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【現場レポート】新生ツルハ統合会見「ドラッグストアから〝ライフストア〟へ」

ツルハ・ウエルシア・イオンのトップが揃って登壇

発表予定の新中経は来春4月に持ち越し

 ツルハHDとウエルシアHDの経営統合直後に開かれた「経営統合後ビジョン発表会見」には、株式会社ツルハホールディングス代表取締役社長の鶴羽順氏、ウエルシアホールディングス株式会社代表取締役社長執行役員の桐澤英明氏、イオン株式会社の取締役代表執行役社長の吉田昭夫氏が登壇した。

 なお、新生ツルハHDは経営統合完了の12月に新中期経営計画の発表を予定していたが、株価やのれん算出の影響を踏まえ、今回は統合後の方向性を示すにとどまり、数値計画については来年4月に開示する予定となっている。

 それを踏まえた統合後の方向性は、ツルハHDの経営理念「お客様の生活に豊かさと余裕を提供しよう」を踏襲し、そのために目指すグループビジョン(存在意義)を「ドラッグストアから、人生に寄り添うライフストアへ進化する」に据えた。

 そして「ライフストア」実現のため、統合後に生まれる1億人の顧客接点(ヘルスケアデータ)、約5万人の薬剤師・登録販売者・管理栄養士といった専門人財、全国約5,600の店舗網および調達力を最大限に発揮すると表明。

既存PB廃止し新PB「からだとくらしに、+1(プラスワン)」が来春スタート

 経営統合によるシナジー創出では、PB刷新共同開発によるさらなる価値訴求を行うことが強調された。

 会見では来春スタートする新生ツルハのPBが明かされた。ツルハとウエルシアの新しいPB「からだとくらしに、+1(プラスワン)」が誕生する。

 「ひとつひとつ、ひとつになろう。一人一人の、一日一日のために。」をテーマにした新PBについて、鶴羽社長は「ツルハとウエルシアがひとつになったことを象徴するブランド。ツルハとウエルシアの強みを掛け合わせたい、という想いの延長線上にあり、〝ひとつになろう〟というテーマは統合の本質を現わしている」と想いを明かした。

 12月1日よりツルハHDの取締役兼執行役員グループ営業・商品管掌も務める桐澤社長は「新PBの立ち上げに際し、両社の既存PB(ツルハの「くらしリズム」「くらしリズムMEDICAL」、ウエルシアの「からだWelcia」「くらしWelcia」)は基本的に廃盤となる」と発表し、新生ツルハのPBは「「からだとくらしに、+1」に一本化されることが明かされた。

 既存PBと新PBの違いについては「ウエルシアではドラッグストアならではの付加価値商品を生み出してきた。例えば、健康食品や医薬品ならば、より機能や効果があるものや、良い素材を使っているもの。あるいは食品ならば、糖尿病や高血圧の方が疾患を気にせず食べられるもの。雑貨ならばより便利で使いやすいもの。このコンセプトはブレずに引き継いでいく」と桐澤社長は述べる。

照準はワトソンズ――鶴羽社長「統合で世界3位の背中が見えた」

 12月1日の経営統合で、売上高2兆3,124億円、国内店舗数5,659店舗、従業員数11万6,343人のドラッグストア企業が誕生する。

 会見で鶴羽順社長は「今年4月の資本業務提携、そして株式交換契約を経て、いよいよ本日ツルハHDとウエルシアHDがひとつになる。統合によるスケールメリットは現場力の強化とお客様サービスの質の向上に生かすものであり、地域密着の精神は決して揺らぐことはない」と強調。

 一方で「世界にはウォルグリーン・ブーツ・アライアンスやCVSヘルスという売上高1,200億ドルを超える圧倒的なプレーヤーが存在し、その後ろには第2グループと言える250~150億ドルの企業がある。この第2グループはごく限られた企業しか到達できない領域だが、今回の統合により新生ツルハはこの領域に入り、世界第3位の背中が見える位置に入った」と規模についても言及した。

世界のドラッグストア企業は3位のASワトソンズグループ(香港)が243億ドル、新生ツルハは6位の148億ドルとやや開きがあるものの、7位のマツキヨココカラ&㏇が70億ドルであることを鑑みると、新生ツルハが日本発ドラッグストアとして世界的競争に挑む規模に到達しつつあることがわかる。

海外進出はイオンに随行する考えも

 これに関連して、鶴羽社長は海外戦略にも言及。「現在ツルハはタイとベトナムに、ウエルシアはシンガポールにそれぞれ出店している。まずはこの既存の出店国でどういった成長戦略を描けるか、という点に注力する」とし、他の出店地域についてはこれから議論する方向性を示した。

 ただ一方で、「イオンが出店しているマレーシアなどは、今後候補に挙がるだろう」と、イオンへの本格的なグループインによる、海外におけるシナジー創出に含みを持たせた。

 その言葉を示すように、今年4月のイオン通期決算会見で吉田社長は「ASEAN進出の拠点をベトナムに置く」と表明し、それを追うように7月にツルハはベトナム1号店をオープンしている。今後イオンが持つ海外での都市開発力と現地ノウハウの活用の道筋が見えた格好だ。

桐澤社長「調剤専門性とセルフケア支援、カウンセリング力と店舗運営を融合させる」

 ウエルシアHDの桐澤社長は「今回の経営統合は、ウエルシアにとって未来への大きな一歩。これからはツルハとウエルシアの強みを掛け合わせ、より幅広いサービスを提供できる体制を築いていく」とし、「ウエルシアの調剤専門性やセルフケア支援のノウハウと、ツルハのカウンセリング力と店舗運営力を融合し、健康と暮らしを力強く支えていく」と示した。

 また桐澤社長は、ツルハHDに置いて商品領域を管掌する役員に就任したことに触れ、「現場力と商品力のさらなる向上に取り組む」と目標を語った。

ウエルシアモデルは継続 各ドラッグストアブランドの整理は「ない」

 会見では質疑応答の時間が設けられ、「Hoitto!ヘルスケアビジネス」編集部も質問に加わった。

 まず一つ目の質問は、桐澤社長に向け「統合によって〝ウエルシアモデル〟の変更は検討されるのか。またタバコ販売中止などウエルシアが行ってきた施策が新生ツルハにフィードバックされていくのか」。

 桐澤社長は「統合において〝ウエルシアモデル〟の変更は考えていない。ただ、昨年ウエルシアが掲げた〝ウエルシア2.0〟ビジョンに則り、〝ウエルシアモデル〟を広域エリアにおいて少し柔軟性を持たせて変化させていくことは考えている」と明言。「統合により、ツルハの持つ店舗運営ノウハウを学び、そこに付与する形で、利便性や働きやすさにつなげていきたい」と示した。

 2問目の質問は、鶴羽社長に向け「ツルハおよびウエルシアには各々ぶら下がる形でドラッグストアブランドがある(ツルハならば杏林堂、ウエルシアならばコクミンドラッグなど)が、統合によりこのブランドを整理する考えはあるのか」。

 鶴羽社長は「統合によって、両社が持つ事業会社の屋号変更や整理は考えていない」とし、「ツルハもウエルシアも、地域における競争力が強く、認知度が高いドラッグストアは事業会社として残していく、という戦略をとってきた。そこは踏襲していく」とした。

 ただ「各事業会社やブランドで被っているエリアは、今後の出店計画も含めて整理していく必要があるだろう」と回答した。