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【第13回】矢澤一良博士が行く!ウェルネスフード・キャラバン【九州地域バイオクラスター推進協議会】 

九州地域バイオクラスター推進協議会(田中一成会長)は、九州産の原料にこだわり、「美味しい」「楽しい」そして、「健康に良い」加工食品の開発と販売を支援する「おやつプロジェクト」を推進している。連載企画「ウェルネスフードキャラバン」の今回は、協議会のクラスターマネージャーを務める株式会社ベジセレクトの池田透代表取締役と、プロジェクトのおやつ認定メンバーである熊本県立大学環境共生学部環境共生学科食健康環境学専攻の友寄博子教授に、「おやつプロジェクト」の概要と今後、プロジェクトにおける機能性素材の活用、役割について伺った。

(左から)友寄氏、矢澤博士、池田氏
株式会社ベジセレクト 代表取締役・池田透氏
(九州地域バイオクラスター推進協議会
クラスターマネージャー)

熊本県立大学教授・友寄博子氏


矢澤 いわゆる「おやつ」は、足りない栄養素を補うだけでなく、心の栄養摂取にもなる、日本が誇る文化です。私はこれを世界に発信すべきだと考えていますが、九州地域バイオクラスター推進協議会が推進する「おやつプロジェクト」は、地域活性化のモデル事業として、また世界に発信可能な取り組みとして、大いに期待しています。まずは友寄先生と池田クラスターマネージャーの自己紹介をお願いします。


友寄 熊本県立大学で栄養学を中心に講義を担当している友寄と申します。近年、栄養学の基礎研究は「分子栄養学」や「時間栄養学」などに細分化されていますが、私は地域に根ざした食材の可能性を掘り下げるべく、食品と栄養の橋渡し念頭に、地域の活性化と産業のグローバル化という視点で研究を行っています。


池田 協議会ではクラスターマネージャーとして、地域の企業と大学、そして行政をつなぐ活動をしています。九州地方は豊かな自然に育まれた独自性の高い農水産物、健康に資する素材がたくさんにあります。当協議会は、「九州を健康アイランドに」というビジョンのもと、これら九州の素材を用いた商品づくりを支援する「おやつプロジェクト」を展開しています。友寄先生には、プロジェクトのおやつを認定する基準の設定や選考などでお世話になっています。


矢澤 「おやつプロジェクト」の認定基準を教えてください。


友寄 第1に関与する素材が九州産であること、第2に特定成分が多いあるいは少ないという強調表示を有していること、第3にカロリーが200kcal以下またはナトリウムが0.5g以下であること、です。

カロリーとナトリウムの両方が低いと味がしないおやつになってしまう可能性もあるので、メリハリをつけて、どちらか片方でもOKとしました。一方で強調表示を設けることで、選考のハードルを低くし過ぎないよう努めるとともに、保健機能食品(栄養機能食品)にステップアップする足がかりにしたいという狙いもあります。


矢澤 九州には優れた素材や技術を有する食品加工会社が存在しますが、事業規模が小さい故に、日の目を見ない商品も多いのではないかと感じていました。


池田 量販店で扱ってもらうにも一定ロットが必要で、出口すなわち販路の獲得は多くの中小企業が抱える問題です。ただコロナ禍を経てネット上も購入の有力な選択肢となっており、ここにきて出口も多様化してきた印象があります。

最近は、地元企業のセレクトショップやイベント会場、あるいは量販店の差別化策として、「おやつプロジェクト」の商品の出品を依頼されるケースが増えました。その1つ、佐賀テレビのセレクトショップのレジには、韓国から来た旅行客が長蛇の列を作っており、インバウンドの目玉としても「おやつプロジェクト」の評判は上々です。

また先日は台湾企業のTQFA(台湾優良食品協会)が当協議会に来られ、連携を熱望されたため、MOU(友好条約)を締結いたしました。インバウンドを入り口に、プロジェクトの海外進出も視野に入れているところです。


矢澤 国内ではどんな商品が売れているのでしょうか?


