8月10日(日)の「第25回JAPANドラッグストアショー」は一般デーかつショー最終日でもあり、多くのドラッグストア愛好家と美と健康感度の高い来場者が詰めかけた。天気は雨模様ながら、会場となった東京ビッグサイトでは他イベントとの相乗効果も生まれ、滞在時間も長く、「1日中楽しめた」との声が集まった。3日間で延べ99,510人が足を運んだ「第25回JAPANドラッグストアショー」は、〝NEXT25〟を体現する一大イベントに成長し、未来志向の施策や体験に来場者は目を輝かせていた。レポート第3弾は、ショー最終日のイベントの模様と、ブースの見どころを来場者の声を交えてお伝えする。なお、ボリュームの関係上、レポート第3弾は前後編にてお届けする。(取材=編集長・中西陽治)
夏休みどまんなか、長期休みの直前の開催という好日に恵まれた「第25回JAPANドラッグストアショー」。3日間の来場者は99,510人となり、米原まきドラッグストアショー実行委員の掲げた10万人に一歩届かなかったものの、当初予測されていた7万人から大きく飛躍。出展社数も398社(前回385社)、小間数は1,302小間(前回1,280小間)と増加した。25回目のドラッグストアショーは、10兆円を突破したドラッグストア業界の底力を内外に示す、夏の一大イベントに成長した。
会期 | 天候 | 来場者数 | 前回(第24回実績) |
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8月8日(金) | 晴れ/曇り | 26,969人 | 23,767人 |
8月9日(土) | 曇り/晴れ | 31,418人 | 33,199人 |
8月10日(日) | 雨 | 41,123人 | 40,978人 |
合計 | 99,510人 | 97,944人 |
なお、東京ビッグサイトの東4~7ホールで開催されたドラッグストアショーだが、西ホールでは国際鉄道模型イベント、最終日の10日には南ホールで人気漫画「ONE PEACE」の恒例イベントが催されていた。
家族連れで来たという女性グループに話を聞くと「小さいほうの子供とお父さんは模型を見に、お兄ちゃんはONE PEACEのイベントを見にいきました。私たち母親グループはドラッグストアショーを楽しもうと思います。最後はショーで待ち合わせしています。ドラッグストアは家族全員が使っているから、おみやげをいっぱいもらって帰りたい」と話してくれた。
ショー単体の集客だけでなく、夏休みならではのイベントが同じ会場で開催されることで、相乗効果を生んでいるようだ。
一時激しい雨となった天候も、ショーにとっては好材料に思えた。
東京ビッグサイト東ホールの一部の改装に伴い、飲食店が休業されていることから、ショー会場内では飲食需要に応えキッチンカーを増設した。また終日楽しめるようアルコールの提供も初実施。加えて「食と健康ゾーン」での各社の試飲試食の充実も相まって“一日中楽しめるショー会場〟が創り上げられたからだ。
現に、終了間際の女性グループの来場者は「午前中に行きたいブースだけ周ろうと考えていた。でも行列ができているブースがだんだん気になってきた。もう外は一日雨だし、1日ここ(ショー)にいよう、って。ビールも飲んでしまったし(笑)」と満足げな顔で応えてくれた。
ショーを盛り上げるイベントも、一般デーらしくバラエティあふれる内容となった。
午前と午後の2部で行われた「仮面ライダーガヴ キャラクターショー&握手会」は、後列でも観覧が難しいほど、ちびっこを連れた家族連れであふれた。
大声でヒーローを応援する子どもの姿をスマホカメラに納める母親に伺うと「日曜日の朝に『仮面ライダー』が放送されているので、見た後に子どもに『仮面ライダーに会いにいこうか』と。子どもは薬を嫌がるけれど、ドラッグストアのイベントでヒーローに会えたら、ちゃんと飲もうと思ってくれるかな」と話し、親の目線でイベントを楽しんでいた。
イベントステージでは11時45分から、女優の土屋アンナさんと堀美智子氏(日本薬業研修センター医薬研究所所長)による「土屋アンナさんが語る~フェムケアとドラッグストア」が開かれた。
土屋アンナさんは「ウチは子だくさんで、猫もいっぱい飼っているのでドラッグストアは頼もしいお店。今はドラッグストアでお菓子も売っているし、猫砂といったペット商品にいつも助けられています」と笑顔で語った。
