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【連載】矢澤一良博士が行く!ウェルネスフード・キャラバン【座談会】

≪第3回≫「ウェルネスフードジャパン2024」開催直前座談会 
TSO International株式会社 代表取締役社長 佐々木剛氏&
株式会社RDサポート 代表取締役CEO 大澤裕樹氏


健康食品・機能性食品・自然食品に関する専門展示会「ウェルネスフードジャパン2024」が7月16日(火)~18日(木)の3日間、東京ビッグサイトで開催される。3日間で延べ4万人超が訪れる国内最大級のウェルネスフードの祭典は、年々規模と質を高め、市場活性化への貢献はもとより国民の健康寿命延伸の後押しを担う展示会へと成長している。矢澤一良博士(早稲田大学 ナノ・ライフ創新研究機構 規範科学総合研究所ヘルスフード科学部門 部門長)が「ヘルスフードのこれから」を探る対談企画「矢澤一良博士が行く!ウェルネスフード・キャラバン」第3回は、主催・運営のTSO International株式会社代表取締役社長の佐々木剛氏と、共催として展示会を支える一般社団法人ウェルネスフード推進協会を運営する株式会社RDサポート代表取締役CEOの大澤裕樹氏に、「ウェルネスフードジャパン2024」の見どころと業界最前線についてうかがった。(記事=中西陽治)




矢澤一良博士(以下・矢澤氏):さて、今回の「ウェルネスフード・キャラバン」は、7月16日(火)より開催される「ウェルネスフードジャパン2024」の主催・運営に関わるお二人に登場していただきます。

 私たちアカデミアが研究している食に関わる科学技術やその情報発信は、一方だけでは限界があると思います。私たちが研究している技術は企業に活用していただいて、そのうえで最終製品という形にならないと一般消費者には届かないでしょう。
 その方法の一つとして大規模な展示会が担う役割は大きいと感じます。一般消費者に対応できる企業からさまざまな技術や情報を発信していただく絶好の機会です。
 今回その展示会の企画を長年にわたり担ってこられたお二人に「ウェルネスフードジャパン2024」の魅力と、ウェルネスフードの未来についてお聞きします。

TSO International株式会社 代表取締役社長 佐々木剛氏(以下・佐々木氏):ありがとうございます。

TSO International株式会社代表取締役社長 佐々木剛氏

矢澤博士がおっしゃるように、展示会には、製品はもちろん、製品を形作る技術や情報を、日本はもとより世界市場に発信していく役割があります。
 その中で、私たちTSO International株式会社はウェルネスやスポーツに関する専門的な展示会を主宰しています。具体的には「ウェルネスライフ」「健康食品」「スポーツ」「レジャー」「カフェ」といった、人々のQOL向上に役立つ領域を主に担っています。

 もともと私たちが運営していたスポーツの展示会を通じ、スポーツから生まれるウェルネス領域の広がりを受け、RDサポートさんと共に市場拡大を役割として背負う「ウェルネスフードジャパン」を開催しております。スポーツから生まれるウェルネス領域の拡大は、体づくりに励むアスリートやスポーツ愛好家は当然ながら、それを支えるトレーナーや管理栄養士といった専門家までもが、スポーツと食の関連性についてあまり知らないという課題からスタートしました。

 当時は、スポーツ領域における食に対するリテラシーというものが、日本を含めてアジアでは高くない、ということを私自身が感じていました。「スポーツをする上で自分の体を知らずして何ぞや」という思いを抱えていたのです。
 スポーツトレーナーがトレーニング技術に秀でている一方で、その技術に不可欠な食の情報や科学的根拠がプラスされないのは非常にもったいないことです。

 そこで、科学的根拠および食経験に基づいた提案ができる、あるいはスポーツと食領域の専門家をつなぐような機会を増やしたい、という想いから始まった展示会が、2009年より続く「SPORTEC」で、さらにより一般的に健康になるための食事を提案する場としてRDサポートさんと一緒に2012年に始めたのが「ウェルネスフードジャパン」です。

 当時は機能性表示食品制度の形もなかった時代でしたから、本当に手探りの状態でした。ですが主旨に賛同していただける企業や関係者が増え、現在の「ウェルネスフードジャパン」が形作られているのです。

株式会社RDサポート代表取締役CEO 大澤裕樹氏(以下・大澤氏):ありがとうございます。

株式会社RDサポート代表取締役CEO 大澤裕樹氏

 私たちRDサポートは1998年に研究者・技術者の派遣事業会社として立ち上がり、主に食品メーカーをお相手に研究開発のビジネスを進めてきました。
 矢澤博士と一緒に日本人のQOL向上に役立つ社会のインフラづくり、また健康寿命延伸産業の健全な発展と育成を目指していこう、という思いで2011年に「日本を健康にする研究会」を設立し、そこでお会いした佐々木さんと共に2019年に一般社団法人ウェルネスフード推進協会の立ち上げに参画させていただきました。そこで「SPORTEC」を運営されていた佐々木さんと「『ウェルネスフード』を掲げた展示会をやろう」と意気投合してウェルネスフードジャパンが始まったのです。

