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第20回HIP研究会フォーラムの木村雅彦大会会長に聞く
『地域医療に参画する薬剤師の役割と期待』

「無菌調剤を必要とする患者と家族のために、いつでも対応します」


在宅医療の推進に伴い、医療機関から発行されるHIT(HOME INFUSION THERAPHY=家庭における輸液療法)処方箋を応需するためのクリーンベンチやクリーンルームを導入し、高カロリー輸液や抗がん剤、がんの痛みを緩和する鎮痛剤などの調整業務に加え終末期医療にも参画する薬局薬剤師への期待と役割は大きい。こうした中、『地域医療で薬剤師は何ができるか〜新しいビジョンを見据えて未来を語る』をテーマに、第20回HIP(HOME INFUSION PHARMACY)研究会フォーラムが8月19(土)・20日(日)に、つくば国際会議場で開催される。無菌調剤を必要とする患者と家族のために薬剤師はどのように対処していかねばならないか。「無菌調剤を必要とする患者と家族のために、われわれはいつでも対応します」と語るフォーラム大会会長の木村雅彦さん(あけぼのファーマシーグループ代表取締役)に、『地域医療に参画する薬剤師の役割と期待』を聞いた。(インタビュー・文◎山本武道)


■2007年8月に発足したHIP研究会


木村雅彦さん

―― 医薬分業が急速に進む一方では、入院患者の間に「病院から自宅で家族とともに暮らしたい」とするニーズが増えてきたため、地域ぐるみで患者のケアに力を注ぐ薬局が数多く出現しクリーンベンチやクリーンルームを導入するケースが相次いでいます。薬局の業務は、今や処方箋調剤もさることながら地域における在宅医療・介護にも対応する必要性が急務となってきました。こうした薬局・薬剤師集い結成したHIP(HOME INFUSION PHARAMCY)研究会発足の目的からお話しください。

木村 HIP研究会は、1990年代に在宅医療と注射剤調剤に関わっていた薬局を中心として2004年に組織された『在宅医療を推進する薬局ネットワーク』が前身です。その3年後の2007年8月に研究会として発足しました。

その目的は、病院に入院している患者さんから「自宅に戻り家族とともに暮らしたい」とするニーズが増えたことから在宅医療の重要性を踏まえ、“かかりつけ薬局”として注射薬を含む様々な医薬品の供給に責任を果たすこと、さらに在宅医療における薬物治療の推進と在宅医療に関する啓発活動を推進することが挙げられています。


■フォーラム開催の目的と意義


―― 今回開催されるフォーラムも研究会活動の一つですが、地域の薬局が注射薬も供給可能な“かかりつけ薬局”としての機能を発揮できるよう毎年各地で行われてきました。クリーンルームやクリーベンチを整備した薬局は徐々に増え、フォーラムの開催は在宅療法を望む患者さんとご家族にとっても大切なことです。

木村 20回大会のメインテーマには、『地域医療で薬剤師は何ができるか〜新しいビジョンを見据えて未来を語る』を掲げました。高カロリー輸液や麻薬持続皮下注射などの無菌調整を必要とする患者に対する在宅医療についてシンポジウムを企画し、見識を深めたいと思います。フォーラムの目的と開催意義は次の通りです。

「住み慣れた地域・家で最期の時まで過ごせるサービスの体制整備のためにも、地域包括ケアシステムの構築が急務となっています。そのため地域において、中心静脈栄養法用輸液や疼痛管理に用いる医療用麻薬注射などの特殊製剤の供給体制の構築は不可欠です。無菌調剤設備の規制緩和、共同利用とハード面の整備が進められている中、実際に従事されている地域で、どのような在宅医療のニーズがあるかを知り、また個別性がある、それらニーズにいかに対応していくかが大きな課題となっています。

入院医療から在宅療養、そしてご自宅で迎える最期の時まで、医療依存度の高いケースであっても継続して薬物療法を支援するためには、知識・技術・設備、そして生活背景に合わせた調整を図るための知恵、患者さんとご家族を中心に関係職種と協働するための人間力、「調整のスキル」と「調製のスキル」が必要です。

患者さん、ご家族が安心して在宅療養を受けられるという思いに応える薬物療法を支援するためには、多職種との連携はもちろんのこと、病院薬剤師と薬局薬剤師の連携が不可欠だと考えます」

厚生労働省から、2011年に患者のための薬局ビジョンが示され、患者本位の医薬分業の実現に向けて服薬情報の一元的・継続的把握とそれに基づく薬学的管理・指導、24時間対応・在宅対応、医療機関などとの連携など、かかりつけ薬剤師・薬局の今後の姿を明らかにし、かかりつけ薬局への再編の道筋を示されましたが、さらに院外処方箋の受付けにとどまらず在宅医療への対応や入退院時を含めて、他の医療提供施設との情報提供にも対応できる地域連携の重要性も指摘されました。

クリーンルームやクリーベンチ、施設の共同利用も盛り込まれるなど、地域連携薬局としての活動も積極的に進めなくてはなりませんが、フォーラムでは、無菌調剤設備での高カロリー輸液の調整業務についてご存知ない方にも、理解していただけるように薬剤による注射療法への関わりと手技、特に小児の注射療法についての講演を用意しました。ぜひ多くの皆さまのご参加をお待ちしております。
 
<取材を終えて>
8月19(土)・20日(日)に行われる第20回HIP研究会フォーラムの大会長として、参加を呼びかける木村さん。「無菌調剤を必要とする患者と家族のために、われわれはいつでも対応します」と、ご自身が長年にわたり取り組んできた在宅医療についての想いを語っていました。