堀美智子氏は「これまでのドラッグストアは安く買える場所でしたが、今は商品やサービスにしっかりと情報を結び付けて、お客さんに寄り添うお店になっていますよね」と語り掛けると、土屋さんは「確かにそうですね。とっても勉強になるし楽しい。ドラッグストアはもう生活の一部です」とうなずいた。
テーマであるフェムケアについて、土屋さんは「モデルとしてダイエットの意識を強く持っています。自分の体は自分で整えなければ、と。特に腸内環境が大事だと思っていて、私自身お酒を良く飲むので腸内の悪玉菌と善玉菌のバランスが乱れないように気を付けています。これも年齢によって変わってくると言われたので、ドラッグストアの方にいろいろ聞いてみたいと思います」と語り、堀氏は「ドラッグストアはお薬のイメージがありますが、実は管理栄養士といった栄養のプロもたくさんいます。ダイエットやフェムケアについてはセンシティブな部分もあるので、気になったらお客さんの方からプロの方にぐいぐい相談してほしいですね」とアドバイスを送った。
管理栄養士の存在が際立つJACDSテーマブース
堀氏のアドバイスを証明するように、JACDS主催の「テーマブース」に設けられた「簡単セルフチェック体験・ドラッグストア管理栄養士アドバイスコーナー」には長蛇の列が成されていた。
毎年人気のコーナーだが、今年はとりわけ賑わっているように映る。今回は「尿糖・尿たんぱく検査」「ストレス測定」「骨密度測定」「血管年齢測定」などが設置され、その結果に基づき、ドラッグストアある健康づくりアイテムの紹介と管理栄養士による食と健康アドバイスへと促している。
各チェック機器の横にはピクトグラムでカテゴリー化された機能性表示食品の売場実例が展開され、今後のセルフチェック機器と機能性表示食品の相乗効果、そして何より菅理栄養士の職能発揮の場が拡大することを期待させる盛り上がりだった。
続いてイベントステージでは12時45分から、プロレスラーの蝶野正洋さんと小室一成氏(日本循環器協会代表理事)による「血圧管理とAEDで突然死を防ごう」をテーマにしたプログラムが催された。
例年開催され、AEDの普及啓発に貢献しているショーでのプログラム。今回は心臓病と高血圧リスク啓発の「健康ハートの日」(8月10日)に合わせた「薬局・ドラッグストア参加型〝血圧啓発〟キャンペーン」とコラボレーションした内容となった。(参考:「血圧測ろうぜ!」呼びかけに日薬・NPhA・JACDSが賛同)
「健康ハートの日」を推進する小室氏は「日本人は塩分を多く摂る傾向にあり、高血圧患者も多い。また、女性は高血圧を原因とする心臓病など循環器系疾患の死亡率が高いのです。食事・睡眠・運動はもちろん、積極的に血圧を測って、健康なハートを持ち続けてください」と会場に語り掛けた。
蝶野さんは「私はお酒を飲まないのですが、お酒は高血圧の原因になりますか」と問うと、小室さんは「アルコールは血管収縮作用がありますから、飲んだ直後は血管が膨らみます。ですが翌朝には縮んで結果的に血管を傷つけてしまいます。また、お酒を飲む際は塩気の強いおつまみを食べますよね。1日の塩分摂取量は約6gが理想と言われていますが、タクアン一切れでも1gぐらいあります。ですから自分の血圧を把握しつつ、塩分量を意識することが大切です」とアドバイスを送った。
また、小室氏は「高血圧には症状がありません。よく〝血圧が高いから頭痛がする〟という人がいますが、それは逆で〝頭痛が発生したから血圧が上がった〟ということなのです。自覚症状がないからこそ予防すべきで、数字で可視化できる血圧計を利用してほしいですね」と会場に語り掛けた。
ステージでは血圧測定が行われ、観客の前でやや緊張しているのか「朝測った時より高い!」と蝶野さんは驚きつつも、「でも簡単に測れますね。ドラッグストア店頭や自宅で朝と昼の血圧の違いを見るのもいいかもしれません」と感想を述べた。
こういったイベントステージ、そして当日が「健康ハートの日」ということも相まって、ショー会場内でも「血圧」が一つのキーワードになっていた。
「ドラッグストアショー チャレンジパーク」に出展した「健康ハートの日ブース」では、薬剤師による血圧・心電測定と健康相談を実施。「血圧130mmHg以上は注意!」を合言葉に、測定習慣づくりを行った。
