メッセフランクフルト ジャパン
統括マネジャーの大井田美由紀さんと
コーディネーターの杉山未佳さんに聞く
『高まる健康と美ニーズに応えるビジネスチャンスの創出』
日本のビューティビジネスを創造し進化させ、様々な販路開拓へ商品とサービス、情報、技術が国内外から一堂に集う総合ビューティ見本市が今年も開催される。ドイツ・フランクフルトに本社を構える世界最大級の国際見本市ビジネスを展開する、メッセフランクフルト日本支社のメッセフランクフルト ジャパン株式会社が主催する『ビューティーワールド ジャパン』だ。「世界的なトレンドとして美しさへのベースとなる健康的なライフスタイル」に注目が集まる中、27回目になる今回は、外見の美しさや健康、マインドフルネスを叶える“フィットネス”と“ビューティ”をテーマとしたゾーンを新設する。例年、来場者はエステやネイルサロン、美容関係者が多いものの、近年、高まる国民のヘルスケアニーズに応えヘルス&ビューティ路線を強化するドラッグストア関係者も少なくない。差別化への武器の登場に期待を寄せているからだ。日本最大級の総合ビューティ見本市『ビューティーワールド ジャパン』統括マネジャーの大井田美由紀さんとコーディネーターの杉山未佳さんに、『高まる健康と美ニーズに応えるビジネスチャンスの創出』を聞いた。
(取材:ヘルスケアビジネスサイト「Hoitto」編集長・中西陽治/文:流通ジャーナリスト・山本武道)
――1998年に初めて東京で開催されてから今年で27回目(2020年はコロナ禍で中止)となる総合ビューティ見本市『ビューティーワールド ジャパン』は、ヘルス&ビューティビジネス関係者が集う見本市ですが、そもそもどのようにして創設されたのでしょうか。軌跡をお話しください。
大井田:本社のメッセフランクフルトは1150年に、フランクフルトで記録上最古の見本市を開催しました。875年後の今、世界最大級の国際見本市を主催する会社として、グループ全体で世界28か所の拠点に約2500名以上のスタッフを抱え、世界中で事業展開をしています。
当社は、メッセフランクフルトの日本支社として1987年に設立され(当時はメサゴ・ジャパン株式会社)、グローバルなネットワークを強みに日本国内で業界をリードする国際見本市を企画・運営してきました。今日では、日本とアジアにおけるエステ、美容と健康産業に貢献する商品と情報を発信するBtoBの国際見本市として、エステやネイルサロン、美容室、小売関係者、輸入商社と国内外の化粧品・美容機器メーカーとのビジネスの出会いの場を提供し、東京、大阪、名古屋、福岡の4か所で開催しています。高齢化の進む日本で、美容と健康産業が担う分野の広がりに伴い、毎年新しい商品やサービスが登場してきました。
『ビューティーワールド ジャパン』は、1998年に日本国内で初めて開催された『エステ・エキスポ・ジャパン&ビューティー』が前身です。かつてはエステティック業界に、こうした見本市がなかったので、エステティックサロンやネイルサロンに向けた見本市としてスタートさせたのが始まりです。
――見本市に参加する海外企業の特長を教えてください。
大井田:昨年の見本市は、東京ビッグサイト東1〜8ホールに3日間を通じ、出展企業は11カ国・地域から820社(国内703社、海外117社)が参加し、来場者は海外45か国を含めて7万7000人以上、過去最大規模で開催しました。これは、『ビューティーワールド ジャパン』に対する期待の表れだと思っています。
今回の出展企業は、前回より100社ほど増えて955社になりました。海外出展企業数は例年より10%ほど増え、昨年の約2倍の219社に達しました。海外の参加出展企業数は韓国がトップです。
―― 今回が27回目になりますが、来場者に向けて新しいゾーンはありますか?
