
矢澤一良博士(早稲田大学 ナノ・ライフ創新研究機構 規範科学総合研究所ヘルスフード科学部門 部門長)が「ウェルネスフードのこれから」を探る対談企画「矢澤一良博士が行く!ウェルネスフード・キャラバン」第11回は、「鈴廣かまぼこ株式会社」の鈴木博晶代表取締役にご登壇いただいた。近年、世界中から魚肉の健康価値、特にたんぱく質やオメガ3などを手軽に摂取できる「蒲鉾」に注目が集まっている。2025年に創業160周年を迎えた鈴廣かまぼこは、蒲鉾の美味しさと素材の研究開発、そして海洋資源の利活用と幅広い視点で国民の食を支えている。魚を美味しく・楽しく食べる方法として受け継がれてきた「蒲鉾」――そのルーツと未来への継承について矢澤博士が迫った。【記事=中西陽治】

矢澤一良博士(以下、矢澤博士):私はもともともとマリンバイオテクノロジーの研究を行っていました。
そこで鈴廣かまぼこの鈴木博晶社長にかまぼこ(蒲鉾)の美味しさと健康価値から成る「国民の健康」ひいては〝ウェルビーイング〟、そして鈴木さんが事務局長を務めていらっしゃる「お魚たんぱく健康研究会」についてお話をおうかがいします。
本日は鈴廣かまぼこさんの本社にお邪魔しています。神奈川県の小田原に構える本社は非常に歴史のある建物で、160年にわたり蒲鉾を作り続けていらっしゃる。鈴廣かまぼこさんの企業理念についてうかがいます。
鈴木博晶代表取締役社長(以下、鈴木氏):ありがとうございます。
私たちは160年の間、蒲鉾を作ってきました。
まずは「蒲鉾がいつ、どのような形で生まれたのか」からお話しましょう。
1115年(平安時代)の祝宴料理の献立図式に蒲鉾が書かれています。
今のような板蒲鉾とは違う形ですが、魚肉を挽いて焼いたり蒸していたりしていたのです。蒲鉾が歴史上に登場したのが900年位以上前ですから、実際に食べられていたというルーツはもっと昔にさかのぼるでしょう。

今日に至るまで〝食べ継がれてきた〟食べ物が蒲鉾であり、そこに何か意味があったから途絶えていない、ということを常に反芻して考えています。
「お魚を保存食として大切に美味しく食べたい」というのが大本にあるのでしょうけれど、それだけではない〝蒲鉾ならではの役割と価値があった〟――つまり食べ続けられてきた必然性があった、と私は考えます。
そこから「魚肉に含まれる『たんぱく質』にあるのではないか」という栄養価値という答えに至ったのです。
おそらく昔の人は、たんぱく質や炭水化物といった科学的な分類で見ていなかったと思いますが、「蒲鉾を食べると精がつく」「元気が出る」と考えて自然と選んできたのでしょう。
その役割が蒲鉾にある。この歴史を踏まえて、鈴廣かまぼこは未来に向けてどうやって蒲鉾を作っていくべきか、に挑んでいます。
矢澤博士:鈴木博晶さんが社長になられて何代目になるのでしょうか。また、小田原の地が鈴廣蒲鉾さんのルーツになっていることについてうかがいます。
鈴木氏: 神奈川県小田原は、魚の問屋が多い土地でして、近海には白身魚のカマスとイサキがよく獲れます。当家は箱根の旅館などに魚を納める網元魚商を営んでおりましたが、
副業として蒲鉾づくりを始め、それが本業になったのが1880年頃(明治)です。私は、網元魚商の初代から数えると十代目、副業で蒲鉾を作り始めた時からは七代目になります。そして私の曽祖父の代で「鈴廣」の屋号を掲げました。
持久力&血圧で共同研究がスタート