血圧測定を行っていた家族グループの父親は「会社の健康診断くらいでしか測ったことがなかった。高血圧がまずい、というのはなんとなく知っていたが、血管と心臓のメカニズムが知れて、予防に取り組みやすくなった気がする」と語り、横で見ていた母親は「家族の中でお父さんがやっぱり血圧が高いね。自分で測るのもいいけれど、家族みんなで測って数字を見せ合っていれば、続けていけるかも」とアイデアを提供してくれた。
また、ある高齢夫婦は「ドラッグストアの端っこに血圧計があるのは知っていた。でも売り物で触ったらいけないものだと思っていた。今日測って、使い方も分かったからドラッグストアに涼みに行ったときに試してみようかな」と笑って答えてくれた。
また、東5ホールの「ヘルスケアゾーン」に出展したアルフレッサ ヘルスケアのブースでは「『健康ハートの日』応援コラボ企画」が披露され、血圧チェックシートに基づいたクイズイベントが催された。
血管年齢測定コーナーと結び付けられた血圧チェックシートには、目標血圧値ゾーンの「正常血圧」から始まり、〝ドキッとしたあなたへ。今こそ「おうち血圧測定」を始めるチャンス!〟と書かれた「正常高値血圧」「高値血圧」、〝このゾーンなら受診を!高血圧〟と示された「I~Ⅲ度高血圧」と段階分けされており、測定した人達がシールを張ってクイズに臨んでいた。
測定およびクイズ結果に応じて「レイデルポリコサノール10」や「サントリー胡麻麦茶」といった血圧対策食品がサンプリングされ、受け取った来場者は「食事・睡眠・運動が大切なのはわかっているのだけれど…。でもこうやって測ることが大切だと知れたし、血圧をサポートする商品があるというのも安心しました」と、機能性表示食品の存在を再認識しているようだった。
これら測定を行った来場者が口をそろえて言ったのが「測った後どうすればいいかわからない。こうやってアドバイスやサポート商品を教えてもらえる機会が増えてほしい」ということだ。
これは「血圧測定に潜在需要がある」ということの証明だ。このニーズをどう店舗に落とし込み、ドラッグストアの機能として役立てていけるか。今後「血圧」がキーワードになるのは間違いないだろう。
AEDが一般市民でも使えるようになったのは2004年。2010年からAED普及啓発に力を入れ、現在は日本AED財団のAED大使を務め〝AEDと言えばこの人〟と言われる蝶野さん。
蝶野さんは「AED普及啓発を行ってきて、ほとんどのドラッグストアに設置されたことはとても感慨深い。でもまだまだ〝使い方がわからないから怖い〟という人がいる。AEDは起動すると自動音声でガイダンスが流れるので怖がらずに使い方を知ってほしい」と呼び掛けた。
小室氏はAEDについて「医師や医療人を除いて、人が人の命を救えることはそんなに多くありません。ですがAEDは数少ない『命を救える』ツールなのです。このAEDの普及によって救われなかった命が救えるようになった、これは素晴らしいことなのです」と語る。
昨今SNSを中心に、セクシャルハラスメントの観点から、女性にAEDを使用することをためらう論調が散見される。プログラムを見て感じたのは、「人の命を救う」という尊い行為であることを念頭に入れるべきだということだ。そのためには命を救うAEDという手段があること、そしてそれが誰でも使える、ということを知ってほしいと強く願った。
今回、ドラッグストア企業の出展内容にも変化が見られた。社会インフラとして機能するドラッグストアにとって、ロイヤルカスタマーの構築はショーにおいても例外ではない。各社が独自の持ち味を発揮し、既存および新規ファンとの関係性構築に力を注いでいた。
ウエルシアホールディングスのブーステーマは「変わる、変える、未来のウエルシア」。未来のウエルシアをイメージしたブースでは、巨大なタッチ型デジタルサイネージを用いたゲームを展開。体験型小売店とも呼べるアミューズメント感あふれる展開で「ドラッグストアに行けば何か楽しいことがあるかも!」と感じさせる内容に、来場者は行列で応えていた。
マツキヨココカラ&カンパニーのブースは「美しさと健やかさを、もっと楽しく、身近に」をテーマに、ドラッグストア企業の出展としては最大規模で展開された。同社の強力なPBラインアップの紹介から、調剤受け取りサービス「マツキヨココカラME」のアプリ案内には、常に列が形成され、特に健康感度の高い人たちが説明に聞き入っていた。
