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【独占】アサヒグループ食品から関係各位へお詫びと感謝、システム復旧のご報告

2月初頭から流通を正常化/ドラッグストアジャーナル2月3日号【全文掲載】

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船橋亙統括本部長


取材の冒頭、アサヒグループ食品の常務執行役員営業・マーケティング統括本部長・船橋亙(わたる)氏は、「昨今のサイバー攻撃によるシステム障害で受発注に混乱が生じ、流通ひいては末端のお客様に多大なご迷惑をおかけしたことをお詫び申し上げます。またこの間の卸売業様、小売業様のご理解とご協力に対し心から感謝を申し上げます。ありがとうございました」と語っている。


ーーシステム障害は9月29日の午前7時に突如起きた。10時半ごろに暗号化されたファイルが確認され、サイバー攻撃が疑われたことから、被害の拡散を防ぐべく11時には全てのネットワークをシャットダウンし、システムを使用した全ての業務が停止している。


至急設置された緊急対策委員会による分析の結果、「当面システムの回復は見込めない」との見解が示された。これを受け各事業会社は「オフラインによる手作業の受発注」を決断。アサヒグループ食品も10月2日から、一部商品を除き特定の卸・小売業と、手作業による受注〜出荷をテスト的に開始した。


もちろん手作業による受発注は、大半の従業員にとって未体験の領域。電話で受けた注文を(オフラインの)エクセルに入力して伝票を起こし、物流倉庫の中に保管している中から当該商品を探しあて、トラックに積み込み、なんとか目的地まで配送するという日々が続いた。


作業をしながら心がけたのが、「出荷可能な商品(SKU)を少しでも広げること」、次に「出荷量を増やすこと」の2つだった。ただ、グループの食品事業を担う同社のカテゴリーは非常に広く、手作業で出荷できるボリュームも限られていた。最優先で出荷したカテゴリーは、社会的なニーズのある粉ミルクやベビーフード。特にミルクアレルギー対策用の粉ミルクは、品切れを起こさないよう細心の注意を払った。


多くのカテゴリーの出荷タイミングは月に一度しかなく、1ヶ月分の受注を1つにまとめて運んでいた。通常は1ケースから可能な受注数も200ケースの大口となり、荷受先も集約してもらうなど、卸売業・小売業ともにイレギュラーな対応を迫られた。


なお、10月時点の1回あたりの出荷品目数は約150SKUと、全体(約950SKU)の15%にとどまったが、作業効率の改善によって11月には約200SKU、12月には約420SKUに拡大した。出荷段階の売上金額前年比も、概算ではあるが10月に全体の7割超、11月には9割にまで回復している。


一方、商品がどの地域のどの店に届いているのかを追跡する術がなく、「お客様に『どこで買えるのか』と問われても答えられず悔しい思いをしました。また大口受注をお願いしたために、小規模小売業へ行き渡るまでに時間を要したことも反省点です」(船橋氏)と言う。



グループを挙げた必死の復旧策が奏功し、12月2日にはリードタイムの制限がありながらも、受発注システム(EOS)の正常運転を確認し、いよいよ2月2日から通常のリードタイムで全品目の出荷が可能となった。出荷再開時は9日間を要した納品のリードタイムも、2月からは正常化される見通しである。


今回のシステム障害で得た教訓について、船橋氏は以下のようにコメントしている。


「月並みな言葉ですが…、まずはサイバー攻撃に対する意識レベルの向上です。セキュリティ投資のタイミングを躊躇せず、常にシステムを強化することが重要です。また、攻撃に備えた訓練も課題となります。大規模震災に対する備えと共に、サイバー攻撃に対する備えを強化しなければなりません。

攻撃が発覚した初日に何をすべきかを明確にしておけば、その後の対応の内容と速度も変わります。電話やFAXなどの通信網からエクセルシートに至る全ての活用を想定し、リスクの1つ1つを潰していくことが大切です。もちろん、一連のリスクは自社のみで解決できるものではありません。卸売様、小売業様との信頼に基づく協力関係の醸成が不可欠であると再認識しております」


11月27日に開催したアサヒグループホールディングスの会見で「2月末までに物流正常化をする予定」とした発言を皮切りに、アサヒグループ食品も前倒しで準備を進めてきた。ただ1点、未だエリア毎の納品率がバラついているという現実もあり、システム復旧後の次のステップは、「全国の売場に過不足なく商品が並ぶ環境を整えること」(船橋氏)としている。

「まんぷく日和」シリーズ

ちなみにサイバー攻撃が発覚した9月29日は、介護食の新ブランド「まんぷく日和」の発売日だった。「初動でつまずきましたが、新ブランドに寄せる小売業様の期待はなお高いと感じています。今後は今まで以上に、販促ほかの施策で売場活性化に努め、流通全体を盛り上げてまいります。引き続きのご理解とご協力を、切に願っております」(船橋氏)と語っていた。

取材を終えて…

この度のサイバー攻撃は言うまでもなく無差別テロであり、全ての事業者に襲いかねないリスクである。システム障害の報告を受けた卸も小売業も、同情こそすれ非を攻めることは一切なかった。そればかりか卸や小売業は、「紙の伝票でも問題ない。可能な限り協力するから商品を切らさないで欲しい」「配送体制が整わないならこちらから取りにいく」――などの言葉ともに、同社を応援し続けた。大震災時にも感じたことだが、流通業は極めて良心的にモノを動かし消費者の利益を守っている。「日本も捨てたものではない」と感じ入った次第である。(了)

当記事は弊社有料媒体「ドラッグストアジャーナル」より転載したものです。(ドラッグストアジャーナの購読には会員登録=有料=が必要です)

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