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糖尿病を“積極的”に予防する社会の実現へ〜日本血糖値協会が本格始動

日本血糖値協会が本格化始動〜代表理事の木屋舞氏に直撃インタビュー

代表理事の木屋舞氏

――「血糖値」を身近な指針にして、人生を最大限に楽しむ健康づくりに貢献したい。――1人の糖尿病専門医の強い想いから、一般社団法人 日本血糖値協会は誕生した。今後協会は、「血糖値スパイクスコアの解析」や「食事のケアプラン作成」などを通じ、糖尿病の予防を広く啓発していく。このほど、同協会の代表理事を務める木屋舞氏(日本糖尿病学会専門医、日本内科学会認定内科医)に、協会設立の経緯や今後の活動について話を聞いた。(取材と文=八島 充)

世界中で患者が増えている糖尿病。日本の罹患者は推定で約950万人、罹患の可能性を否定できない予備軍を含めると約2050万人にのぼる。一度罹患すると完治しないのがこの病気の特徴で、自覚症状が出た時はすでに合併症が進んでいることも多い。症状が進むと失明や神経障害、腎症を発症する恐れがある。

主な治療法は「食事療法」「運動療法」「薬物療法」の3つで、徹底した糖質制限はもとより、インスリン注射や透析を続けるなど、辛い治療生活を強いられる。そうならないためには、日々の健康管理が何より重要だ。

暴飲暴食がやめられない方、忙しく働くビジネスパーソン、過度なダイエット志向者などは要注意。気づかぬうちに予備軍に陥ることも十分にあり得る。どうすれば予防を促すことができるのか。その答えを求め今年3月8日に発足したのが、一般社団法人日本血糖値協会である。

「早い段階で気づきを与えることが重要です」と木屋氏

「学生時代から料理を作るのも食べるのも大好きでした」と語るのは、協会理事長の木屋舞氏。現在は都内で糖尿病専門医として働く傍ら、「健康で食べられる喜び」を、SNS等を通じ伝えている。

その木屋氏、大学在学中から糖尿病専門医を志向していたという。臨床実習で糖尿病外来に赴いた際に、厳しい食事制限を強いられている患者を目の当たりにしたのがきっかけだった。

「食を最大限に楽しみながら健康を取り戻すにはどうすべきか」。医師免許を取得した彼女は、順天堂大学で診療に携わりながら、予防医学の臨床研究を行うスポートロジーセンター(河盛隆造センター長)の研究に携わった。センター長補佐の田村好史教授との良縁もあり、「予防医学」の重要性を確信するに至った。

「日本人を含む東アジア人は欧米人よりも太りにくい体質で、それが太っていなくても代謝異常を引き起こす一因です。実際に20歳前後の女性に行った臨床試験では、標準体重の人より痩せている人の方が血糖値スパイクを起こしやすいというデータが集まりました。このまま年齢を重ねると糖尿病に近づいてしまうので、早い段階で気づきを与え、予防してもらうことが重要です」(木屋氏)

とはいえ、研究の成果をサービスとして提供するには、診療医としての壁を越える必要もあった。「予備軍だけでなく、その手前の方にも、私が積み上げた経験と知識をまっすぐに届けたい」。その想いが、協会発足の原動力となった。

協会が血糖値の重要な指標としているのが、食後の血糖値が急上昇・ 急降下を起こす状態を指す「血糖値スパイク」だ。血糖値の乱高下は血管にダメージを与え動脈硬化の要因となり、心筋梗塞や脳卒中による突然死のリスクも高まる。

「血糖値スパイク」は食後のだるさや疲労感、集中力の低下といった症状に現れるが、それをなんとなくやり過ごすことは多い。また、医療機関での血糖値測定は空腹時、かつ一時的な数値しか測れず、食事の前後に起きる「血糖値スパイク」を見落とすこともある。

そこで注目したのが、アボット社の測定デバイス「FleeStyleリブレ」である。「リブレ」は、直径35㎜、厚さ5㎜の使い捨てセンサーを腕などに装着し、皮下のグルコース濃度を測定するシステム。センサーは自身で装着でき、1回の装着で2週間分のデータが取れる。その間は入浴もスポーツも通常通り行うことが可能だ。

協会では、「リブレ」で取得したデータをもとに「血糖値スパイク」をスコア化し、独自の解析方法によって改善策を講じるプログラムを提案している。「酸化ストレス、心疾患や骨粗鬆症のリスク等をエビデンスに基づき計算し、今後の生活に役立つ具体的なアドバイスをおこっています。自宅で気軽に毎日づけられるプログラムを活用して、幅広い方に“攻めの予防”を実践していただきたいですね」(木屋氏)という。

協会のメンバーには、管理栄養士の佐藤樹里氏、そして薬剤師の溝呂木俊介氏が名を連ねる。佐藤氏は、「エンタメから健康をお届けすること」を使命に、ダイエットサポート、執筆、レシピ開発からイベント考案、メディア出演までマルチに活躍。また溝呂木氏は、ドラッグストアと調剤薬局の勤務経験を活かしたコンサルタント事業を展開している。

両者とも予防医学の知見を持ち、医療の外側からのアプローチができる人材だ。彼らの知見を用いて、食事指導のアドバイスのほか、将来的に協会推奨の食事・運動・サプリメントなども提案していきたいという。

最後に「協会のゴールはどこにあるのか?」と木屋氏に聞くと、以下の答えが返ってきた。

「糖尿病には自己管理能力の欠如というイメージがありますが、そもそも私たちは、体型に関係なく糖尿病に罹りやすい人種なのです。大切なのは、明るく前向きに予防に取り組むことであり、そのお手伝いをすることが、当協会の使命と考えています。

欧米人は健康管理や予防活動のアピールを肯定的に捉える風潮があり、私もアメリカで堂々と『リブレ』を装着して運動する方を多く見かけました。ここ日本でも、積極的に予防=健康づくりに取り組むことが『格好良い』という社会を醸成していきたいですね!」

【編集後記】
 近く認定アドバイザーも育成開始


10月8日に都内で開催された「日本血糖値協会設立記念パーティ」には、協会を応援する有志100人超が駆けつけた(上の画像)。その顔ぶれは、医療従事者、学校関係者、メーカー、スポーツインストラクターから弁護士と幅広く、今後の協会への期待の高さが伺えた。メーカーの中には、Hoitto!編集部がお世話になるサラヤの姿もあった。

パーティの中で木屋代表が活動内容をプレゼンしていた。近く協会認定のアドバイザーを育成するそうで、11月中旬にその説明会を開くという。協会という組織の立ち上げには大きなエネルギーが必要だが、それを周到にこなす木屋氏の行動力には驚かされた。

「予防に関心はあっても行動に移す方は決して多くない。そうした方に直接サービスを届け、行動を変えることができれば、社会全体にとってとても良いこと。この課題の解決に向け、今後も走り続けます!」という木屋氏。この協会が今後どのように育っていくのかを、Hoitto!編集部も追いかけていきたい。