 「ウェルネスフードジャパン」はメディカルでなくヘルスケアでもない「ウェルネス」という生き方にまでおよぶ事項に絞って〝健康な人をより健康に〟という目標のもと、 科学的根拠をベースとしたモノづくりで、それを消費者に正しく届け、ウェルネスのリテラシーも上げていく、という思いからスタートしました。



矢澤一良博士

矢澤氏:現在、健康産業全体には厳しい目が向けられているのは事実です。健康産業を振興する展示会には、これまで以上に「健全性」という重要な役割が求められるのではないでしょうか。産業の「健全性」を保つためにはどうすればいいのでしょうか。

大澤氏:一つは科学技術に基づいた確固たるエビデンスです。健康増進に資するモノの安全性や有効性の情報が正しく届けられているのか、ということです。そして消費者が正しく使って健康増進につなげていく。それあっての健全なモノづくりだと思います。

佐々木氏:二つ目に、展示会の意義として、ビジネスとしての健全性も重要です。エビデンスに基づいたよいモノを作っていらっしゃる方々の収益性に繋がらなければ健全な市場とは言えません。
 展示会にバイヤーが参加してその健全なモノやサービスを仕入れていただき、適切な金額で消費者に届ける。健全性ある展示会は、まっとうなモノがビジネスとしてしっかりと収益性を得られることが大切だと思っています。

矢澤氏: 私はウェルネスに関わる方々は信頼、つまり企業の性善説に沿った活動されていると感じています。
 ところが、どうもその性善説を信じ切ってはいけない、という風潮があるように思います。以前は、健康食品は「儲けの手段だ」と捉えられがちでした。エビデンスに基づいているにも関わらず理解されず風評被害を受けることがありますよね。

 「健康によいものを科学的根拠に基づいて作る」という企業の考えは性善説によってもたらされる、それこそが消費者との約束であり、信頼です。
 これをもっと社会が受け入れられるようにはどうすればよいでしょうか。

大澤氏:1991年に成立したトクホ制度は開発にある程度の投資が必要でした。一方で、2015年に成立した機能性表示食品は中小企業がチャレンジしやすい制度です。

矢澤博士がおっしゃるように、いわゆる健康食品市場が性善説としてコントロールできなかった時代に対し、一つの抑止力として機能性表示食品制度が生まれた、と考えられるでしょう。

健全な市場創造のため運営にあたる両氏

 制度以前の健康食品市場では残念ながら、安全性や有効成分に関して粗悪な商品があったことも確かです。機能性表示食品制度が一つのきっかけとなり、製造販売元がシビアな目で自らを省みないといけないようになったと感じています。
 ですから性善説に基づく市場に一歩ずつ近づいているように思いますね。

佐々木氏: 企業の性善説に基づいて消費者が購入するのは大事なことだと思います。でなければスーパーマーケットに並んでいる商品も全て疑わなければならなくなり、生活が成り立ちません。

 ただ〝健康になるための食品〟を掲げるのならば「ウェルネスフードジャパン」はそれを証明する場として最適です。展示会は公な競争の場でもありますし、逃げも隠れもできないフェアなイベントです。ですから展示されている商品は、間違いなく有用で安全なものであるというブランディングに役立つと思います。
 そういった意味でもリアル展示会には、実際に堂々と発信して頂ける場所としての役割があります。



矢澤氏:いよいよ7月16日~18日に東京ビッグサイトで「ウェルネスフードジャパン2024」が開催されます。出展企業さん、各種セミナーや「ウェルネスフードアワード」といったイベントも出そろい、参加者の期待も高まっている事と思います。
 そこで、ずばりお二人は「ウェルネスフード」をどういうものだと考えていますか。

大澤氏

大澤氏:「健康な人をより健康に」できる食品だと考えています。つまり健康増進が期待できるプロダクトですね。それはいわゆる「ヘルスケア」や「ヘルシー」とはまた別の大きな枠組みです。

 また最近浸透しつつある「ウェルビーイング」という考え方と食を掛け合わせた、革新的かつヒトの原始的な欲求に応えられる食品の形だと思います。
 やはり健康寿命を延伸できる期待値の高いものである、ということ。またそれを担保する科学的な安全性と有効性があるものでしょう。