鈴木氏:矢澤博士との出会いは30年以上前、全国蒲鉾水産加工業協同組合連合会(全蒲。鈴木氏は第8代会長を務めた)の共同研究の時ですね。
当時、蒲鉾に含まれる栄養素のエビデンスを確立するために、矢澤博士には本当にいろんな研究に携わっていただきました。
矢澤博士:全蒲の資料にも採用していただいたデータがありますね。
私が所属していた東京海洋大学(当時は東京水産大学)の学生に研究をしてもらって、まずは蒲鉾を一から作ってみました。それをマウスに食べさせて、遊泳実験を行ったところ、持久力が上がりました。このデータは統計的な有意差が表れ、学会発表も行いました。

もう一つは血圧に対する実験です。血圧の高いマウスに蒲鉾を与えたところ、確かに有意差をもって血圧が下がったのです。
イサキを蒲鉾にしてそれを粉末化して実験に用いました。つまり基となる魚(イサキ)を与えるより、蒲鉾に加工して与えることで、持久力や血圧低下に対する優位な結果が現れることが明らかになりました。
また、別の研究で動物の肉と比較したところ、魚肉を使った蒲鉾の粉末の方が溶解性が早かった。つまり同じたんぱく源としての肉でも、どうやら魚肉は違った機能を示すようだ、と。さらに魚肉でも、練り物にした方が溶解性においても優れている。
これは練り物の原料である魚肉たんぱく質が酵素で分解されて生まれたペプチド、つまり「魚肉ペプチド」にあるのだろう、と思い至ったのです。
このペプチドが、血圧を上げる物質であるアンジオテンシンIIの生成を抑え、血圧を下げるACE阻害(アンジオテンシン変換酵素阻害)を起こしていると考えられました。このACE阻害は薬にも用いられている作用です。その結果は後々に明らかになったのですが、私たちの研究の時点で「魚肉を加工した蒲鉾に何かがある」と確信をもっていました。
この研究が、鈴廣蒲鉾さんとのお付き合いの中で思い出される研究結果の果実です。
鈴木氏:矢澤博士との研究で、魚肉および蒲鉾に含まれる栄養素が、がんやアルツハイマー対応にも関わっているかもしれない、ということが示唆されました。蒲鉾がまるで万能薬のような可能性を秘めているということに、とても驚きましたね。

矢澤博士:たんぱく質は元気の源ですから、その可能性は大いにあると思っています。
もう一つは、生魚は保存の時、特に凍結した後の融解の際に風味が損なわれることがあります。その点、蒲鉾は生魚の良さを優れた状態で保ちつつ、また別の機能を持たせることが出来る、非常にまれな加工食品だと言えるでしょう。
それに、魚嫌いという人も時々いらっしゃる。「スーパーで売られている魚の切り身がそのまま海で泳いでいる、と思っている人がいる」なんて冗談があるくらいですから、もしかすると蒲鉾が魚肉から出来ていると知らない人もいるかもしれません。
そういった人でも、美味しく魚が食べられる方法が蒲鉾にはある。その意味では、蒲鉾は食品としてもまだまだ食べてもらえる余地がたくさんあると思います。
例えば、今後社会課題として表面化してくるであろう「たんぱく質クライシス」にも対応できる食品でしょう。他にもフレイル予防のためのたんぱく源など、栄養の面でも優れた加工食品であることに間違いありませんよね。
生魚には好き嫌いがあるでしょう。それに比べれば蒲鉾は好き嫌いが少ない食べ物だと思われます。私はぜひこの蒲鉾を間食・おやつにも役立てて欲しいと願っています。
五感栄養学につながる蒲鉾の食感

矢澤博士:今の蒲鉾は見た目にも鮮やかで、かつ日本人になじみのあるうま味や風味を持っています。鈴木さんは蒲鉾のおいしさや楽しさをどのように広げていくお考えでしょうか。
鈴木氏:私たちが作っている板蒲鉾は、やさしく淡泊な味わいを楽しめつつ、弾力やのど越しといった食感が特徴にあると思っています。
口の中に入れた時に、いろんな面白い信号が出ていると思うのです。これは無意識に味わっているのかもしれません。舌で感じる以上に、口の中で蒲鉾ならではの触感があり、その反応の楽しさは非常に重要だと考えています。
矢澤博士:「五感栄養学」という考え方につながりますね。美味しく食べる、というのは味はもちろんですが、香りや食感も非常に重要だということです。
成分を同じように食べたとしても、食感が違うと機能が変わってくる。食感を楽しみ、あるいは聴覚をはたらかせて、おいしく食べることで体に与える結果が変わってくる、という考え方です。