大井田:基本的には、エステティック、ヘア、ネイルなどのサロン向けの見本市というイメージがありますが、ここ近年は、エステティックやサロン向けの商材だけではなく、体の内側からきれいに健康になれる商材を集め、様々なゾーンを立ち上げています。出展企業の中からも、ヘルスケア関連商材も出てきましたので、もう少しそれを集めていこうということで、2020年には、『からだ+キレイ』という、“ウェルネス”関連の商材を集めたエリアを設置しました。10年先の“きれいと健康を作る”商材(サプリメント、温活商材、睡眠サポート商材、オーラルケア、ボディメイクなど)といった、まさにヘルスケア関連商品が増えてきたことを重視しています。
そして3年前からは“おいしく食べてきれいになれる”食べ物や飲み物を集めた『テイスティ』エリア、美しく健やかに女性の健康を応援するエリアとしてフェムケア・フェムテック商材を集めた『フェムモア』も設けています。
こうした中、今年初めて“フィットネス”と“ウェルネス”をテーマとした『Fitness+Beauty(フィットネス+ビューティ)』ゾーンを、東京ビッグサイト東8ホールに新設しました。フィットネスと一言で言っても、いろいろな種類はありますが、見本市では、いわゆる筋トレをして体を大きくするのではなく、女性が美しくなれるヨガ・ピラティスなど、ヘルシーな体づくりを通じ外見の美しさやマインドフルネスを叶え、持続的な幸福をサポートするフィットネス系の商材を集めるほか、ホール内ではフィットネス分野で影響力のある講師をお招きして、ヨガやフィットネスに特化したワークアウトセッションを実施します。
――新設ゾーン開設への背景は?
杉山:新しいゾーンを作る前から、出展企業の中からニーズが出てきていましたし、人生100年時代、世界的なトレンドとして、美しさのベースとなる健康的なライフスタイルへのニーズが高まり、自発的に体を動かすワークアウトの重要性が認識されています。
『ビューティーワールド ジャパン』自体が、もともとエステサロン向けの商材が集まる見本市でしたが、出展商品にはサロンで施術に使ったりするような商材だけではなく、施術が終わった後にお客様に提案できる商品、体をきれいにするサプリメントなどのヘルスケア関連商品の需要が高まっています。
海外のトレンドを見ると、日本もそうなのですが、人生100年時代にあって美しさのベースに健康であることの重要性が指摘されているように、そうした意識がビューティ業界でも追及されるようになってきました。自発的な体を動かすなどワークアウトを通じ得られる身体的な健康は、肌や体型など外見のポジティブな影響を与えるだけでなく、ストレス解消やリラックス効果など、メンタルヘルスにも良い影響をもたらす重要性も、意識されるようになりました。
エステやサロンをはじめビューティ業界では、今やトータルビューティがテーマになっています。トータルビューティが求められるビューティ業界では、エステにネイルサロンなどを併設した複合サロンも増えてきている中で、海外ではスパ施設内に、フィットネススタジオにエステを併設するのが主流です。
まだ日本では、こうしたトレンドを実践するケースは少ないのですが、今後、そういう需要は必ずあるということで、新しく『Fitness+Beauty』ゾーンを立ち上げました。“フィットネス”と“ウェルネス”をテーマにして、外見の美しさやマインドフルネスを叶え持続的な幸福をサポートする商材を集めたゾーンでもあります。
フットネス要素を取り入れたサービスを提案することで、お客様をより一層のリラクゼーションやマインドフルネス、全体的なウェルビーイングに導く包括的な美と健康の提案が可能となります。
こうした背景から、ヘルシーな体づくりを通じて、外見の美しさやマインドフルネスを叶え、持続的な幸福をサポートするためヘルスケアに関連した『Fitness+Beauty』ゾーンを初めて立ち上げます。フィットネス系商材、CBD商材やリラクゼーショングッズといったマインドフルネス系、検査キットといったヘルスケア系、プロテインやサプリメントなどのリカバリー&パフォーマンス向上系の商材が集まります。フィットネス業界をはじめ多くのヘルスケア関連業界への新たな販路開拓へのチャンスを提供します。
――『Fitness+Beauty』ゾーン以外に、他に新しいゾーン展開はありますか?
