一般社団法人日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)は、12月5日(金)に都内で会見を開いた。会見ではJACDSの調剤報酬委員会による「令和8年度調剤報酬改定に対する要望事項」について時間がさかれた。要望事項には調剤報酬改定に対するJACDSからの主張と要望事項が盛り込まれ、「調剤基本料区分の導入影響と見直しの必要性」「地域支援体制加算の見直しの必要性」「敷地内薬局の連座制の適応反対」「かかりつけ薬剤師指導料」などが記載されている。ドラッグストアが10兆円産業となり、調剤薬局併設が進むことにより医療分野での存在感が高まる一方、「300店舗以上のグループ薬局に対する新たな調剤基本料の区分け導入」というチェーン薬局の努力を評価しない、規模による差別が行われようとしている。協会はその動きに「グループ化により経営効率を高めるのは企業努力の成果であり、規模の大小で区分をもうけることは、明確に公平性を欠くものである」と異を唱える。関口委員長は「協会だけが考えることではなく、業界全体の課題である」とし内外に協力を呼び掛けた。(レポート=中西陽治)
関口委員長「ドラッグストアだからこその医療貢献」を掲げる

会見で調剤報酬委員長を務める関口周吉副会長(株式会社龍生堂本店 社長)は「塚本会長体制になり、『ガバメントリレーションズ』と委員会活動の両輪で動くことになり、調剤報酬委員会の責任が非常に大きくなっている。調剤報酬に関しての提言を業界内外に発信していくことが主な目的となる」と説明。
ドラッグストア業界の売上は10兆円、そのうち調剤売上は1,4兆円と大きな割合を占め、今後13兆円を目指す上で重要な薬局業務となる。それを踏まえ関口委員長は「ドラッグストアだからこそできる医療貢献」を掲げた。
「医療計画に基づいた薬局の運営と並行して、ドラッグストアとして何ができるのか。具体的には医薬品供給の強化、認定薬局としての機能、そして勤務薬剤師委員会と連携した薬剤師の資質向上といった薬局・薬剤師の役割を強化・推進していく」と述べた。
委員会では厚生労働省との意見交換を随時行っている。厚労省が発表している医療経済実態調査の結果が調剤報酬改定に影響を与えている状況を鑑み、協会内でも説明会を行っている。
「薬局の保護ではなく、企業努力を評価すべき」

「令和8年度調剤報酬改定に対する要望事項」では、いわゆる「300店舗以上のグループ薬局に対する新たな調剤基本料の区分け」に対し、企業規模の大小に関わらず薬局が提供する技術・サービスの対価として評価されるべき、と主張する。
山口義之副委員長 (株式会社トモズ 薬剤部シニアマネージャー)は「中医協の議論でも『経営状態が厳しいから点数を上げてほしい』という発言があるが、何もやっていないのに苦しいから助けてほしいという議論ではいけない。やはり企業努力をした結果が評価されるべきであり、その結果が収益につながっているのであって、こういった企業努力を否定するような議論の方向性は避けるべきである」と述べた。
11月28日に開催された中医協では、令和7年度調査結果から300店舗以上のグループ薬局の損益率が著しく低下している。また、JACDS加盟企業を対象にした協会独自調査では、さらに低い結果になっている(図参照)。これらを踏まえ、委員会では「薬局の果たす役割や提供する医療サービスの機能とは無関係に企業グループの規模だけで調剤基本料に差を設ける制度は、本来の『機能・質に応じた評価』という報酬体系の理念を損なうものであり、こういった『規模による足切り』的な区分を廃止し、あくまで『薬局ごとの実際の機能・サービス内容』に基づき、公平かつ透明な報酬評価を行う制度へと是正すべき」と主張する。

「同じ仕事をしていて報酬が異なる、ということはあってはならない」
また、地域支援体制加算については「薬局グループの規模や、都市部か地方かといった立地条件によって報酬に差をつけるべきではない」と見直しの必要性を訴える。
そのほか、敷地内薬局への連座制への適応反対については「個別の薬局の機能に応じて評価されるべき調剤基本料の意義を著しく逸脱するものであり、到底受け入れられない」と反対。
かかりつけ薬剤師指導料における届出に係る施設基準について「かかりつけ薬剤師としての業務遂行に1年以上の在籍が必要であることに対する根拠が乏しく、医療DXの進展を踏まえても、在籍年数要件の延長は到底認められない」と主張した。
関口委員長は「300店舗以上の規模で運営しているが、同じ仕事をしていて報酬が異なる、ということはあってはならない。これは働く薬剤師のモチベーションにも関わる」と語る。
また、今回の要望事項には盛り込まれなかったが、後発医薬品調剤体制加算についても「現在、われわれの調剤時間は伸びている。これは医薬品供給の停滞が影響しており、その結果手元に後発医薬品(ジェネリック)が無い。そうなると先発品に変更したり利用可能なものを探したり、と業務に係る時間が非常に増えることになる。こういった目に見えづらい状況が、調剤報酬改定の基となる医療経済実態調査に表れている。ここを踏まえた上で議論されるべきだ」と述べた。