特に注目を集めていたのが「サプリメントバー」だ。個々の状態に合わせたサプリメントの組み合わせを提供する「サプリメントバー」の体験会では、ブースの枠をはみ出るほどの列が生まれ、「ビタミンBミックス」「コエンザイムQ10」などの成分をパーソナライズ化し、その場で提供されていた。
ツルハホールディングスのブースは「お客様の生活に豊かさと余裕を提供する」という理念に沿った展開が行われた。
ブースではツルハとファンケルが共同開発したスキンケアブランド「セラアクア」とヘアコスメ専売品「La ViLLA ViTA」のセミナーが紹介され、ドラッグストア発のビューティー提案に、化粧品メーカーとは違ったアプローチを求める来場者で席はあっという間に埋まっていた。
スギホールディングスのブースでは同社の「地域のヘルスケアのインフラになる」というテーマを掲げ、リニューアルした歩数計アプリ「スギサポWalk+」による体験。また昨今ドラマやアニメで注目を集めている漢方や薬膳にフォーカスした展開を行っている。
これら展開と全く違う理由でも、スギHDブースに行列ができていた。同社グループ会社のスギ薬局公式キャラクター「スーギー&スーニャ」との記念撮影だ。
記念撮影後のインセンティブがあるわけではない。誰もが「スーギー&スーニャと写真が撮りたい」との思いで30人近くの列が常時形成されていた。
撮影終了後にある子連れ家族に話を聞くと「スギ薬局のマスコットというのは知らなかった。子どもが撮りたい、というので」と話し、ほとんどの人が「スーギー&スーニャ」の存在を知らずに撮影を行っていた。
これは驚くべきことで、これまである種〝モノ売り〟だった小売店舗が、一つの大きなメディア・コンテンツに育っているということだ。
撮影を終えた人たちは、「スーギー&スーニャ」を通してスギ薬局に対する好感度が確実に上がっているだろう。このファンづくりは店頭POPやSNSでは成しえない、ショーならではの施策だと思えた。
ショー3日間を取材して感じたのは、ドラッグストアの健康拠点化は、国民の望む姿であるということだ。
これまでのドラッグストアショーは「サンプル配り大会」と揶揄されてきた。もちろん、ドラッグストアの商品はどれも素晴らしく、それを来場者に知ってもらうためのサンプリングは重要な施策だが「本当のドラッグストアの価値や機能をもっと知ってほしい」「メーカーやサービス提供者、サプライヤーや卸が商品に込めた思いを伝えたい」というメッセージとともに届けてこそのものだろう。その後、サンプル配布の方法はブラッシュアップされ“SNSで友達追加〟や“スマホでアンケート回答〟といったマーケティング目的も付与された。これは当初、一部の来場者からは不評を買っていた。曰く「めんどうだ」「スマホの使い方がわからない」といった声が数年前まで見られた。
今年はその参加者の反応が眼に見えて違っていた。誰もが、進んでスマホを活用してSNSやアンケートに応えている。スマホの活用が進み、アプリのダウンロードや個人情報の入力に対する心理的ハードルが下がったこともあるだろう。しかしスマホはただの道具であり、参加者が能動的にショーに関わろうとする本質はそこにはない。
なぜ、約10万人もの来場者が、ショーに足を運び、出展社やドラッグストア業界と能動的に関わろうとしているのか。それはドラッグストアが信頼される存在になったからだ。
「サンプルはうれしいけれど、それよりも紫外線についてもっと知りたかったから来場した。メーカーに直接会っていろいろ質問できるのはショーくらいしかないから」「なんだか最近ドラッグストアっていろんなことをしているじゃない。市販薬って何だろうって聞けたら、と思って」「今、ドラッグストアって食品もいっぱいあるよね。こないだ行ったら欲しかったお米があってすごくうれしかった」――来場者の声は、ドラッグストアが国民の期待に応え、進化してきたことの証明だ。
“行けば楽しい〟“知らない情報や困りごとに応えてくれる〟・・・ドラッグストアに対する信頼感が根付いたからこそ、来場者は積極的にドラッグストアショーと関わろうとしているのだろう。
最終日後半のレポートでは、注目ゾーンの紹介と、今後のドラッグストアの機能についてお伝えする。