また、これは第六感にあたるかもしれませんが、食べるうえでの雰囲気も欠かせないでしょう。良い雰囲気や落ち着く環境で食べることで、本来持つ食の機能を上げることが出来るのです。
私はそれを「ムードフード」と呼んでいますが、そういった食の楽しみや雰囲気が「蒲鉾」にあるのではないでしょうか。
弾力のある蒲鉾はそれだけで楽しい食感ですし、見た目にも鮮やかで香りも良い。また板蒲鉾を切った薄さや厚さで食感も変わってくるでしょう。
鈴木氏:そうですね。蒲鉾自体が楽しい食感・風味を持っていますし、形状もバリエーション豊かです。素材となる魚肉にそれだけの懐の深さがあるのでしょう。
語弊を恐れず言ってしまうと、畜肉と比べると魚肉の方が〝いろいろ遊べる〟のだと思います。具もさまざま加えられますし、加工時の熱のかけ方や練り方で食感も千差万別に変化させられます。
例えば「はんぺん」を思い起こしてください。「はんぺん」は練り物でありながらフワフワした食感で、基が魚肉だとわからないようなテクスチャーのものもあります。また「カニカマ」も練り物で作っているのにも関わらず、蟹の食感を再現できているでしょう。形状も縦に割ける、これは魚肉が優れた加工に応じられる素材だということです。
矢澤博士:今や「カニカマ」は世界中で需要が広がり、高い評価を受けていますね。

鈴廣かまぼこさんの方針、また業界の要求もあり「スポーツかまぼこ」が新しい需要を生み出しています。一般食としての蒲鉾ではなく、「運動する際の栄養補給・体作りに〝かまぼこ〟を」というのは、ほとんどイメージできませんでした。
そこで、鈴廣蒲鉾さんが「スポーツかまぼこ」に挑んだ経緯についておうかがいします。
鈴木氏:「スポーツかまぼこ」は、蒲鉾に含まれるたんぱく質をスポーツに生かせるのでは、と考えてスタートした新しい食シーンの創造です。
蒲鉾がたんぱく質豊富で、かつ消化吸収にも優れている。それを分かりやすく表現するために「スポーツ選手が食べて、パフォーマンス向上に役立てている」というストーリーを組み立てました。
サッカー日本代表の長友佑都選手も、数年前からほとんど畜肉をやめて魚中心の食生活にしています。魚のたんぱく質の力で、持久力を向上・維持したり、なんといっても「ケガをしにくくなった」と言っていましたね。
「ケガをしにくくなった」というのは、魚肉に含まれるたんぱく質が、単なるエネルギー源としてだけではなく、体を守る機能を果たしているということでしょう。
プロアスリートは体の状態を非常に鋭く感知していますから、食を変えたことによる体の変化をはっきりと感じられているのだと思います。この「スポーツかまぼこ」の価値が広がり、徐々に魚中心の食生活に変えているサッカー選手も増えています。もちろん他のスポーツ選手にも、パフォーマンス向上と体づくりに魚肉たんぱくを役立てていただいています。
昔のスポーツ選手の体づくりと言えば「血の滴るような肉をたくさん食べる」といった食事でしたが、栄養と身体のメカニズムが解明されたことにより、プレーヤーの認識と実感も大分変ってきたと思います。

