クラシエ薬品「KAMPO OF THE YEAR 2023」発表

一般用漢方薬市場は前年13ポイント増の見込み

　クラシエ薬品は、漢方薬市場の動向や、2023年に売上を伸ばした注目の漢方薬をまとめた「KAMPO OF THE YEAR 2023」を、12月6日（水）に発表した。 本格的に“脱コロナ”の時代を迎えた2023年は、制限緩和により人々の生活も変 化し、漢方薬の需要にも影響が表れている。漢方薬市場は一般用・医療用ともに回復傾向にあり、直近の６年で堅調に成長。一般用漢方薬は20代～30代で購買指数が上昇した。処方に関しては、昨年に引き続き「のどの異常」が伸長しており、今年顕著なのが「アレルギー性鼻炎（花粉症）」と「耳鳴り」への対応処方だった。調査では来年以降に拡大が予想されるカテゴリーが「フェムケア」であることが示され、漢方への注目度がさらに広がるものとみられる。

　クラシエ薬品が昨年初めて発表した「KAMPO OF THE YEAR」は、 一年間の漢方薬市場の動きから同社独自の視点で漢方のトレンドを予測し、漢方薬を通じて1年を振り返るきっかけになることを目的として実施している。今年の漢方薬市場の動向を分析した「KAMPO OF THE YEAR 2023」では、漢方市場が６年で堅実に成長していることや、年代別での広がり、感染症流行を経て変化した処方ニーズまで、トレンドを網羅的に紹介している。

市場は一般用・医療用共に直近 6 箇年で堅実に成長

　薬局やドラッグストアで販売される一般用漢方薬の市場規模は、直近 6 箇年では増加傾向にあり堅実な成長を見せている。2021年度はコロナ禍における漢方風邪薬の落ち込みにより減少傾向となったが、昨年から回復に転じ、今年は前年比 113％を見込んでいる。
　また、医療用漢方薬市場も直近6箇年で継続的に成長。2023年度は前年比 103%を見込んでいる。

20 代・30 代の若年層では購買指数が上昇傾向に

　今年度の一般用漢方薬市場では、20代・30代の若年層需要の増加傾向が見られた。

　購入個数と来店者数を基に算出した購買指数（PI値）を年代ごとに比較を示した下記のグラフでは、20代・30代ではいずれも前年比110％以上の高い伸長率となった。

　一方、年代が高くなるほど伸長率は減少傾向にあり、既存ユーザーの高齢者層だけでなく、漢方薬の需要は幅広い年代に広がっている様子が窺える。

昨年に引き続き「のどの異常」に関連する処方が伸長

　一般用漢方薬市場において、1月～10月の期間で最も伸長率が高かった漢方処方は、しわがれ声やのどの痛みに対応する『響声破笛丸（きょうせいはてきがん）』だった。2位・3位には咳関連の処方である『麦門冬湯（ばくもんどうとう）』『五虎湯（ごことう）』が入り、上位3位は全て“のどの異常”に関連する処方がランクインしている。
　同社では、のどに関する処方が伸びた要因として、新型コロナウイルスの影響で以前よりも咳への対処意向が高まったことで、セルフメディケーション需要が高まったことと推察している。

秋花粉の需要増で「アレルギー性鼻炎」がトレンドに

　2023年の漢方薬市場において、注目すべきトレンドの一つに「アレルギー性鼻炎（花粉症）」が挙がった。

　一般的に「鼻炎」に使われる漢方薬『小青竜湯』の需要は、2019年から2022年にかけて大きく縮小したが、2023年は需要が回復。

　この背景には、今年の花粉飛散量が例年よりも多かったことや、脱マスクによる影響が考えられる。
　また、10年前の季節指数と比較すると、直近4年間においてはやや秋口にかけての伸長が見られ、一方で春先の指数はダウン傾向にあり、秋花粉（イネ・ブタクサ等）の広まりが需要増に影響しているようだ。

セルフケア浸透で「耳鳴り」も伸長

　耳鳴りに対応する『七物降下湯（しちもつこうかとう）』『当帰芍薬散（とうきしゃくやくさん）』が昨年に続き大きく伸長したことも、今年の特徴の一つ。

　高齢化社会の到来による患者数の増加をベースに、一般用漢方薬での対処という選択が広がっていることが推察される。メーカー各社による投資効果も相まって、今後さらに伸長の見込まれる市場の一つだ。

　耳鳴りの原因はさまざまで、「ストレス・疲れ」や「気圧の変化」のほか、中高年以上の方は加齢や高血圧に起因するケースも考えられる。耳鳴りに対応する漢方薬は複数処方あるため、症状や自身のタイプに合わせて柔軟に選択できる点も、耳鳴りへの対処に漢方薬が選ばれている要因だと推察される。

今後継続的に拡大が予想される「フェムケア」

　女性活躍の推進や社会の意識変化などを要因に「フェムケア」「フェムテック」領域には引き続き高い関心が寄せられている。「フェムテック」が広がり始めた当初は、テクノロジーを活用したアイテムに注目が集まったが、近年では、目新しさから個人の悩みに合わせた「フェムケア」に広がりを見せている。
　漢方薬はPMSや月経不順、更年期といった症状に対し、そのような病名が無かった時代から、女性特有の疾患効果があるとして用いられてきた。

女性特有の多種多様な悩みと漢方薬の親和性は高く、実際にフェムテック・フェムケアという言葉が日本で広がり始めた2019年前後から、女性疾患処方の伸長が顕著に表れており、年平均11.7％の成長率で拡大している。

　フェムケア関連市場の拡大とも相まって、漢方薬の視点からも非常に注目度の高いカテゴリーであると考えられる。