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【レポート】ウエルシアHD「ハックドラッグBIOKA店」

 ウエルシアホールディングスが「実験店」と位置付ける意欲溢れる店舗「ハックドラッグBIOKA店」(神奈川県横浜市青葉区美しが丘)が注目を集めている。同店はウエルシアモデルの強みであるカウンセリング力をあえて控えめにし、生活者の感度と直感に委ねるセミセルフ販売を押し出した。OTC医薬品、日用品など生活必需品を取りそろえながら、トイレットペーパーやオムツといった衛生商品は抑え、キャラもののステーショナリーや靴下などのアパレル、食品では流行のグミやエナジードリンク、韓国食品をメインに取りそろえる。中でも化粧品が4割を占め、アジアンコスメを中心に、シートマスク、入浴剤、男性用化粧品などを強化した最先端「ヘルス&ビューティー」特化型の店舗だ。店長の梅本亜希氏は「『ハックドラッグBIOKA店』はこれまでになかったチャレンジにあふれる店舗です。カウンセリングを主とした提案より直観に訴えかけるような商品とレイアウトで新しいお客様を獲得していきたいと思います」と笑顔で語る。ドラッグストア業界のトップを走り、その一挙手一投足が注目されるウエルシアの新しい挑戦をどこまでも詳細にお伝えする。(取材=中西陽治)

梅本亜希店長

 「ほかの店舗の常識は、ここでは非常識なのです。メーカーさん、バイヤーさん、スタッフも一緒に〝常識をぶち壊そう〟と言ってお店作りをしていますね」と梅本亜希店長は屈託ない笑顔で話してくれた。
 「ハックドラッグBIOKA店」は、食品スーパー「食品館あおば美しが丘店」(2024年3月に閉店)の跡地に2024年12月にオープン。店名のBIOKAには、「美しい(BI)」「丘(OKA)」と名付けられており、ビューティー特化の店舗にふさわしいネーミングだ。店舗コンセプトは、Z世代・ミレニアル世代をターゲットにし、〝キラキラしてかわいい、楽しい、わくわくするお店〟をイメージしている。
 店舗に足を運ぶと、入口にはネオンカラーで描かれたウエルシアのキャラクター「うえたん」がお出迎え。店内も黒地にカラフルな装飾が施されており、店舗全体が買物の高揚感を演出しているように感じられる。

 購入に訪れた生活者に話をうかがうと「初めてBIOKAに入ってみたけれど、見たこともない食品が安く売っていて驚きました。この近辺はマンション住まいが多いから、若い人にとっては〝映える〟お店ね」と語ってくれた。同行していた娘さんは、食品を買い終えた女性をやや待たせてコスメ売り場を眺めていた。


 2Fには百円ショップ「meets(ミーツ)」が入居していたが、こちらも昨年閉店し今は空きテナントになっている。
梅本亜希店長は「カフェやフィットネスジムなどが入居してくれれば、BIOKAのコスメ&バラエティとの相乗効果も期待できます」と語る。

「ハックドラッグBIOKA店」の外観

 なおBIOKAから100mほど離れた距離に「ハックドラッグ美しが丘店」がある。こちらはペットやガーデニング用品を別館に設け、本館はウエルカフェ、調剤併設、生鮮取扱いなどフルラインアップをしている。車で訪れる生活者に応じ第4駐車場まで完備しBIOKAと補完関係にある。
 梅本店長は「BIOKAはセミセルフで最先端のコスメ、美しが丘店のコスメはウエルシアモデルの強味であるカウンセリング化粧品をそろえ、店舗のカラーに合わせた商品で差別化を図っています」と語る。

 当初は1Fに従来のウエルシアモデルの店舗を出店し、ドミナント戦略を図る予定だったが、ウエルシア薬局の田中社長と花王Gマーケティング社が意気投合し「ウエルシアが取り切れていなかったミレニアル世代・Z世代」をターゲットとした新規フォーマットに着手した。

 梅本店長は、新規ターゲット世代の感度に沿った商品および店内レイアウトに力を注ぎ、バイヤーやメーカーとアイデアや商品展開を共有し、その想いをBIOKAに表した。
 ネオンカラーのパネルやデジタルサイネージ、棚は全て黒色で統一され、ネオンカラーの仕切りにタッチ式のデジタルサイネージを6台用意。
 入店して目に飛び込んでくるのがセミセルフ、スタンディング型のコスメテイスティングコーナー。鏡の輪郭にLEDライトがついた「女優ミラー」が6大並び、テーブルに置かれたおすすめコスメはもちろん、店内にある全てのテスターが試せる。鏡はタッチパネルになっており、LEDライトを暖かなオレンジ色の「電球色」とクリアなブルー色の「昼光色」に切り替えられる。この取り組みはウエルシア初となる。
 「ミレニアル世代・Z世代は『好きな色』より『似合う色』を好む傾向にあります。ですから、ライトの色もいわゆる〝イエベ〟〝ブルべ〟といったご自身の肌タイプに合わせて試せるように工夫しています」(梅本店長)。