友寄 熊本のジンジベルが製造販売している「ほんきのしょうが糖」から派生したクッキーや飴が人気です。生姜本来の味わいはもちろん、クッキーは食べやすいバータイプになっており、発案した女性社長の心遣いが感じられる商品です。


池田 佐賀県のごま加工会社・まんてんの「ごまさぶれ」も好評です。もともと中国産のゴマを使用していましたが、友寄先生の助言で佐賀県産を栽培使用するようになり、認定を受けた商品です。派生品として「ごまドレッシング」を作るなど意欲的な商品開発が続いています。

鹿児島の洋菓子店・ワイズファクトリーの「玄米クッキー」は、同社の女性社長が健康診断で引っかかったのを機に、原料を小麦粉から玄米に変えて開発されましたが、栄養豊かな玄米を美味しく仕上げた逸品となっています。


友寄 福岡県の かおるが販売する「生チョコみたいなしっとり大豆」は、「乳アレルギーでチョコレートが食べられない子供でも楽しめるものを」という気持ちから開発された商品です。大豆の甘納豆にココアパウダーをまぶし、本当の生チョコレートみたいな食感と味が受けています。ちなみに同社の社長も女性です。


矢澤 女性ならではの視点が開発に活きているのですね。それぞれの商品に物語があり、「おいしさ」と「楽しさ」も伝わってきます。同じ栄養でも「おいしさ」と「楽しさ」が加わることで吸収率が良くなるというデータがありますが、「良薬は口に苦し」ならぬ「良菓子は口に旨し」を体現していますね。


池田 開発を促す協議会のセミナーで、友寄先生が繰り返し「強調表示」の大切さを解いてくれたことも大きいです。「健康なおやつとはなんぞや」という問いが共通の課題となり、プロジェクトに参加する事業者の開発意欲が高まったのは間違いないですね。


矢澤 認定商品の認知度が高まってきたことによって、プロジェクトの次の戦略も見えてきたのではないですか?


池田 1つは「出口戦略」すなわち「販路の拡大」です。「『おやつ』を世界語にしよう」という掛け声のもと、インバウンド等の経験をもとに、プロジェクトの商品を輸出するチームを結成します。

もう1つは災害時における「おやつ」の啓発です。被災地で摂取するおやつこそ健康に配慮すべきであり、機能性を備えたプロジェクトの商品を保存食として提案していきます。保存食は賞味や消費期間の問題が出てきますので、この部分でも友寄先生など専門家のお力をお借りしたいと考えています。また保存性を高めることで、海外に輸出するチャンスも広がると期待しています。

画像はイメージです


矢澤 健康的なおやつを作る上で、新鮮な野菜や果物を瞬時にパウダー化する特殊加工技術を有する九州ベジパウダーが果たす役割は大きいと思います。あらゆる素材をパウダー化して加えることで、機能性を保ち、かつ保存性にも優れたおやつが開発できますね。


池田 私は同社の専務取締役も兼ねていますが、地元の農産物の出口を確保するためには、時間の壁を越えること、すなわち素材の鮮度を損なわず加工できるパウダー化の技術が武器になります。当社には生の野菜を数秒で乾燥、粉砕して粉末にする技術があり、その粉末の栄養成分は7〜8年間変わらないというデータもあり、輸出用としても保存食用としても有効です。


矢澤 熱を加えても栄養成分は損なわれないと?


池田 摂氏100度、時速350kmの竜巻のようなものを発生させ、その中に生のものを投入すると5〜6秒で水分値3%以下の粉末が作れます。気過熱で殺菌するので衛生基準も満たします。機能性を維持しながら、安全性も担保した粉末を提供できるのが強みです。現在はこの技術を有する工場が全国7ヶ所に広がっており、九州で培ったプロジェクトのノウハウを用いて、各地の農産物で健康的なおやつを開発することが可能となっています。


矢澤 規格外の野菜や残渣も活用できますしね。


池田 例えば、ジュースを製造する際に出た絞りカスにも有効成分が多く含まれており活用の余地は大きいでしょう。近年は「フードロス対策」を念頭に、高校生が地元の農産物を加工して商品化する事例が増えています。九州各地の高校から「〇〇素材を使って加工食品を作りたい」という複数の問い合わせが協議会に寄せられており、そうした要望にも当社のパウダー化技術で応えていきたいと考えています。


矢澤 九州発のプロジェクトがパウダー化技術を用いて前進していること、そしてプロジェクトの裾野が国内外に大きく広がっていること、さらに「おやつ」が無限の可能性を秘めていることが、よくわかりました。友寄先生、池田マネージャー、本日はありがとうございました。