佐々木氏:ウェルネス自体の定義を考えると、心と体の健康状態に行き着くと思います。

佐々木氏

 私は「罪悪感のない、食べて嬉しい食提案」がウェルネスにつながる大切な要素だと考えます。食品の知識は前提として、「こういう食べ方をすれば体にいい」という方法提案があれば、ウェルネス実現に近づくことができるでしょう。
 食事は「家族やみんなで食べて楽しい」ですとか「食べることで健康に一歩近づく」という期待、そして「食べて幸せを感じる」という実感があってこそ、でしょう。食生活の提案がウェルネスおよびウェルネスフードにつながると感じています。「ウェルネスフードだから」と言って決して私たちが、押し付けるようなことがあってもいけないと思います。サプリメントやプロテインなどの補助的な食事も含めて、食べて嬉しい食提案ができれば、と思っています。

ウェルネスフードジャパン」と併設で、カフェ・ベーカリー・レストラン向けの商談専門展「CAFERES JAPAN2024」を開催します。
 外食産業の方々が、健康になるための食事を理解することは非常に重要です。食品開発者だけが参加して、エビデンスのある原材料を持ち寄って食品を作りましょう、という展示会だけですと、ウェルネスの世界は広がっていきません。



矢澤博士

矢澤氏:同じ会場で「ウェルネス」につながる産業間を行き来できるのは市場の拡大に欠かせませんね。総合的な情報が手に入るということですから。

 今回の「ウェルネスフードジャパン2024」における注目トピック、斬新な商品や取り組みはありますか。

佐々木氏:業界での動きが活発な「CBD」や「MCT」といったオイル系が増えているようです。原料供給、最終製品としての食提案はもちろん、スキンケアとしての訴求も多いように見受けられます。

 また、従来から推奨されている「腸内環境改善」も活況です。食物繊維が豊富な穀物系や発酵食品、乳酸菌素材の斬新な運用の仕方といったものが「ウェルネスフードジャパン」を通じて増えています。日々の食生活の中で、毎日食べても安心な、健康につながる提案をみなさんがご披露されていると感じています。

大澤氏:注目トピックでは「ウェルネスフードアワード」もご期待いただきたいですね。今回で7回目を迎えるアワードは、ウェルネスに関わる「ミール」「OYATSU」「サプリメント」「食品素材」の4つのカテゴリーで選考が進んでいます。多数のエントリーをいただき、斬新かつ楽しさも含んだ商品がノミネートされています。エントリーの中では、機能性はもちろんですが、おいしさにフォーカスした食品が増えていますね。また製造プロセスや食べやすさも審査基準に設けていますので、選考委員の方々もさまざまな視点でエントリー商品の評価をしていただいています。

矢澤氏:おいしさ、は薬では評価できない食品ならではの価値です。おいしいという実感こそが幸福感となり「ウェルネス」につながりますね。メンタルにも良い影響を与えるムードフード、五感で感じる楽しさやおいしさはウェルネスの本質だと思います。

大澤氏:また、地方産業とりわけ一次産業の方々の参入も増えています。機能性表示食品が生鮮食品も含む制度であるため、新規参入による市場の活性化は私たちの願いでもあったのです。
 地域ごとでウェルネスに関わる組織が存在します。その方々といかに私たちが関わり1エリアでも多くネットワークを構築できるか、を戦略として取り組んでいます。以前行っていたシンポジウムを改めて立ち上げる準備も行っています。地方企業の活性化と地域住民のウェルネス実現をテーマに取り組んでいきたいと思います。



矢澤氏:いよいよ7月に迫った「ウェルネスフードジャパン」です。出展される企業にとってどのようなメリットがありますか。

佐々木氏:大きく3つあります。

ウェルネスフードジャパン」に代表される展示会の一つ目のメリットは「自分たちの製品をご存じない方々に圧倒的な数でお会いできる」ということです。研究者、開発者の方々が作られた製品も、世の中に広く頒布するとなると、展示会に勝る販売促進はないでしょう。

二つ目に、アカデミアのような業界の専門家とのネットワーク構築が間違いなくできる、ということです。特にウェルネス分野においては産官学の連携は重要になってきます。自分たちの知らない方々と会って、新たな未知の分野の研究を始めることができる場でもあります。おそらくこれは学会より展示会の方が色合いとして大きいと感じます。

三つ目に、地方の方でも海外の方であっても等しく競えて、かつ業界における自社の立ち位置が分かる、ということです。自分の会社が日本や世界においてどれぐらい認知されているか、もしくは自分たちの製品が社会に貢献できているか、を客観的に知れる機会が展示会にあります。そうなると社員の教育や研修にも、有効な場と言えます。また自社の立ち位置がわかることで、今後どのようなビジョンを据えるのか、パーパス策定に向けた気付きを得られる場でもあります。