大井田:医療関係者限定の特別エリア『クリニックケア』(東7ホール)を新設します。治療と術後のケアなど、患者の美と健康をサポートする美容クリニックや皮膚科などクリニック専売のコスメブランド、健康食品、サプリメントやサービスなどを集め、医療関係者に提案するものです。
エステでは取り扱えないけれども、クリニックで販売するための成分配合された製品を全く違うパッケージで全く違う価格帯で展開している企業もあり、エステ業界は対象にせずに、クリニックだけを対象にしているという企業もあります。そういった企業の方々に参加していただきたく、このエリアへの入場は医療関係者に限定しました。
つまりビューティと医療分野の融合、コラボレーションです。会場では、①クリニック向けの製品が見つかる、②医療や美容の最新情報が学べる、③売上げアップのチャンスが広がるための美容医療業界を牽引するドクターによるセミナーや、出展企業のプレゼンを通じ最新トレンドや知識を研鑽することができます。
―― 『ビューティーワールド ジャパン』では、これまで女性の健康生活をサポートする『フェムモア』ゾーンも開設されています。今や、こうした商材は、女性の社会進出に欠かせません。
大井田:女性の社会進出があり、女性の体、健康生活をサポートするフェムケア商品の需要も増えてきています。月経、妊娠、出産、メノポーズ(更年期障害)等々、女性はライフステージによって特有の悩みを抱え、痛みとか辛さで表に出てしまうケースも少なくありません。痛みや辛さを和らげて補う商材を紹介するためにも、『ビューティーワールド ジャパン』で世界的に広がるフェムケア・フェムテック分野の商材を集めて2023年からゾーンを設けました。
体の内外から女性が美しくなるという製品以外に妊活、更年期、PMS(月経前症候群)、サニタリーショーツ、バストケア、生理用品、月経カップ、さらにはデリケートゾーン対策用品、健康管理システム、産前産後ケアなど、心と体の健康を守り育み、女性を応援する製品が求められているからです。
―― お話をお聞きしていて、体の内側からきれいになる商品、例えば食品であったり運動機器であったり、そうした商品をまとめて“体の内側からきれいになるコーナー”を展開するという提案もありですね。それは美容、フィットネス業界に限らず、“街の健康ステーション”としての機能を持つドラッグストアで取り組むべきテーマでもあるでしょうね。
大井田:当見本市は、まさにヘルスケア最前線の商材を集めましたので、ドラッグストアの方々にも、ぜひご来場いただき健康と美関連産業に関わる様々な商品とサービス、期間中に企画されたイベントにもご参加ください。
<記者の眼>
メッセフランクフルト ジャパンの資料に「ローマ皇帝のフリードリッヒ2世が
フランクフルトに見本市開催の権利を与える」と綴られていた
様々なフェア開催のプレスニュースが数多く送られてくる。毎回、情報を得て、なるべく取材に行くが、例年、ドイツ・フランクフルトに本社を構えるメッセフランクフルトの日本支社であるメッセフランクフルト ジャパンが東京ビッグサイト東ホール全館を使用し開催する総合ビューティ国際見本市『ビューティーワールド ジャパン』の広い会場を見て回ってきた中、なぜ主催者を取材しようと思ったのか。
その理由は、私自身がドイツ・フランクフルトを数回に渡り訪問し、重厚な店構えのアポテーケを訪れ取材したことがあった。アメリカのドラッグストア業態が、全てではないものの、一部崩壊寸前にあるとの話を耳にして、これからは専門性を志向するアポテーケの経営実践が、日本のドラッグストアにとって、過去も今もこれからも学ぶ必要があると思ったからだ。
ドイツでは、健康食品専門店のレホルムハウスは、専門学校のホッハアカデミーに学び資格を取得しなければ開業できない。日本の薬局・薬剤師に同行し専門学校を取材した。フランクフルトとミューヘンの中間地に位置するハイデルベルグには、薬資料館があった。柳の葉から抽出した成分がアスピリンの原料になり、そしてイチョウ葉エキスを主成分とする医薬品を製造するシュワーベ社も取材する一方、1958年創業のハーブを主体として自然療法をベースにした商品などを販売するマリエン薬局(バイエルン州プリーン市)の経営者にもお会いした。
そんなストーリーがあったから、メッセフランクフルト ジャパンが主催する『ビューティーワールド ジャパン』にも興味を持ち、今月の28日〜30日に開催される見本市を前に取材を思い立ち、インタビューが実現した。
フランクフルトを拠点として876年に及ぶ展示ビジネスを展開するメッセフランクフルトの資料を見たところ、1150年に「フランクフルトで記録上最古の見本市が開催」と記載され、1240年には「神聖ローマ皇帝フリードリッヒ2世がフランクフルトに見本市開催の権利を与える」と綴られていた。
フリードリッヒ2世といえば、医薬分業を提唱したことで知られるが、皇帝が誕生したシチリア島にも薬剤師さんと行ったこともあって、『ビューティーワールド ジャパン』の存在が、とても近い距離になった。1998年にスタートしてから27年が経過した国際見本市は、ヘルスケア最前線で活躍するドラッグストア業界にとって、差別化商品情報が入手できる場だ。『ビューティーワールド ジャパン 東京』への来場事前登録は以下で。
https://beautyworld-japan.jp.messefrankfurt.com/tokyo/ja/planning-preparation/visitor.html?utm_source=BWJ2025&utm_medium=article&utm_campaign=hoitto