大正製薬(上原 茂社長)は、かねてより研究してきたミトコンドリアに存在する酵素「Mitochondrial Ubiquitin Ligase(マイトリガーゼ)」と肌に関する研究において、マイトリガーゼの減少によって酸化ストレス後のダメージ修復が阻害されることを新たに発見した。研究成果を2024年11月27日~29日に開催された第47回日本分子生物学会年会で発表している。
細胞の活動に必要なエネルギーを生み出すミトコンドリアの機能低下は、老化に深く関連しています。これまでに当社は、ミトコンドリアに存在するマイトリガーゼの減少が、肌老化を引き起こす可能性を確認してきました※1。
私たちの肌は日々ストレスにさらされ、肌細胞にあるDNAが損傷を受けています。DNAが損傷すると、活性酸素が産生され、肌老化の原因となります(図1)。しかし、私たちの肌にはDNA損傷を修復させる仕組み(DNA損傷修復応答)が備わっており、この損傷修復応答が働くことで損傷したDNAを元の状態に戻し、活性酸素の産生を制御し、肌老化に抵抗しています。
本研究ではマイトリガーゼと肌を修復する力の関連に着目し、酸化ストレスを受けた後のダメージ修復におけるマイトリガーゼの役割について検討しました。
※1 2024年4月17日発表リリース
『若返りの鍵「マイトリガーゼ」と肌老化の関係を多角的に解明~コラーゲン、老化マーカー、肌細胞の動きへの影響~』
URL:https://www.taisho.co.jp/company/news/2024/20240417001535.html
DNA損傷修復応答が、マイトリガーゼ減少状態ではどのように変化するかを肌の細胞を用いて調べました。
正常時(コントロール細胞)では、酸化ストレス刺激によってDNA損傷修復応答(緑色の点)が開始されますが、マイトリガーゼが減少した細胞では、酸化ストレス刺激を受けてもDNA損傷修復応答が開始されないことがわかりました(図2)。
マイトリガーゼを減少させた肌の細胞を用いて、酸化ストレス刺激に伴う活性酸素の産生を調べました。正常時(コントロール細胞)では、酸化ストレス刺激により活性酸素が増加しますが、DNA損傷修復応答が開始されるため、その後刺激を止めると活性酸素は増加しませんでした。
一方で、マイトリガーゼが減少した細胞では、DNA損傷修復応答が開始されず、酸化ストレス刺激を止めた後も活性酸素が増加し続けることが明らかとなりました(図3)。
マイトリガーゼが減少すると、酸化ストレスによって起こるDNA損傷修復が十分に行われず、その後活性酸素が増え続けてしまうことが明らかとなりました。つまり、加齢によってマイトリガーゼが減少した状態で酸化ストレスを受けると、肌老化が加速する可能性があります。
このことから、若返りの鍵「マイトリガーゼ」を活性化することができれば、肌のダメージ修復力が高まり、肌老化に抵抗できることが期待されます。
私たち大正製薬は、健康で美しくあり続けたいと願う生活者の方々に向けて、これからも美しい肌に繋がる先端の美容研究を進め、その研究成果を皆様にお届けしてまいります。