 コスメテイスティングコーナーには、極力説明やインフォメーションを置かず、鏡のLEDライトスイッチもマークがあるだけ。セミセルフに徹し、生活者が直観的にコスメを試せるような、「引き算の気遣い」が感じられる。
 コーナーにはイチオシのコスメが置かれている。「例えば若年層に人気の口紅『KATE リップモンスター』を全色試せるお店はなかなかないと思います。あえてスタンディングにしたのは気軽にいろいろ試していただきたいという思いと同時に、若年層の流行感度と並走し直観的に試せるコーナーを意識しています」と梅本店長は切り口鋭いトレンド感とコスメに対する直観を重視している。

 テイスティングコーナーを囲むように、最新トレンドのコスメゾーンが並ぶ。韓国をはじめとしたアジアンコスメも13ブランドと充実している。
 梅本店長におススメ、人気商品を聞いてみた。

 韓国コスメのリップ&チークバーム「エッセンシャル リップチーク タップ」(クリオ)は、発色と血色感が人気。「スライド型の容器で、角の取れた四角形なのでストラップを付けてチャームのようにぶら下げられるのがオシャレと好評です」(梅本店長)。化粧品としての機能だけでなく、気分を高揚させるパッケージや〝気取らない感〟が若年層に刺さっているようだ。

 1枚売り税込55円という超プチプラのシートマスク「CENQUR エッセンシャルセラムマスク 」(千空)をフルラインアップし、併せて10枚入り商品も並列展開する。「税抜で1枚ワンコインですし、10枚入りでも500円ちょっとですので、複数買いされるお客様が多いですね。またコスメに興味が出てきた小学校高学年のお客様のトライアルにも成功しています」と、プチプラならではのお得感もアピールしている。

 昨年10月に発売されたスキンケアブランド「SHIMBI METHOD(シンビメソッド)」(ストーリア)も店頭に導入。「注目ブランドは速度感をもって採用しています。スマホで調べられる『美容成分辞典』のPOPを添えてセルフで自身にあったスキンケアが選べるようになっています」(梅本店長)。

 またマルマンH&Bが代理店を務める韓国スキンケアブランド「Torriden(トリデン)」など、梅本店長も自身で試したうえで、新進気鋭のブランドを取り揃えている。

 ドイツ発の美顔器「GESKE」(ドリームファクトリー)ではサンリオキャラクターとのコラボ商品を陳列し、高価格帯の美容機器にもバラエティ感を与えている。

 乾燥性敏感肌に向けたスキンケアランド「Curel(キュレル)」(花王)の展開では、ドラッグストアでの導入は珍しいタッチパネル式のカウンセリングコーナーも設置。店頭でおなじみの商品にもBIOKAらしさで差別化を図る。

 ターゲットの若年層を意識し、ヘアカラーコーナーも充実している。ネオンカラーに映えるパープルやピンクのヘアカラー、短期間の毛染めや一時的な黒髪戻しなどを、従来店舗よりラインアップを広げて棚を構築している。

 同じく若年層にニーズの高いカラコン・コンタクトレンズコーナーも拡充した。コンタクトだけで棚6本を占め、コーナーを広げた〝ゾーン化〟で来店客の興味を惹く。

 オーラルケアコーナーも梅本店長の店づくりの思いが込められている。「陳列で可能な限り実現したいと思ったのが、カラーの統一です。例えば歯ブラシではアクリルのような透明感ある商品と、清潔感ある白色の陳列を分けたり、若年層が好むビビッドなカラーを目立つ場所にする、色で選べる展開をしています。同時にキャラクターとコラボレーションした携帯用歯ブラシセットなど、エチケット需要にもバラエティ感ある商品を含ませています」と棚の見え方、彩りにも気を配る。

