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地域創生医 桐村里紗のプラネタリーヘルス 第22回
〜プラネタリーヘルス鳥取大会2024開催報告


3月3日のプラネタリーヘルス・イニシアティブ発足記念シンポジウムを経て、8月3日、プラネタリーヘルスイニシアティブ鳥取大会2024(米子市淀江文化ホール)を開催しました。

主催は、私が代表理事を務める、(公財)日本ヘルスケア協会・プラネタリーヘルスイニシアティブ。鳥取県の共催、米子市、境港市、江府町、鳥取県経済同友会西部地区、山陰合同銀行のサポートを頂きました。

600人のホールに、満員御礼。

開催にあたって多大なるご尽力を頂いた皆様、ご参加いただいた皆様、本当にありがとうございました。


今回の大会テーマは、『プラネタリーヘルスとローカル資本〜ネイチャーポジティブ視点にたった医食農連携と観光の可能性』

環境省、農林水産省、経済産業省、国土交通省が連盟にて発表した「ネイチャーポジティブ経済移行戦略」を踏まえて、あらゆる経済活動から自然の再生と共生を目指すことが求められており、その先に実現するのが、私たちが生きることで人と地球の健康とウェルビーイングを実現する「プラネタリーヘルス」です。

上杉登副代表理事

山陰ローカルに眠る自然資本や文化資本、精神資本など新たな資本を見出しながら、全国のローカルの課題解決や未来の可能性をとらえていきます。多様な分野からゲストスピーカーをお迎えし、医食農連携と観光の再定義をテーマに、
「30by30」
「みどりの食料システム戦略」
「高付加価値なインバウンド観光地づくり」
ーーなどの国際的、国家的戦略を踏まえながら、多角的な視点でディスカッションを行いました。

弊イニシアティブの副代表理事・上杉登(公財日本ヘルスケア協会土壌で健康推進部会部会長)のご挨拶に始まり、鳥取県農林水産部の岡垣敏生部長より共催のご挨拶、また米子市より伊木隆司市長に後援代表のご挨拶を頂きました。


基調講演は、「プラネタリーヘルスと世界における山陰の役割〜日本的視座が世界最先端となる自然共生社会」と題し、プラネタリーヘルスの世界的変遷や国内の動向を踏まえ、失われた生態系を人の手で再生し新たな価値を生み出すネイチャーポジティブな営みの重要性とその主役は、自然資本が豊かなローカルにあることをお伝えしました。

特に、島根県奥出雲町には、今も、たたら製鉄を核に循環する農林畜産業が継承されています。

SDGs、ネイチャーポジティブ、プラネタリーヘルスなどの言葉は後付けで、元々、このエリアには、脈々と受け継がれた先人の知恵とシステムが残っています。

こうした日本的視座が今こそ求められているのではないでしょうか。


パネルディスカッションでは、米と和食の研究者であるふじのくに地球環境史ミュージアム館長の佐藤洋一郎先生をファシリテーターに、腸内フローラの専門家であり、我々のビッグボス田中善先生、地域に密着したサッカーを通して地域活性化を牽引する米子の魂を語らせたらこの人しかいないSC鳥取・ガイナーレ鳥取の塚野真樹社長、観光庁で高付加価値インバウンド向け観光地づくりを推進され、山陰についても奥深い洞察から観光を再定義されている星明彦さん、微生物の多様性から土壌・農地の豊かさを評価する第一人者である横山和成先生にご登壇頂き、金融資本主義では計ることができない、日本のローカルの自然や文化、人の心が資本となる新たな社会と未来の可能性について、それぞれのお立場から共有頂きました。

最後に、山陰プラネタリーヘルス・アクション宣言を読み上げました。

<山陰プラネタリーヘルス・アクション宣言>

私たちは、神代からの歴史をもつこの山陰の地から、
世界に失われた日本的視座と精神性に誇りを持ち、先人の知恵を未来に生かしながら、人と自然が響き合う新たな文明をこの地に築き上げていきます。

流域を一つの生命圏と捉え、分野を超え、立場を超え、世代を超え、歴史文化、気候風土に踏まえた、山陰ならではのプラネタリーヘルスを一丸となって実装していきます。

自利利他の精神で、地球道徳心を高めた人たちによって、

・大山さん、中国山地、各山々の森林の寛容力を再生し、
・生物が豊かな2次自然としての里山を再生し、
・弓ヶ浜の耕作放棄地を微生物多様性が豊かな生み出す土壌に再生し、
・宍道湖の再生から、つづく、中海を泳げて七珍が食べられる中海に再生し、
・森と里の再生により、豊かな日本海の恵みがいつまでも私たちとともにあるように、

人が当たり前に生きることにより、豊かな山陰の自然が再生し続ける社会システムの基盤を10年で構築します。
全国の霊山・流域エリアをネットワークし、その叡智を共有しながら、都市との循環をはかり、日本のローカルが誇る自然、精神、文化を新たな価値とするネイチャーポジティブな経済圏を実現します。

私たちは、今、大陸にゲートを開き、世界中の人たちと共に、

この地の歴史文化気候風土の上に積層する、新たな国引き神話を紡いでいきます。

2024年8月3日
公財)日本ヘルスケア協会 プラネタリーヘルス・イニシアティブ
     代表理事 桐村里紗


この土地ならではの「プラネタリーヘルス」とは何かを捉え、分野を越境したアクションにつなげていくためのキックオフ。今、この時代だからこそ、山陰の価値を再発掘し、世界最先端のプラネタリーヘルス実装エリアとして世界に発信していきたいと思います。

この動きは、全国の奥山と流域に拡がっています。ぜひ、お声掛け下さい。

次は、富士山エリアの予定です。

ちなみに、今回の開催地である鳥取県米子市淀江は、古墳だらけのエリア。
大陸からの渡来の民が、対馬海流で隠岐島に運ばれ、隠岐島から遥か向こうに薄ぼんやりとみえるお山(これが大山さん)を目掛けて、日本列島にたどり着く、最初の入植地とされています。
遺伝子研究でも、縄文+弥生+古墳人の遺伝子が積層するミラクルハイブリッドな民族であることがわかった現代日本人の、ルーツとも言えるのが、この淀江なのです。

人と自然が共存共栄する文明が、古代この地にあったならば、そして日本人が持っている視座がこの人と地球の病理が顕在化した世界を変えていくマスターキーになるならば、かつて大陸からの玄関口であったこの地から再び日本を世界に開いていくのは、この土地の必然なのではないかと考えています。

プロフィール
桐村 里紗 (Lisa Kirimura M.D.)

地域創生医/tenrai株式会社 代表取締役医師
東京大学大学院工学系研究科道徳感情数理工学講座共同研究員
日本ヘルスケア協会・プラネタリーヘルス・イニシアティブ(PHI)代表

予防医療から在宅終末期医療まで総合的に臨床経験を積み、現在は鳥取県江府町を拠点に、産官学民連携でプラネタリーヘルス地域モデル(鳥取江府モデル)構築を行う。地球環境と腸内環境を微生物で健康にするプラネタリーヘルスの理論と実践の書『腸と森の「土」を育てる 微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)が話題。

(次回「地域創生医 桐村里紗の プラネタリーヘルス」は9月初旬に掲載予定です)