森永乳業が9月19日(金)に都内で新商品「森永ラクトフェリン200ドリンクタイプ」(以下、森永ラクトフェリン200)の発表会を開催した。10月7日に発売される飲料「森永ラクトフェリン200」は〝免疫機能の維持〟と〝のどの乾燥感の軽減〟のダブルヘルスクレームを持つ機能性表示食品。関与成分は母乳に多く含まれるたんぱく質の「ラクトフェリン」で、他の関与成分とは違ったメカニズムで免疫機能に働きかけること、そして飲料として日本初の〝のどの乾燥感を軽減〟する画期的な商品だ。風邪をはじめとした感染症、またその原因となる乾燥が広がる秋冬シーズン。60年以上に及ぶ「ラクトフェリン」研究に力を注いできた森永乳業の新商品「森永ラクトフェリン200ドリンクタイプ」の真価をレポートでお伝えする。(取材=中西陽治)
新商品発表会に際し挨拶に立った森永乳業代表取締役社長の大貫陽一氏は、「当社は1917年に日本煉乳株式会社として創業し、100年以上にわたり飲料、ヨーグルト、アイスクリームやチーズ、育児用ミルクを発売してきた。
また、『ビフィズス菌BB536』『ラクトフェリン』『シールド乳酸菌』といった独自素材の研究および製造も行っている」と森永乳業の強みを説明した。
森永乳業は今年4月に発表した中期経営計画(2025年-2028年)では、注力すべきカテゴリーを明確にすべく〝成長領域〟を掲げ、国内事業において「ヨーグルト」「アイス」「菌体」を高利益率に寄与する柱に据えている。
大貫社長は「10月7日(火)に新発売される『森永ラクトフェリン200ドリンクタイプ』は成長領域の『ヨーグルト』事業の中でも、今後注力していくブランドの一つ」と意気込みを語った。
その成長領域を支える、森永乳業の〝中核領域〟に、今回の新商品に関わる機能性素材「ラクトフェリン」 が位置する。今回の「森永ラクトフェリン200ドリンクタイプ」は森永乳業にとって、〝成長〟と〝中核〟の二つの重要な役割を担っている、ということになる。
機能性素材の研究について大貫社長は「森永乳業は60年以上前から『ラクトフェリン』の研究を続けている。創業当時から続く育児用ミルクの事業において“赤ちゃんにとって母乳が最良かつ最適な栄養源〟の考えのもと、母乳に含まれる『ラクトフェリン』に注目したことが始まりだ」と、その歴史を語った。
研究分野で民間企業として「ラクトフェリン」に関する論文発表数最多を誇る森永乳業。製造分野においては、子会社のMILE社(ドイツ)で年間170tという世界一の製造量を有している。
大貫社長は「この研究と製造能力にはたいへん自信を持っている。そこから生まれた『森永ラクトフェリン200』は当社ならではの商品として国民の健康と生活の質向上に貢献できるものと確信している」と結んだ。
続いて、「森永ラクトフェリン200」のターゲットおよびニーズを示す「働く人の秋冬の体調管理に関する意識調査」が発表された。
森永乳業がビジネスパーソン800人を対象に行った同調査によると、83.1%が「体調管理は自己責任」と考えている一方、秋冬の体調管理について「特に意識していない」人が48.1%に上っているうえ、45.1%が「秋冬の体調管理の事前対策ができていない」と回答。
事前対策ができていない理由について「効果がわかりにくく、継続できないから」「忙しくて余裕がない」が上位2つに挙がった。そのうえで体調管理のための食品を選ぶ上で最も重視する点では「手軽さ」「効果実感」を求めている声が多かった。
最後の質問では「ラクトフェリン」について知っているか、を聞いたところ86.5%が「知らない」と回答している。