オーラルケアもキャラもの&色選択で差別化

 梅本店長のカラー展開は食品エリアのドリンクコーナーにも現れている。
 冷蔵のドリンクコーナーでは手前にコーラやウーロン茶、コーヒーなどブラック系、中央にオレンジやイエローなどビタミンカラーを集め、奥に緑茶やグリーン系のドリンクを陳列した。
 梅本店長は「ドリンクコーナーでは〝あなたの推し色はどれ⁉〟のポップで、テイストやカテゴリーによる分け方より、お客様が好むカラーや気分を盛り上げる演出を行っています」と語る。なるほど、ペットボトルのコーラは「黒」、缶のコーラは「赤」と配色別に並べることで、いつものドリンクコーナーが違って見えてくる。

「あなたの推し色はどれ!?」でドリンク提案。左から黒、赤、緑とカラー別で陳列されているのがわかる。

 さらに若年層に人気のエナジードリンクも幅広く展開。海外ブランドの多いエナジードリンクをナショナルブランドと区別し、さらにトレンド飲料と同時に展開している。
 「BIOKAで仕掛けて好評なのが韓国の缶ジュース『ぶどうポンポン』(HTBジャパン)です。ハングルのパッケージや果実感ある美味しさで、ナショナルブランドとは違ったものを求める方に人気です。これはアイスコーナーにも現れていて、韓国発のアイス『ゴールドスター 王スイカアイス』や『クリーミーヨーグルトボール』など値段もお手頃ですしリピーターが多いです」(梅本店長)。

 入口にはガチャガチャコーナーが25台設置されており、専用の両替機も完備。「学校帰りの小学生が多いですが、意外と大人の女性も立ち寄っていただいています」(梅本店長)とターゲット層に合わせたバラエティ感を打ち出している。
 梅本店長は「ミレニアム世代、Z世代の方をターゲットにした当店では、何よりもスピード感が重要です。ですから店舗を運営しながら“考えて動く〟ことを心掛けています。常に流行感度を高くもち、お客様のトレンドニーズの一歩先を行き、提案していかなければなりません。“お客様の流行感度の速さに応えられなかったら負け〟と思うくらいです」と自らの覚悟と研鑽を語ってくれた。

 そして「この間までYogibo(ヨギボー)さんと企画した、特製の『うえたん』ビーズソファーを置いていました。またこういったおもしろい仕掛けをご用意してお客様をお迎えしたいですね」と楽しそうな顔で笑ってくれた。


編集後記
 “店舗のメディア化〟が語られて久しい。今やコンビニエンスストアのレジ上には巨大なデジタルサイネージ、スーパーでは野菜・魚・肉の生産者からのメッセージ、ドラッグストアではタレントや声優を使った独自の店内放送プログラムと斬新な取り組みで生活者の目と耳を楽しませ、推売へとつなげている。
 ただこういった技術やツールが現れる前は、店舗スタッフがメディアであり、情報発信の担い手であった。誰よりも商品に詳しく、流行に敏感で、生活者のニーズの一歩先を行く。百貨店化粧品売り場の美容部員や、ファッションビルの“カリスマ店員〟などが良い例で、「この人から買いたい!話を聞きたい!」と感じて生活者は店舗に足を運んだように、ある種、現在のセルフ購入とは対極の商売があった。
 今やSNSやリテールメディアに情報があふれ、それを用いた“正しい買い物〟を良しとする風潮がある。それ自体を否定するつもりはないが「コスパ」「タイパ」「情弱」などの流行語を耳にするたび“正しい買い物に楽しさがあるのか〟と自問することがある。
 ヒトの購買行動は消費の楽しさであり、プリミティブなものだ。「高すぎる買い物だったけれど、買うときはすごく楽しかったな」「買って家に帰るまでワクワクしたよな」という思いでは誰にもあるだろう。たとえ買ったものが意にそわないものであったとしても、この買い物の楽しさは「コスパ」や「タイパ」では得られない喜びだ。
 買い物の喜びは、購入までのプロセスにこそ宿る。
 “カリスマ店員〟の情報発信から、SNSやレビューサイトなどでお気に入り商品を調べる時代に移り、スマホの中のセレブリティやインフルエンサーの紹介する商品、「いいね!」や優良レビューが多い商品が優れていると錯覚しがちだ。
 “正しい買い物〟など存在せず、昔も今も生活者は購入に迷い、商品そのものの「モノ」ではなく、買い物という「コト」に喜びを見出す。そのワクワクや高揚感を提供するBIOKAこそ、生活者が求めている本来の店舗のあり方ではないだろうか。ウエルシアの新しいチャレンジと、梅本店長の楽しそうな笑顔を見て、そう感じた。