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ウエルシア×横瀬町「うえたん号」出発式レポート

移動販売車 DgSの魅力積み地域巡る

ウエルシア薬局は9月1日(金)に、埼玉県秩父群横瀬町で移動販売車「うえたん号」出発式を開催した。「うえたん号」は、地域住民の健康増進とコミュニケーション促進のための移動販売車で、ウエルシア店舗(秩父横瀬店)をハブとして、食品、日用品、化粧品などを搭載し、平日運行で近隣地区の計45箇所にアクセスする。出発式に登壇した江平知広氏(ウエルシア薬局 首都圏支社長)は、「このたび4号目となる『うえたん号』は、横瀬町のバックアップを受けて実現した。買い物が困難な方と店舗をつなぐネットワークを構築していきたい」と掲げた。【取材・記事:中西陽治】

 埼玉県秩父郡横瀬町のウエルシア薬局秩父横瀬店で行われた「うえたん号」出発式には自治会から横瀬町長の富田能成氏をはじめ、横瀬町議会議長の新井鼓次郎氏、横瀬町区長会会長の木﨑泰明氏江平知広氏、ウエルシア薬局からは首都圏支社長の江平知広氏が登壇した。

 店舗の駐車場で行われた出発式には、ウエルシア薬局関係者や店舗スタッフに加えて、横瀬町からは副町長、横瀬町民生委員・児童委員会、横瀬町身体障がい者福祉会、横瀬町老人クラブ連合会の代表、そして地域住民が参加。移動販売車「うえたん号」に期待の目が注がれた。

出発式には多くの関係者が詰めかけた

 官民連携で移動販売を開始

横瀬町を走る「うえたん号」

 横瀬町の人口は 8,106 人(2021年時点)で、その中で高齢者人口は 2,734 人、高齢化率は 33.7%と、3人に1人が高齢者となっており、今後さらなる高齢化が見込まれている。横瀬町は地域の高齢化対策として2016年9月から官民連携プラットフォーム「よこらぼ」をスタートし、官民連携の実績を積み上げてきた。

 この度の「うえたん号」の導入も官民連携の事業で、横瀬町の「移動スーパー参入促進事業」として、町民の買い物の利便性向上および地域コミュニティ構築による交流機会の創出を目的としている。

 移動販売の地区やルートの策定は、地域住民の要望や意見を自治会などを通じてヒアリングし、市区町村と協議したうえで買い物困難地域やコミュニティづくりが求められる地域を選定し運行スケジュールを決めている。

リアル店舗のサービスを車両に搭載

 「うえたん号」は車両に飲料、お弁当、生鮮品、冷凍食品、日用品、化粧品、健康食品など約500~600品目を搭載。ウエルシア薬局秩父横瀬店からスタートし、月~金で毎日違った9ルートをたどり、平日運行の5日間で45箇所にアクセスする。

 車両の背面に大型モニターを搭載しており、「うえたん号」とウエルシア薬局秩父横瀬店をオンラインで結び、店舗に在籍する薬剤師・ビューティーアドバイザーと気軽にコミュニケーションおよび相談ができる仕組みが大きな特徴だ。さらにモニターにオンラインカタログを表記できその場で商品注文も可能。

背面のモニターを使ったオンライン機能も

医薬品の販売:第一類医薬品および一般用医薬品の取り扱いは、事前にウエルシア薬局秩父横瀬店で注文することで、車両訪問時に提供可能となっている。

決済方法・ポイント等:店舗と同様。現金、バーコード決済・クレジット・電子マネーといった各種キャッシュレス決済に対応。TポイントおよびWAONポイントの付与も行える。公共料金の支払いにも対応している。

 これらリアル店舗で提供できるサービスをほぼ網羅する一方で、価格はリアル店舗と全く同じ金額となっており、「〝移動販売だから〟という特殊性や地域による価格差をなくしたい、という思いがあります」と江平支社長は語る。

 富田町長「事業永続に自治体も協力」

富田町長

 出発式に登壇した富田町長は、「横瀬町では買い物に行くのが難しい町民がおり、これは高齢化がさらに進むことでより顕著になっていくでしょう。その中で〝買い物に行くのが困難〟という方々をサポートするために今回の事業がスタートしました。しかしこのサポート事業は横瀬町だけでは到底なしえないことです。この度ウエルシア薬局さんが素晴らしい理念のもと、地域にあった事業を構築してくれたことに感謝します」と語り、「『うえたん号』が今後、町内をぐるぐる回って皆さんに役立てていただけるよう、横瀬町にとって素晴らしい事業が今後も永続していくために、私たち自治体も『うえたん号』を積極的に利用していただくよう呼びかけを行っていきます」と事業の継続性にも言及した。

