ピジョン株式会社(本社:東京、社長:北澤 憲政)が、「防災研究員の学術的視点と地方自治体の事例から学ぶあかちゃんの防災 ~災害時に特に支援を要する“要配慮者”「妊産婦」「乳幼児」をみんなで守る~」をテーマとし、2023年8月8日(火)に「あかちゃんの防災勉強会」を開催した。本勉強会では、国立研究開発法人 防災科学技術研究所の研究員や、神奈川県鎌倉市と大阪府柏原市の職員が登壇。これまでにフォーカスがあまり当たってこなかった、災害発生時に特に支援を要する“要配慮者”となりうる「妊産婦」や「乳幼児」に着目し、支援にあたるうえで重要になる基本的な認識や、具体的な備えの方法と自治体の取り組み事例について発表した。
当社が実施した調査の結果で、多くのママ・パパが「赤ちゃんのために防災を意識した準備をしたいものの、何をしたらいいのかわからない」と回答したように、この点が防災準備の大きな障壁になっていると感じています。
こうした実情に対し、当社では「災害時に役立つ商品」と「情報」の提案の両輪で「あかちゃんの防災」に取り組んで参りました。商品面では、”日常の子育てのなかで自然にソナエができている”をコンセプトにした当社初の赤ちゃん向け防災商品「sonaetta(ソナエッタ):https://baby-bousai.info/lineup/」シリーズを2022年8月1日より販売を開始いたしました。さらに、月齢・場面ごとに必要な商品が変化していくことから、赤ちゃんの健やかな生活に必要な「授乳・食事」「排泄・清拭」「口腔ケア」の3つのカテゴリを「あかちゃんの防災」グッズの対象とし、備えを無駄にしない工夫「ローリングストック」のご提案も行っております。また、情報面では、当社と自治体・企業が協働し赤ちゃんにやさしいまちづくりを進める取り組みとして、2022年9月1日より、「あかちゃんとそなえの輪 推進プロジェクト」を始動。「あかちゃんの防災」の社会定着を目指し継続的に活動しており、現在までに23都道府県32自治体にご賛同いただいております。
防災の3本柱は「自助・共助・公助」ですが、災害発生直後は災害対応業務が山積みで行政からの公助の支援は滞る可能性があります。また電気・ガス・水道などのライフラインが停止する可能性もあり、個人・家庭ごとに事前に備えておくことが重要です。特に「要配慮者」と呼ばれる災害時に支援や配慮を必要とする人々は、この事前準備をしっかりする必要があります。
具体的に要配慮者とは、高齢者、障がい者、乳幼児、妊産婦、外国人、LGBTQなどを指し、これらの人々を含む、あらゆる人々を取り残さないようにする防災の取り組みを「インクルーシブ防災」と呼んでいます。しかし実際は、高齢者や障がい者など、命の危険がある要配慮者に焦点が当たりがちで、それ以外の要配慮者にはさらに支援の手が届きにくい傾向があります。例えば、衛生状態が悪くなると、妊婦であれば流産・早産や妊婦高血圧症候群、産婦であれば乳腺炎・膀胱炎、乳幼児であれば感染症に罹患しやすくなります。一般的な健常者に比べて健康リスクが高くなるため、特に配慮が必要となります。
災害時に妊産婦・乳幼児世帯が困ったこととしては、「ベビーフードや栄養・塩分に配慮された食事が手に入らなかった」といった支援物資に対する声や、「おむつ替えや授乳ができるスペースがなかった」「『子どもの声がうるさいので出て行ってほしい』と避難所で放送があり、居づらくなった」という避難所設備・運営へ対する声等が、過去の災害時には挙がっております。
事前にできる備えとして、災害時にどのような危険性があるのかを自宅周辺のハザードマップで調べ、最寄りの避難所を確認しておくと安心です。被災時に持ち出すものとして普段のおでかけセットを災害用にも用意する、ローリングストック法で普段から使っているものを少し多めに備蓄することも「自助」の第一歩となります。また、普段から地域の避難訓練に積極的に家族で参加するなど、地域やコミュニティで「支援が必要な存在である」ことを知ってもらうことも「共助」を得るうえで大切です。ほかにも、「共助」「公助」として事前にできることとしては、避難所の環境整備や運営は、地域(自治会等)と行政(役所)などが協働で実施をするため、避難場所や避難所の周知を徹底すること、避難所の運営について検討する組織のメンバーに女性を増やすこと、危機管理部署だけではなく子どもや男女共同参画、福祉など多様な部署で連携することなど、各関係者で事前にできることを考えることが大事です。
