日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)は8月30日(金)より東京ビッグサイトで「第24回JAPANドラッグストアショー」を開催した。台風10号が西日本を中心に上陸し、新幹線が運休になるなどアクセス面での分断が起こった影響か、ビジネスデーの8月30日の来場者は23,767人と昨年の26,573人をやや下回った。ただ一方で、会場内は台風を忘れてしまうほどのビジネスの熱にあふれていた。本項では初日の模様をレポートする。(記事・写真=中西陽治)
8月30日(金)、「第24回JAPANドラッグストアショー」の初日は9時30分からの開会式によりスタートした。台風の影響で会場の外にはやや雨が残っていたものの、開会式場となった東3のイベントステージにはJACDS理事らトップはもちろん、出展する卸やメーカーの責任者、各団体の関係者、メディアが詰めかけた。
開会式に登壇したJACDSの塚本厚志会長(マツキヨココカラ&カンパニー副社長)は、「ドラッグストア業界が全国2万3,000店舗、約10兆円産業へと成長できたのも、ここにいらっしゃるステークホルダーの皆さんと一緒に盛り上げてきたからこそ。次の25年に向け成長し続け、お互いが繁栄できるよう知恵を出し合っていきましょう」と感謝の言葉ともにさらなる業界の繁栄を誓った。
続いて登壇した佐藤文則実行委員長(よどや社長)は、「台風の影響で当初の目標来場者数7万人に達するかどうか」と不安を口にしたが、結果は目標を大幅に上回る9万7千人超の来場者がショーに詰めかけることになった。その結果に導いた佐藤実行委員長の手腕は、ショーの来場促進に現れている。
佐藤実行委員長は「今回は、これまで行ってきたSNSを活用した情報発信と拡散にさらに力を入れた。これからお客様を迎えるにあたって出展する皆さんには、ショー現地でも積極的にSNSで発信して、最後まで・1回でも多く拡散していただきたい」と呼び掛けた。台風の中、ともすれば来場自粛の感情が働いてしまいそうな雰囲気にあっても、佐藤実行委員長はアジア最大級のドラッグストアイベントとしての価値伝達を最後まで忘れなかった。これが最終的に来場者数増、ショーの成功につながることになる。
続いてアース製薬の川端克宜社長CEOが出展社代表として挨拶に立った。川端社長は「あるドラッグストアのトップの方からの強い要望を受けましてこの場に立っております。松本清雄社長、ありがとうございます」と場を和ませながら「先ほど塚本会長からありました通り、ドラッグストア業界はお客様のニーズとその変化に対応し続けてここまで成長してきました。何よりその推進役としてJACDSが大きな役割を果たしてきたのは間違いありません」と謝意を述べた。
そして3人に米原まき副実行委員長(エバグリーン廣甚社長)を加え、テープカットが行われ、第24回JAPANドラッグストアショーは開幕した。
開幕からほどなくメディア向けの記者会見が開かれ、塚本会長、佐藤実行委員長、根津孝一特別顧問(ぱぱす会長)、田中浩幸特別顧問(JACDS事務総長)、川端社長、サポート企業として大木ヘルスケアホールディングスの松井秀正社長が、記者の質問に答えた。出展社代表とサポート企業が記者会見に臨むのは初めてで、ショー全体が業界連携により強化されていることを感じさせる。
またその後、会場の特別企画である「フェムケアゾーン」にて、米原副実行委員長らによる記者会見が開かれた。
なお記者会見については別項を設け紹介する。
初日は完全なるビジネスデーということもあり、セミナールームとイベントステージでは業界関係者向けの講演やイベントが行われた。
イベントステージでは、ショーではおなじみとなったAEDの伝道師でプロレスラーの蝶野正洋さんと、薬剤師の堀美智子氏(エス・アイ・シー取締役)による「命をつなぐドラッグストア~AED設置や災害対策への取り組み~」や、俳優の松尾貴史氏と佐藤実行委員長による「人生100年時代とドラッグストア~これからのセルフメディケーション~」が実演された。イベントステージにも佐藤実行委員長を始めとしたドラッグストア関係者や実行委員が登壇し、AEDやセルメについて対談する企画は新しいショーの試みだ。
ビジネスセミナーではJACDS学術・調査委員会による「第19回セルフメディケーションアワード」が目を引く。新型コロナウイルスの大流行を乗り越え、多様な対応を求められる店頭の変化を感じさせられ、またその対応に真摯に取り組む各ドラッグストアの取組が表彰された。
もちろん、イベントやセミナーは展示ブースでも繰り広げられた。
マツキヨココカラ&カンパニーのブースでは、ボーカリストの川畑要さんが商品企画から関わったPB「matsukiyo RELAXのど飴」の発売を記念したトークショーが開催。ドラッグストア各社がブランディングを図る、独自性あふれるPBのアピールにも力が入っている。
これらセミナーやイベントがショーを盛り上げ、会場の商談と交流は熱を帯びていく。アジア系団体ツアー客が列をなして入場する姿も散見され、ブースでは多言語に対応する姿も見受けられた。
初日終業後、イベントステージにてレセプションパーティーが開かれ、内閣府官房長官の林芳正氏、経済産業大臣の齋藤健氏、厚生労働副大臣の濱地雅一氏、衆議院議員の松島みどり氏ら政界人から、日本OTC医薬品協会会長の杉本雅史氏といったドラッグストアと関わりの深い団体代表が駆け付け、ドラッグストア業界に向け祝辞を述べた。
そして乾杯の挨拶には資生堂の藤原憲太郎社長COOが務め、パーティーを盛り上げた。
パーティーでは、独自性ある出展ブースを表彰するブースデザイン表彰式が執り行われ、盆踊りの舞台のようなブースで、夏祭り感を演出したシオノギヘルスケアが大賞を受賞した。
そして「食と健康アワード2024」の表彰式も行われ、日清食品の「完全メシカップヌードル汁なしシーフードヌードル」がグランプリに輝いた。(紹介記事:日清食品「食と健康アワード2024」グランプリに輝く)
中締めは、米原副実行委員長が務めた。
来年のショー実行委員長として期待される米原氏は、第1回のドラッグストアショーを振り返った根津孝一氏の言葉を振り返りながら、女性初の実行委員長として、24回の成功と25回へのバトンをつなぐ意思を示した。
台風の影響も当初ほどは見られず、3日間の成功と期待を胸に、レセプションパーティーは幕を閉じた。
【編集後記】
取材を通じて出展社、バイヤーから多く聞こえたのは「台風の影響で来場者が少ないかと思ったが、去年より多いのでは」「あまり雨が降らなかったこともあるが、会場に入ってしまうと台風を忘れるほど活気がある」といった声だ。結果として初日は昨年の来場者数を下回っているのだが、それを感じさせないビジネスの高揚感にあふれるショー初日だったのは間違いない。