矢澤博士:食事と運動のインテリジェンスが上がった、ということかもしれません。
サッカー選手はプレー中に食事を摂ることはできませんが、例えばゴルフの途中に栄養補給でバナナを食べるプレーヤーがいます。こういった間食可能なスポーツに蒲鉾を役立てられたらいいですね。
小田原と言えば、毎年正月の箱根駅伝(東京箱根間往復大学駅伝競走)の走路で、テレビ中継には必ず鈴廣かまぼこの看板が映ります。中継点になっているのはたまたまですか。
鈴木氏:それはたまたまなのですが、ちょうどよい場所に中継点として当社があるということで、出場しているいくつかの大学さんにも、鈴廣かまぼこの商品をご提供しています。
矢澤博士:トップレベルの国際スポーツ、そして日本のスポーツの風物詩に「蒲鉾」がふんだんに生かされていますね。
もうひとつ、蒲鉾が持つ「美容」に関するアプローチはいかがですか。
鈴木氏:蒲鉾が持つ健康価値を「美容」にもぜひ生かしていきたいですね。美容は表面的なものに限らず、内側の美容、例えば腸内細菌にはたきかけることができると思います。
腸内をきれいに整える、ということにも魚肉たんぱくを活かしていきたいですね。

矢澤博士:ある実験では、他の素材からたんぱく質の塊を作って、人工胃液でいかに早く溶けるか、を行っていました。
つまり胃液の組成であるペプシンと塩酸がたんぱく質を溶けやすくするということは、消化吸収が早いということです。消化が早いから血中への移行、吸収が早くなる。
そこで、魚肉たんぱくが消化がよい理由はどこにあるのか、につきましてうかがいます。
鈴木氏:これは大きく2つあります。
魚が棲息する環境は温度の低い海中です。ヒトの体に入り体温の影響を受けることで、魚肉のたんぱく質が消化されやすくなると言われています。
畜肉はヒトと同じ体温を帯びたたんぱく質なので、熱作用がない。魚肉たんぱくは熱に敏感で、たんぱく質が壊れやすく、酵素の反応を受けやすい、ということです。
もう一つは、畜肉は、基となる動物が生きている間に重力を受けています。そのため肉自体に強く硬い腱が含まれます。
一方で魚は水中でほとんど重力を受けないため、純粋な筋肉だけで生活ができます。そのため、柔らかくしなやかなたんぱく質を持つようになっているのです。
適応してきた環境が違うため、魚のたんぱく質には畜肉にはない機能があるとされています。
たんぱく質に加え〝良質な脂〟も魚肉の特徴

矢澤博士:非常にわかりやすいメカニズムですね。
魚が進化と適応を果たしてきた、ということの証でしょう。いずれにせよ、われわれ人間は魚をたんぱく源にしてきました。
もう一点ですが、魚と言えばオメガ3です。私は以前から魚のもつオメガ3つまり脂肪酸について研究を重ねてきました。海産魚はたんぱく源はもちろん、良質な脂も摂れるということですね。
鈴木氏:その点においては私も評価しつつも、まだまだ水産業界は宣伝というか、アピールが弱いのでは、と感じます。
EPA/DHAは、一般に浸透してきた言葉ですし、「青魚の脂が良いらしい」と、ほとんどの日本人は知識として持っているでしょう。その反面、基となる〝魚肉〟がいかに素晴らしい素材であるかを伝えられる人が限られているのです。
それは水産業界が「魚の脂が良い」という一本で走ってしまったからだと思うのです。〝魚食普及〟という観点に立つべきだと感じます。「魚肉を忘れていませんか」というメッセージ性です。
オメガ3もそうですが、魚肉のたんぱく質を日本人がもっとしっかりと認知できるアクションを起こしていかなければならないでしょう。それがすなわち「魚を食べよう」という行動変容を起こし、結果的にみんなが健康な体を創り上げていく。この流れを生まなければなりません。
矢澤博士:確かに、魚食普及のためにはオメガ3もたんぱく質もしっかりと伝えていかなければいけませんね。
先ほどお話が出たように、魚の栄養素は消化吸収に優れており、またたんぱく質はコラーゲンを作る原料になります。
これは美容アプローチにつながる利点だと思います。
私は体作りも美容も、ある程度先回りして対応すること、つまり予防が重要だと考えており、蒲鉾をもちいた幅広いメニュー提案、女性向けの調理法も有用だと思います。
われわれは「機能性おやつプロジェクト」を進めています。蒲鉾がこれだけ健康に良くて美味しい、美容にも良い、となれば軽食/おやつとしての価値も高まるでしょう。
そういった視点でも「魚肉」がもっと広がってほしいと願っています。魚が苦手な子どもでも「蒲鉾は好き」と感じてもらえるポテンシャルがあると思うのです。
「お魚たんぱく健康研究会」を業界一丸で推進
矢澤博士:「お魚たんぱく健康研究会」が始動し、シンポジウムやオンラインセミナーが行われています。
この「お魚たんぱく健康研究会」とはどのような組織なのでしょう。

