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江崎グリコ・栗木隆取締役、日本応用糖質科学会「貝沼賞」受賞

高度分岐環状デキストリン、リン酸化オリゴ糖カルシウムなど開発

江崎グリコの栗木隆取締役研究フェローが、日本応用糖質科学会の創設した「貝沼賞」の受賞者に選定された。26日に京都大学で催された同学会の 2024 年度(第 73 回)大会の授賞式で、「応用糖質科学の基礎研究を基盤にした新素材の開発ならびに新素材事業の立ち上げと新素材を鍵とした最終消費財事業の深耕」」と題して受賞講演を行なった。同賞はインパクトの大きい産業振興の実現に貢献した糖質科学研究者・技術者に対して授与される。栗木氏は基礎研究段階から主導的に研究開発に取り組み、産業の新分野開拓に貢献したことが評価された。

貝沼賞は、日本応用糖質科学会の会長などを歴任し、日本の科学技術を数々の産業振興につなげた貝沼圭二博士の功績を讃え、同会に創設された表彰制度。澱粉をはじめとする糖質や酵素の分野において、基礎研究の成果を技術開発や産業振興につなげることに対し、特に大きく貢献した者を国籍や会員、非会員に関係なく顕彰している。

江崎グリコ株式会社取締役研究フェロー。グリコ栄養食品株式会社代表取締役社長。1981 年 3 月、大阪大学工学部醗酵工学科卒業後、同年に江崎グリコ入社。その後、大阪大学工学部で博士号(工学)を取得し、カナダ・アルバータ研究所、アメリカ・ミシガン州立大学の博士研究員を経て、大阪大学や神戸大学などの非常勤講師も務める。2007 年には研究部門の統括として当社取締役に就任。日本応用糖質科学会副会長をはじめ国内外の多数の学会役員や組織委員、国内外の学術誌編集員なども務める。受賞歴は日本応用糖質科学会「奨励賞」(1997 年)、日本生物工学会「斎藤賞」(1999 年)、日本応用糖質科学会「学会賞」(2013 年)、The Symposium on the Alpha-Amylase Family から「Lifetime Achievement Award」(2019 年)。日本応用糖質科学会「技術開発賞」(2023 年)。著書多数。

栗木氏は「α-アミラーゼファミリー」(※)と呼ぶ概念を世界に先駆けて提唱し、江崎グリコの生物化学研究所(当時)においてこの「α-アミラーゼファミリー」に含まれる酵素に研究資源を集中して投入している。同研究所は、数々の新たな素材を開発し、栗木氏らはこれらを新素材事業として推進した。新素材は食品、化粧品、化学品の原料として販売・供給され、新素材を利用した消費者向けの最終製品としても新たな市場が形成されている。この新素材事業は、グループ会社のグリコ栄養食品の中核事業として伸長している。

(※)「α-アミラーゼファミリー」…酵素は従来、1 つの酵素は 1 種類の機能を持つ(反応を触媒する)と考えられていたが、栗木氏は、「α-アミラーゼ」に近縁でありながら 4 種類の機能を持つ新酵素「ネオプルラナーゼ」を発見したことから、酵素が触媒する反応は、固定されたものではなく遷移的なものであるということを解明した。その考え方を「α-アミラーゼファミリー」の概念と呼んでいる。

江崎グリコの基礎研究により生まれた代表的な素材は、以下の通り。

<クラスターデキストリン® /高度分岐環状デキストリン>
トウモロコシのデンプン由来の食品素材で、他の糖質(ブドウ糖など)に比べて、①消化されやすいため運動時に摂取しても胃の負担になりにくい、②水に溶けやすく溶液が濁ったり、固まったりしない、③運動時にはゆっくりと消化、吸収されるので、脂肪の分解を妨げるインスリンが過剰に分泌されにくいといった効果があります。

<POs-Ca(ポスカ® )/リン酸化オリゴ糖カルシウム>
北海道産ジャガイモ由来の食品素材で、世界各国で特許を取得した、唾液に溶けやすいカルシウム素材です。むし歯の原因となる酸を作りにくく、痛んだ初期むし歯のエナメル質を再石灰化と再結晶化し健康な歯を保ちます。

<バイオグリコーゲン®>
トウモロコシのデンプン由来の素材で、酵素反応により高純度かつ均一な分子サイズに精製されたグリコーゲンです。スキンケア・ボディケア、ヘアケアなどの原料として使用されます。

日本応用糖質科学会 2024 年度(第 73 回)大会
テーマ:「応用糖質科学の基礎研究を基盤にした新素材の開発ならびに新素材事業の立ち上げと新素材
を鍵とした最終消費財事業の深耕」
日時:2024 年 9 月 26 日(木)
会場:京都大学百周年時計台記念館 1 階百周年記念ホール(京都市左京区吉田本町)