その木村さんが運営するのは、あけぼのファーマシーグループ。1995年4月に創設されました。病院に11年間勤務していた経験を活かして、夫人と事務担当者との4名でスタートし、28年後の今、茨城県南西部を中心に、在宅訪問服薬指導・介護支援事業・ドライブスルー・24時間営業など9店舗のほかにヘルスケア事業としてアロマ専門店と薬膳カフェを運営するなど、地域住民の健康創造に貢献できるよう、常に新しいスタイルの薬局を目指してきました。

薬局事業の根幹となる処方箋調剤事業とともに取り組む在宅医療事業では、2000年に介護保険制度が施行される以前から取り組み無菌調剤室を導入(現在4店舗)しHIT処方箋を応需し、2018年には筑波メディカルセンター病院の敷地内に24時間365日体制の店舗をオープン。現在に至っているあけぼのファーマシーグループ。

「開局した1995年4月の翌月に、勤務していた病院のドクターから、『薬局を開局したんだったら、引き受けてくれないか』と依頼がきました。患者さんは、がんの末期でしたが、病院から自宅に戻られた患者さんに高カロリー輸液をお届けした際に、しばしお話をすることができましたが、残念ながら結局、2週間で亡くなってしまいました」

これが、あけぼのファーマシーグループ、そして木村さんにとっては初めての在宅療養患者さんとの出会いでした。「在宅医療って、ドクターもそうですが、当店もいついかなる時も、要請があれば断ることなく対応しなくてはならないと思いました。在宅医療は、あけぼのファーマシーグループのすべての店の薬剤師が、要請があれば患者さん宅にお邪魔するなど対応しています」(木村さん)

ゼロの状態からスタートした、あけぼのファーマシーグループ。現在では、薬剤師をはじめ管理栄養士、国際中医師、ヨガインストラクター、健康運動実践指導者、コグニサイズ指導者(認知症予防)、シナプソロジー(認知症予防)、リフレクソロジー(足うらマッサージ)、アロマテラピーインストラクターといった様々な資格を持つスタッフが常駐。地域住民のための“かかりつけ薬局”として活動中。同グループの詳細は、https://www.akebono1.comで。



『地域医療で薬剤師は何ができるか
~新しいビジョンを見据えて未来を語る』をテーマに
つくば市で8月19・20日にHIP研究会主催第20回フォーラム


在宅医療に関わる薬剤師の交流を通じ、在宅医療推進への寄与を目指して2007年8月に設立されたHIP (Home Infusion Pharmacy)研究会主催の第20回フォーラムが、8月19日(土)20日(日)に茨城県つくば市内のつくば国際会議場(https://www.epochal.or.jp)で、公益財団法人勇美記念財団との共催で開催される。

大会のメインテーマは、『地域医療で薬剤師は何ができるか~新しいビジョンを見据えて未来を語る』。大会長は、あけぼの薬局ファーマシーグループ代表取締役の木村雅彦さん。なお大会二日目の8月20日に予定されていた厚労省の太田美紀さんの特別講演は、厚生労働省医薬・生活衛生局総務課の大原 拓さん(演題:在宅がん緩和ケアに係る最近の薬事行政について)に変更になった。

詳細なプログラムは次の通り。

<1日目:8月19日(土)14時~18時>
◇14時~14時15分:開会式
◇14時15分~15時45分:特別講演『薬剤師による注射療法へのかかわり』東 敬一郎(朝ノ川病院・薬剤師)
◇16時~17時45分:ワークショップ 
 ①ベーシックコース:『注射療法の手技』糸賀 守(筑波メディカルンセンター病院 診療技術部副部長)
②アドバンスコース:『在宅医療での注射薬のかかわりと手技』横川 宏(筑波メディカルンセンター病院 看護部)/大関美和子(筑波メディカルンセンター訪問看護ふれあい)/佐藤明美(筑波メディカルンセンターサテライトなの花)


<2日目:8月20日(日)9時~16時30分>
◇9時~9時50分:大会長講演『地域医療で薬剤師は何ができるか』木村雅彦(あけぼのファーマシーグループ代表取締役)
◇10時~11時:特別講演『在宅における小児の注射療法(仮)』佐々木理人(筑波大学医学医療系小児外科) 
◇11時10分~12時10分:教育講演『DXによる無菌調製・在宅訪問実習』森元能仁(昭和薬科大学臨床薬学教育研究センター実践薬学部門)
◇12時10分~13時10分:昼食・ポスター
◇13時10分~14時10分:特別講演『在宅がん緩和ケアに係る最近の薬事行政について』大原 拓(厚生労働省医薬・生活衛生局総務課)
◇14時20分~16時30分:シンポジウム『在宅注射薬療法の現状と課題』坂本岳志(あけぼの薬局)/荒井康之(生きいき診療所・ゆうき)/田村和子(訪問看護ステーション龍ヶ崎)/皆川博信(筑波大学附属病院医療連携患者相談センター)


<ポスター展示・企業展示>8月19日14時~8月20日16時
■ポスター発表の申込み:5月1日から始まっており7月15日(必着)まで。
■事前参加申込み:5月1日〜7月31日まで。以下のURLを参照。
http://hip.kenkyuukai.jp/images/sys%5Cinformation%5C20230502113618-7A12A32F759AED3F08399E13A1157092C6C3D26B73E63A514C2C68D10AB5A18B.pdf
■チケット申込み:https://peatix.com/sale
■参加費:HIP研会員4000円、非会員5000円、薬剤師以外の職種2000円、学生無料
■照会先:第20回HIP研究会フォーラム大会事務局(担当:木村雅彦/坂本岳志)
 TEL:029-875-3222/FAX:029-859-1003/E―mail: akebono1@io.ocn.ne.jp