿国の食、は世界に発信できることですし、いわゆる日本食だけではなく「日本発の健康食品」もその価値を届けられると思っています。

日本が今、世界最高の長寿国家であることは疑う余地はありません。

お年寄り(高齢者)の定義が65歳以上とすると、日本では高齢化率29.3%(3,625万人:2024年時点)でトップに位置します。※モナコなど総人口が少ない国を除く。

続いて、スペイン、ポルトガルといった先進国が並び、いずれも高齢化率24%を超えています。

他国と比べて5%も開きがある、ということはいかに日本が長寿国家であるかを証明しているでしょう。

長生きできる国は医療福祉システムが充実している、ということの現れですが、一方で生産性と財府負担が大きい。

労働人口は減って、医療福祉の財政は増えていく。そして日本も含めた先進国は毎年、医療費は上がっていきます。これは今まで治らなかった病気が治るようになっていくからです。

先ほどのがんの話にもありますが、「不治の病」が不治ではなくなる。例えば脊椎損傷が治るようになる。高度医療が発達し、人の命を救うことができる、ということは必然的に医療費は増えていきます。

ではこの日本の優れた健康保険制度を守るためにはどうすればいいか。それは「疾病率を下げる」しかありません。

つまり「今まで治らなかった病気が治る」ということに医療費を使うべきなのです。私が申し上げている「食は予防の中心」というのは、生活習慣病などの予防を食で行い疾病率を下げる、限りある医療費を「これから救える命」に充てるべきでしょう。

だからこそ「食は予防の中心」であることを啓発しつつ、その延長線上に「治らなかった病気が治る」ために必要なこと、という理解を促進していくべきなのです。

日本ヘルスケア協会が、公益財団法人としてヘルスケアを推進する根幹には「医療保険を守るためにヘルスケアは欠かせない」という考えがあります。

どうしても財源は減っていく、そして医療費は膨らんでいく。ならば「自分の体は自分で守る」「予防するとこんなにいいことがある」というアピールをしていかなければならないのです。

医療のためにも予防は貢献できるのです。

すると「長寿国の食」だけでなく、この「高齢国家を支える優れた皆保険制度と疾病率を下げる予防のシステム」が、今後高齢者国家に突入していく世界各国に対するモデルケースとして発信できると思います。


川久保会長:日本は世界に名高い「長寿国家」ですが、これからは「健康長寿国家」のモデルを示していかなければなりませんね。

「長寿」は医の成す部分が大きく、「健康」は食で成される部分です。この「健康長寿国家」の仕組みとして「食」があり、その中で機能性を持つ食がどれくらい役にたっているのか、ということをしっかりと示せれば世界に影響力を持って発信できると思います。

先日、台湾で地元行政と業界団体の方々とお会いする機会がありました。彼らは「日本の機能性表示食品のような制度を台湾でも始めたい」と意欲的に意見を求めています。

台湾には日本のトクホに準じた制度はありますが、機能性表示食品制度のように産業と生活者にとって使いやすい制度を取り入れたい、ということで私も説明に行ってきました。

機能性表示食品という制度の輸出、という可能性もありますが、例えばそれが叶ったならば、日本の機能性素材の輸出にもつながると思います。

これは日本の食文化が世界にもっと深く理解してもらえ、食文化の中にある機能性素材もグローバルな健康課題解決に貢献することができるでしょう。

東南アジアを含めた諸外国は、そういった食に関わる制度が国ごとに分散されており、長寿国家たる日本がその制度を、世界に落とし込んでいくことがあってもいいのでは、と思っています。


今西会長:素晴らしいお考えですね。

その取り組みについて、日本には成功する根拠があると思います。

日本は少子高齢社会であると同時に、高齢者に資産が偏重している傾向にあります。

総人口の29%を占める65歳以上の高齢者が、日本の3分の2にあたる資産を有している、ということです。個人が保有する財源がある。一方で若い層はあまり貯えがない。

これは逆に言うと、特に予防が必要な高齢者は、予防や健康維持に投資する原資があるということ、国を支える公的医療保険を維持できる可能性があるということです。


川久保会長:台湾を視察して、近い将来台湾も日本と同じ状況を経験することになる、と感じました。台湾でも高齢化が進んできていますし、今30~40代である人口のボリュームゾーンが、そのまま高齢者になっていきます。

その先を行っている日本は、それに対応する産業を確立し、しっかりとビジネスにしていくべきでしょう。医療費抑制という社会課題はもちろん、予防・ヘルスケアは民間が主導していくべき自立したアクションだと思っています。



――最後に、両協会に向けてエールとメッセージをお願いします。


川久保会長:われわれ健康食品業界が、しっかりと国の健康施策の一つとなるような質を担保し、法規・ルールを遵守した商品を提供できる、という姿勢を示していく必要があります。それにより、消費者にリテラシーの向上をしっかりと促せるような形を、これからも積極的に進めていきたいと思います。

アジア各国への健康産業の輸出、という点にも触れましたが、まず目指すところは「日本の健康長寿」です。

「日本の健康長寿」の成果こそが「世界の健康長寿」を担う可能性を秘めています。健康を司る業界団体として、国の健康施策を支える重要な役割を担っていると認識して取り組んでいきたいと考えています。


今西会長:これまで日本は経済や産業の分野でアジアをリードしてきました。それが今では、国のシステムに関わる「長寿国家」として世界をリードする立場にあります。

日本が50年後、100年後も先進国であるためには、産業基盤が重要になります。その産業基盤が「世界最高の長寿社会」です。

私は健康食品産業が、日本の基幹産業になれると思っています。

今まであった健康食品という既存の形が、イギリスの産業革命のように世界中に変化をもたらすことができる、と考えます。その可能性を、当会でも大事に育んでいきたいと思いますし、国民に受け入れてもらえるよう勧めていきたいと考えています。

産業団体と公益団体の両輪で、連携していきたいという気持ちを強く持っています。今後とも是非よろしくお願いいたします。


――ありがとうございました。