鈴木氏:魚肉たんぱくの素晴らしさをもっと知っていただくために立ち上がったのが「お魚たんぱく健康研究会」です。
業界みんなが手をつないで、啓発実施していくことが大切ですから、まずは水産関係の企業さんに会員になっていただき、魚肉たんぱくの素晴らしさについてまずは自分たちで勉強して、それをそれぞれの企業で発信できるようにしたいと思っています。一般消費者へのコンテンツとしては「お魚たんぱくハンドブック」作り、対外的に情報発信をしています。
とはいえ、ここまでお伝えしたとおり、魚肉たんぱくは多様性をもった栄養素ですから、まずはたんぱく質の重要性を発信していく必要があるでしょう。
また、ベーシックな部分では、世界中の魚肉にまつわる論文を集約し、会員にアクセスできる様な仕組みを作っています。最近はAIが急激に発展していますから、これらのエビデンスを対話型で学べるようなスキーム「お魚たんぱく機能性 AI検索」も始まりました。
矢澤博士:この研究会はかなり準備期間があったようですね。コアメンバーがアカデミックで高いレベルを持っており、各専門家がいずれも学会会長を務めることができるほどです。
特に研究会会長の渡部終五氏(北里大学海洋生命科学部客員教授、東京大学名誉教授、元日本水産学会会長)は、マリンバイオテクノロジー学会の会長でもあり、私も大変お世話になっています。
素晴らしいメンバーがそろっていますので、まだまだ「お魚たんぱく」の良い面を引き出せると期待を膨らませています。
普段ですと、これだけのアカデミアの話を聞くことは難しいでしょう。それが研究会を通じて接点を持って体験できるのはとても有意義だと思っています。
もう一つは、練り物に対する論文数が半端ではないですね。この論文の使い勝手の良さが研究会の魅力でしょう。要旨を掴みやすい論文が揃っている、これを有効活用していきたいですね。
魚の魅力を〝伝えきる〟――「魚肉たんぱく同盟」
矢澤博士:食を通じた「地域社会」への貢献につきまして、スポーツ支援にも関わる「魚肉たんぱく同盟」が注目を集めています。
鈴木氏:「魚肉たんぱく同盟」は、スポーツ選手を中心に「魚肉中心の食生活にしたら、こんなに体が良くなった、パフォーマンスが向上した」という実体験を発信していただき、同盟の中で有益な情報を共有していただくための組織です。
この情報共有が、スポーツ選手以外の方々にも伝わり、少しでも世の中に「魚肉たんぱく」の価値を浸透していければ、と思っています。
矢澤博士:いま、全国で「子ども食堂」が広がり、価値が認識されています。子ども食堂にも「魚肉たんぱく同盟」の想いを伝えていただきたいですね。私もウェルビーイングを目指すアカデミアとして、「魚肉たんぱく同盟」の想いに共感します。
研究会と同盟の今後、そして鈴廣かまぼこさんの未来についておうかがいします。
鈴木氏:研究会は、世の中に「魚の身がこんなに良いものだったのか」ということを伝え切る、という使命を帯びています。そのために、どういった伝え方があるのか、作戦を組むべきか、があると思います。
現時点では、そのためのアカデミックなエビデンス、知見の構築に励んでいます。そして対外的なアピールというプロセスを踏んでいきます。
世の中にはいろんな情報がSNSを通じて毎日発信されています。その中でも「おいしい魚肉がこんなにも健康価値がある。体づくりに適している」という情報を、しっかりとした根拠をもって伝えていきたいと思います。
情報発信の方法としては、例えば「こういった体作りがしたい」といった具体的な要望を入力すると「それならば魚肉をこの調理法・タイミングで取り入れればいいですよ」といったアンサーを導き出せる形を作れれば良いかなと思います。そのためには、多角的なエビデンスの豊富さが重要になるでしょう。