本市の目指すまちの姿「誰もが生涯にわたって自分らしく安心して暮らせる共生社会」と、ピジョン社の「あかちゃんとそなえの輪 推進プロジェクト」の想いはまさに同じだと感じ、賛同に至りました。
取り組みのひとつとして、広報紙にて「あかちゃんの防災」の啓蒙に関する記事を掲載することになりましたが、実現においては「乳幼児世帯に限定した情報を広報紙で取り上げる意義への理解・納得を得ること」の課題がありました。市民に対する新生児の人口比率は約5%で推移していますが、「あかちゃんの防災」はマイノリティなテーマではなく、共生社会の実現に向けた必要な取り組みであると捉え、偏りのない紙面作りであると庁内の理解・納得を得ることができました。
2つ目の課題は「初の『あかちゃんの防災』記事作成にあたり複数部門をまたいだ連携と工夫が必要になること」で、広報紙を作成する「広報課」、市全域の防災整備をする「総合防災課」、保健師などが所属し母子保健を対応する「市民健康課」の垣根を越えるため、政策創造課が庁内を繋ぐハブとなり、横の連携を実現しました。乳幼児世帯と日々関わる保健師や助産師等を相談時から巻き込めたことで、このテーマがいかに必要で重要かという点についてうまく訴求できたと思っております。さらにピジョン社の監修が入ることで、ローリングストックや備えるグッズなど確実に必要となる知識や情報を届けることができました。
2022年3月発行の市の広報紙にて、「あかちゃんとそなえの輪 推進プロジェクト」の内容で記事掲載を実現し、市民に広く、満遍なく「あかちゃんの防災」情報を届けました。行政の持つ知見やノウハウだけ実現し得ない深みのある防災啓蒙にアプローチでき、共生社会の実現に向けた貴重な一手となったと感じています。
本市は市の自然条件と災害履歴から、「災害に強い安全なまちづくり」を基本目標とし、積極的な防災対策に取り組んで参りました。自主防災組織の育成や小学生を対象にした防災教育に繋がるとして、2022年9月に「あかちゃんとそなえの輪 推進プロジェクト」に賛同。以来様々な取り組みを行って参りました。
まずは、市が発行している広報紙へ、「あかちゃんの防災」特集記事を掲載。ピジョン社の監修により、赤ちゃんのいる家庭がどのように災害に備えるべきか、備蓄に関するチェックリストとともに紹介いたしました。さらに、母子手帳を交付する際や本市に転入された際等に配布しており妊娠期から6才頃の子育て期に役立つ「かしわら子育てガイドブック」にも「あかちゃんの防災」記事を掲載。これからもずっと手に持ち、思い立った時に見直せるようなツールに掲載することで、防災について継続して目に触れる機会を提供しています。
備蓄品である哺乳びんの使用期限に伴う買い替えの際には、内容の選定に危機管理課担当者が苦慮していましたが、ピジョン社へ相談することで本市に合った適切なラインアップへの見直しが実現しました。また哺乳びんよりも単価が低く、水が貴重な災害時でも衛生的に使える使い捨ての「災害用授乳カップ」をメインとすることで、コストカットも実現しました。
市民、妊産婦や乳幼児は入れ替わることから、「あかちゃんの防災」の啓発には、継続した意識づけが必要だと考えています。今後も子育てガイドブックへの継続掲載で意識できる環境を作るとともに、本市開催のイベントがあれば「あかちゃんの防災」啓発ブースを設けるなど様々な世代の市民や職員へ意識づけるきっかけを投げかけたいと思います。また今後の活動を無理なく継続するために、「あかちゃんとそなえの輪 推進プロジェクト」など、防災情報の共有の場、企業の知識やリソースを上手に活用していき、この取り組みが市民の役に立ち、誰かの役に立つことを願って続けていきたいと考えております。