江平支社長「町と店舗のつながりを深める」

江平支社長

 続いてあいさつに立った江平支社長は「埼玉県はウエルシア創業の地でもあり、秩父地区に6店舗を出店しております。今回、富田町長をはじめ横瀬町の皆様とともに、日本一住みよい町・健康に暮らせる町の実現に一緒に取り組んでいきたいと思い、移動販売の共同事業をスタートしました」と共同事業の経緯を説明し「ぜひこの『うえたん号』を地域で育てていきたい。必要なものがあれば、お声掛けいただき、品揃えも変化させていきたい。また移動販売をきっかけに、横瀬町の皆さんとウエルシア薬局店舗とのつながりを深めていきたいと思います」と語った。

住民からは「なじみの商品・サービスで安心」との声

 出発式終了後、横瀬町の「うえたん号」にとって初めての移動販売が行われた。

 最初の地点は、「上の原団地」。ウエルシア薬局秩父横瀬店から車で急こう配の曲がりくねった坂道を上ること3分、距離にして1.1kmの団地前広場に到着した。

 地点到着近くになると車両からウエルシアのテーマソングとともに移動販売のアナウンスが流れ、住民に「うえたん号」の到着を知らせる。

 噂を聞きつけて買い物に訪れた町の人々は、「うえたん号」をぐるりと囲む3面展開の〝売り場〟を興味深く見つめて買い物を楽しんだ。

 なお、「うえたん号」の移動販売実施についての地域住民への周知は、店舗でのアナウンスはもちろん、町内会での集まりの際や、全戸配布の折り込みチラシの実施などを行っており、ここでも自治体のバックアップが実を結んでいる。

「うえたん号」右側:レジは右に。アイス、冷食、パン・ジャム、パスタ・レトルト、調味料、キャンディなど
うえたん号背面:モニターを搭載。化粧品、衛生用品、日用品、ペーパー類、たまご、野菜など
「うえたん号」左側:一面が冷蔵ケースで飲料、生鮮食品、お弁当・パン、乳製品など。お菓子やふりかけの展開も。

 住民に話を伺うと「息子夫婦と住んでいて、どちらかが車を使うと電話で買い物を頼むことが多かった。パッと買える商品が身近にきてくれると便利」や、「キャッシュレス対応なのがうれしい。近くに出かけるときにお財布は持たないけどスマホは持っているから」「ウエルシア薬局秩父横瀬店はいつも車で買い物に行っているので、利用している商品やサービスに安心感がある」「地元のつながりが残っている町だけれど、買い物でみんながちょっと集まるのは新鮮。アメやアイスなんかはシェアできるかも」「オンライン相談はテレビなどで話題になっていて試してみたいと思っていた。家の近くまで来てくれてスタッフがいるのなら挑戦してみたい」といった声が挙がった。

 また商品については「お昼どきに来てくれるので、ちょっとしたお弁当や冷凍食品が買えるのはいい」「高齢者が多く介護をしている家庭が多いので、大人用紙オムツは必需品」「コンビニやスーパーが遠いので気軽に買いに行けないから、500mlペットボトル飲料の本数が多いとうれしい」といった横瀬町ならではの特色ある感想や要望が聞かれた。

星部長「移動販売通じコミュニティ創出図る」

 出発式に参加したウエルシア薬局の営業戦略本部 地域包括推進部長の星晶博氏は「『うえたん号』が目指す地域コミュニティの創出は、ウエルシア薬局が地域貢献の一環として休息・井戸端会議・情報発信の場として活用していただいている『ウエルカフェ』と共通するものです」と話す。

 そして「買い物困難者が多いような移動が難しい地区において、場所の提供だけではコミュニティ創出の限界があります。ならば我々からその方々に会いにいこう、移動してその輪を広げていこう、ということが『うえたん号』の目的です。物売りだけではない〝移動販売を通じた地域のコミュニティづくり〟を『うえたん号』を通じて広げていきたいと思います」と語ってくれた。


「うえたん号」の運行は2022年5月の静岡県島田市からスタートし、埼玉県長瀞町(同11月)、愛知県岡崎市(2023年4月)に続き、この度の埼玉県秩父郡横瀬町で4台目となる。