「多くの方々に出会うことができる」「人脈をつくることができる」「自社の立ち位置や方向性がわかる」。この3つが展示会出展の大きなメリットです。ですから今回「ウェルネスフードジャパン2024」にご出展される企業様はもちろん、今後出展を検討されている企業様も、勇気をもって参画していただければと願っています。

知見・人脈が広がる豊富なセミナーを実施(昨年の模様)

矢澤氏:「勇気をもって」というのが大切ですね。出展のハードルは、本当は想像よりはるかに低いと思います。出展における相談や対応も丁寧にやっておられると聞いていますから、チャレンジ精神をもって挑んでほしいですよね。

科学者の視点では「新しい現象が発見された」とすると、その現象が何に役立つかを考えます。しかし特定の分野だけで考えると使い方が固定化してしまいます。まったく違う分野から見ると、思ってもみなかった活用方法が見出せることがあるのです。そういった例が展示会のブースを周って、得られると思います。

大澤氏:併催も含めて、3日間で延べ4万人超の来場者が集う「ウェルネスフードジャパン」です。

 先ほど佐々木さんが「勇気をもって」とお話されましたけれども、このヘルスケアを内包するウェルネスフード産業は新規参入が多い業界です。自動車産業や住宅からの異業種の参入も目覚ましい新しい市場なのです。それは、健康寿命産業が規制改革という国策も受け、国の成長を担っていることからも明らかです。

 その中において、新規参入を検討している異業種の方々にとって「ウェルネスフードジャパン」は、リーズナブルな展示会だと感じています。フラットであり、コミュニケーションがとれるフィールドを整えていますし、セミナーのようなインプットもご用意していますので、そこにご期待いただきたいと思います。



矢澤氏:ありがとうございます。最後に「ウェルネスフードジャパン」の来場者にメッセージを。

大澤氏:ウェルネスフードジャパン」は年々、展示会としての質も上がっています。ご来場いただく方々も、新規参入を含めフィールドが広がっています。フラットな気持ちかつフェアな立場で参加できる展示会だと思っています。

また同会場で「CAFERES JAPAN2024」「SPORTEC2024」「ウェルネスフード R&D EXPO 2024」も併催しています。
さまざまな産業が交流しあって、新しい化学反応を生み出すことができるよう、私たちも精一杯準備を進めていますので、「ウェルネスフードジャパン」をぜひよろしくお願い申し上げます。

佐々木氏:参加される方がいて展示会が成り立ちます。ですから、長い視点で参加していただきたいと思っています。

例えばご来場された方も、お目当てのモノが無かったから、と判断していただくのではなく、やはり学びの場として判断していただきたいと願っております。
出展社様も、展開された最新製品が、その場で取引成立しないということもあるかもしれません。しかしその経験も含めて、業界を作っていくうえで、その土俵となるハコを作っていかなければならないと思います。

 私たちはハコを作っている立場にあります。
例えば、町も行政がデザインして作っています。しかしそこに住民が居続けてくれなければ良い町にはなりません。同じように展示会も、「みなさんのハコ」ですので、継続的に何かしら関わっていただけたなら、もっと良い業界を創り上げることができると思っています。「ウェルネスフードジャパン」をみなさんと一緒に創っていきたいと思っていますので、何卒よろしくお願い申し上げます。

矢澤氏:情報収集にも人脈づくりにも役立つ展示会だということが良く分かりました。健全な「ウェルネスフード」を国民のみなさんに利用していただいて、健康寿命延伸につなげてほしいですね。

――ありがとうございました。




「ウェルネスフード・ジャパン2024」概要


「ウェルネスフードジャパン」は、日本最大級の食と健康産業に関する専門展として東京ビッグサイトで開催される展示会。健康食品・機能性食品・サステナブルフード・サプリメントなど健康食品・素材を集めた『ウェルネスフードジャパン』と、健康食品開発のための素材・OEM専門展『ウェルネスフードR&D EXPO』の2つの専門展示会で構成される。
 世界中でニーズが高まる健康食品産業に向けた食品・製品・技術を持つ企業・団体600社が出展し、業界活性化のプラットフォームとなる。健康食品業界最大規模の約45,000人(2023年来場者数43,192人)が来場する商談・業界交流の場として機能し、また、機能性食品やサステナブルフードなど、今後拡大するマーケットの専門家によるセミナーを50本以上予定しており、課題解決意欲が高いバイヤーとの商談機会が得られる。


会期2024年7⽉16⽇(火)・17⽇(水)・18⽇(⽊) 10:00~17:00
会場東京ビッグサイト 東展示棟
主催ウェルネスフードジャパン実行委員会(TSO International株式会社 内)
共催一般社団法人ウェルネスフード推進協会
運営TSO International株式会社