海洋資源の長期確保も鈴廣かまぼこの使命
鈴木氏:鈴廣かまぼこにとっては、小田原で紡がれてきた伝統的な蒲鉾を、実直に作り続けていくことが第一です。

もう一つは、海洋資源の変化対応です。
先ほども申し上げました通り、魚はたんぱく質の塊ですから、例えば今まで蒲鉾に使えなかった魚から、たんぱく素材を取り出して資源として活用する、ということも考えていかなければならないでしょう。大本の蒲鉾をしっかり作るためにも、魚という資源を長期的に確保しつつ、製法を科学的に解析して、次なる後継者に伝承していかなければなりません。
これは地道な努力でしか成り立ちませんから、実直に取り組んでまいります。
片方で、今まで使ってこなかった魚を、たんぱく源としてどう利活用できるか、という研究も進めていきます。
矢澤博士:原材料としての未利用資源の開拓も重要になってくるということですね。
全国で、練り物を生業とされている企業さんも含めて、魚肉の文化と資源を継承していく必要があると思います。そのためにも、若い方にも興味を持ってもらうことは重要でしょう。
「お魚たんぱくで世界を健やかに」――ミッションステートメントを掲げる
矢澤博士:ウェルビーイングへの想いについてうかがいます。
ここまで蒲鉾の持つ栄養価値をお話していただきましたが、これを体づくりあるいは、フレイル予防といった国民の健康課題についてどう貢献していくお考えでしょうか。
鈴木氏:ウェルビーイングはとても奥深いテーマだと思います。
私たちが守り続けてきた「食するとは、生命をいただき、生命をうつしかえること。その一翼を担うのが私たちの仕事。かけがえのない地球の中で、この役割こそ我が天職。」という企業理念があります。
近年、そこに新たにミッションステートメントを掲げました。それが「お魚たんぱくで世界を健やかに」という企業としての使命です。
このミッションには、魚を無駄なく上手に使って、資源的にも環境負荷のない健やかさを目指し、そして食を通じた人々の健康に資するという想いが込められています。
ここに、鈴廣かまぼこがウェルビーイングに貢献できる価値があると思います。

美味しさの先の健康価値を探求する
鈴木氏:魚肉たんぱくのエビデンスは素晴らしいものですが、健康価値や知識だけでは食べ続けていただけませんので、最終的には、いかに美味しい蒲鉾を作り続けるか、が肝要だと思います。
〝美味しい〟の先に健康価値があってほしいと思います。
蒲鉾は、食べ続けていても飽きないですよね。毎日食べても食べ飽きることがない。この美味しさは代えがたい価値だと思います。
また、魚肉は加工した方が美味しさが際立つという点です。これは素材として面白いと思います。たんぱく質は加工することで消化吸収が高まります。ただ、完全につぶして固めるような作り方をすると、かえって消化に悪くなります。
おそらく蒲鉾に加工する工程で適度に魚肉がほぐれて、消化性が高い状態にとどまっているのでしょう。これを原理的に突き詰めていければ、蒲鉾ひいては魚肉の可能性はまだまだ広がっていくことができるでしょう。
矢澤博士:日本は冷凍・解凍の優れた技術を持っています。
それは物性に関わる技術ですから、この技術が進化すればさらに驚きの機能が明らかになるかもしれませんね。
――ありがとうございました。
