第一三共ヘルスケア(内田高広社長)は、トラネキサム酸を配合した製剤に関する臨床試験を実施し、トラネキサム酸が皮膚の角層水分量を増加させることを確認した。トラネキサム酸に関する研究成果を応用することで、より高い保湿効果のある製品開発が期待できる。
1.研究の背景
トラネキサム酸は、第一三共の前身のひとつである第一製薬が医療用医薬品として開発したオリジナル成分。現在ではOTC医薬品や薬用化粧品の多くに配合されている。このトラネキサム酸の開発メーカーの知見を生かし、既知の効果に留まらず、トラネキサム酸の多様な可能性に期待し、皮膚への作用について研究を進めてきた。
2.試験方法と成果
臨床試験におけるトラネキサム酸による皮膚の角層水分量変化の測定
トラネキサム酸の新たな作用を調査するため、40~60代の健常な日本人女性を対象に12週間の臨床試験を実施。トラネキサム酸配合製剤(製剤A)と、トラネキサム酸を水に置き換えたプラセボ製剤(製剤B)を被験者の顔の左右にそれぞれ塗布した。塗布開始から4週後、8週後、12週後の角層水分量の変化を比較した結果、いずれの期間においても、トラネキサム酸配合製剤の使用部位のほうが、プラセボ製剤に比べて角層水分量値の有意な増加が認められた。このことから、トラネキサム酸を配合することによって、より高い保湿効果を得られることが示唆された。
3.総括および今後の展望
今回、トラネキサム酸の新たな作用に関する研究によって、トラネキサム酸配合製剤がプラセボ製剤と比べて、皮膚の角層水分量を有意に増加させることが確認された。一方で、そのメカニズムについては未解明の部分が多く残されており、「今後もトラネキサム酸の作用およびそのメカニズムに関する研究を一層深め、研究で得られた成果の応用によって、美しい健やかな肌に導く製品を開発していく」(同社)としている。
<ご参考>トラネキサム酸について
トラネキサム酸は第一三共の前身のひとつである第一製薬が1965 年に抗プラスミン剤として発売し、以来、医療用医薬品として広く使用されてきた。その後、OTC 医薬品の抗炎症成分として、かぜ薬やのどの痛みに対する薬に配合されるほか、薬用化粧品にも美白や抗炎症の有効成分として、多くの製品に配合されている。第一三共ヘルスケアは、トラネキサム酸を有効成分として配合した、薬用化粧品「トランシーノ薬用スキンケアシリーズ」を 2010 年から展開している。