このことから、ビジネスパーソンは、「自分で体調管理しなければならないと思いつつも忙しさなどで秋冬の対策を打てておらず、対策のための手軽に効果実感ができる商品を求めている」と思っている人が多いということが示唆され、そして「ラクトフェリンが体調管理に役立つ」という認知はまだまだ広げていける余地があることも、調査から浮き彫りになった。
これら調査結果を踏まえて「ラクトフェリン」が体調管理に貢献する素材であることを示す「ラクトフェリン勉強会」が開かれ、森永乳業の織田浩嗣氏(研究本部食品機能研究所機能素材研究室)が登壇した。
「ラクトフェリン」研究の責任者である織田氏は「『ラクトフェリン』はあらゆる年代の人において体調管理に働く生体成分である」と説明した。
「ラクトフェリン」はもともと牛乳(生乳)に含まれるたんぱく質の一種として発見され、その後、ヒトの母乳、特に初乳に非常に高い濃度で含まれていることが分かった。これは生まれたばかりの乳幼児を感染症といった外敵から守る、という重要な役割を担っているということだ。
母乳以外にも、老若男女問わず、涙や鼻水、唾液そして血液内の白血球からも分泌されている。そして全身の細胞に「ラクトフェリン」を認識する仕組みがもともと備わっているという。
「あらゆる年代において、目や鼻や口といった外部と接する粘膜に『ラクトフェリン』は存在しており、粘膜を通じ病原体や空気乾燥から体を守っている」と織田氏は説明する。
森永乳業は「ラクトフェリン」の機能をエビデンスに基づき細分化し、研究発表している。この研究により「ラクトフェリン」には「急性胃腸症状の発症抑制」「風邪様症状の軽減」「のどの乾燥感・飲みこみづらさの軽減」「鉄分不足/肌状態の改善」などが研究により示されている。
そしてその研究成果から「ラクトフェリン」の2つの機能が届出受理を果たし「森永ラクトフェリン200ドリンクタイプ」が誕生した。
「森永ラクトフェリン200ドリンクタイプ」は「ラクトフェリン」200mgを機能性関与成分とし、pDC(プラズマサイトイド樹状細胞)の働きを助け、健康な人の免疫機能の維持に役立つ機能と、健康な人の空気の乾燥に伴う一時的なのどの乾燥感を軽減する機能が報告されている。織田氏は、機能性表示を果たした「免疫」「のどの乾燥感」の二つの機能は、風邪様症状の軽減のメカニズムである免疫調節作用と、喉の乾燥感の軽減のメカニズムである粘膜の保湿作用に基づいたものであると説明。
織田氏は「pDCは免疫細胞のリーダーと呼ばれており、外敵侵入を認識すると免疫物質を作り、この免疫物質が幅広い免疫細胞を活性化して外敵を排除すると考えられている。私たちの研究においてpDCには『ラクトフェリン』を取り込む受容体を持っていることが分かった。この受容体を介して『ラクトフェリン』を取り込んだpDCは、外敵に対するセンサー感度がアップし、より多くの免疫物質を作りだすことにより免疫細胞をより強力に活性化することが確認された」と「ラクトフェリン」と「免疫」の関係性について語った。
また、のどの乾燥感について「『ラクトフェリン』は涙や鼻水・唾液から分泌され、その本来の機能の一つとして〝粘膜の保湿〟があると考えられている。『ラクトフェリン』が粘膜に含まれる保湿成分『ムチン』と結びつき複合体を形成し、より多くの水分を保持できるようになる。水分を保持した複合体がバリア層を構成し粘膜の乾燥を防ぐことができると考えられている」と織田氏はメカニズムについて解説した。
たんぱく質の一種である「ラクトフェリン」と乳酸菌の違いについても織田氏は触れ、「乳酸菌は外敵と同じように異物として免疫細胞に認識されるため、本来の外敵がいなくとも免疫細胞を活性化する。一方『ラクトフェリン』は体にもともと備わっている生体成分のため、それ自体が免疫細胞を活性化することはないが、免疫細胞が持つ外敵に対するセンサー感度をアップさせることができる」と違いを示し、「免疫は不必要に活性化することが必ずしも良いとは言えない。排除すべき外敵の存在に応じて免疫を活性化させる、という非常に自然で生体成分らしいはたらきが『ラクトフェリン』の特徴だ」と述べた。
免疫を謳う機能性関与成分は、乳酸菌、酢酸菌、ユーグレナなど多様性を帯びている。その中で、元来体に備わる「ラクトフェリン」の免疫機能メカニズムは、長年研究を行ってきた森永乳業でしか到達できなかった特異点と言える。
最後に「森永ラクトフェリン200ドリンクタイプ」の商品発表が行われ、森永乳業の髙橋沙友里氏(マーケティング本部事業マーケティング部ヨーグルト・デザート事業部)が説明に立った。
森永乳業が2025年5月に行ったのどに関する調査では、1年間でのどの乾燥を自覚した人は90%で、乾燥を自覚した際に70%が「心配になる」と回答している。またのどの乾燥で心配することは「風邪の初期症状」が最も高く、体調不良予兆のシグナルとして捉えられていることが分かった。
また機能性ドリンクのニーズにおいて「免疫維持」が最も高く、「のどの乾燥ケア」も上位にあることから、「免疫とのどの乾燥感は生活者の健康課題として強く認識されている」(髙橋氏)と開発背景を示した。
「森永ラクトフェリン200ドリンクタイプ」は「免疫」「のどの乾燥感軽減」のダブルヘルスクレームの機能性表示食品であり、機能性において「のどの乾燥感軽減」を表示した飲料としては日本初となる。 「のど」に関わる飲料として欠かせない風味やテクスチャーは、甘みと酸味のバランスにこだわり、すっきりと飲みやすい味に仕上げられた。
10月の発売に合わせたプロモーションも公表され、イメージキャラクターに俳優の江口のりこさんを起用し、キービジュアルでは〝日本初ののどを乾燥からケアする免疫サポート飲料〟を前面に打ち出しつつ、江口のりこさんの〝のど〟に焦点をあてたアプローチを行う。プロモーションについて「商品が持つ機能を『のどにバリア』と表現し、ラクトフェリンブランドのアイコンである六角形を配したビジュアルにもこだわった」と髙橋氏は語る。
免疫対策意識が高まり空気が乾燥する秋冬に向け、ビジネスパーソンや受験生といったターゲット層を中心に販売を進めていき、販売目標については、2025年度中(2025 年10月-2026年3月の約6か月)に15億円、3年後に倍の30億円を目指す。併せて今後、森永乳業横断でサプリなどの開発も進めていく方針だ。
編集後記
機能性ドリンクに求められる機能は多様性を帯びている。ドリンク(飲料)の最大のニーズは「のどの渇きに対する潤い補給」だろう。ドリンクの持つ「潤い補給」と、「ラクトフェリン」の持つ「のどの乾燥感軽減」という機能が結びついた「森永ラクトフェリン200」は、機能性ドリンクとして画期的な商品と言える。
また、風邪予防意識から「のどの乾燥感軽減」、それが体の生体防御である「免疫機能」へとつながるストーリーは、ユーザーにとって理解しやすい。
「日本初の〝のどの乾燥感軽減〟飲料」としての販売展開にも期待が持てる。「森永ラクトフェリン200ドリンクタイプ」はチルド飲料のため、CVSを中心とした小売店舗での忙しいビジネスパーソンや学生に向けた展開が主となる。一方で「6本パックといったストック用や家族向けの企画も検討している」(髙橋氏)そうで、SMなど大型チルド棚でのまとめ買いニーズにも、今後応えていけるだろう。そしてドラッグストアにおいては、乾燥シーズンの「免疫」「のど」対策はもちろん、コンサートやスポーツ応援、〝推し活〟に向けた体調管理と乾燥対策といった、新しい需要を取り込むことができると思われる。